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卒業までの間で章

244話

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…‥‥人の欲望というものは、時として予想外の事を引き起こす。

 あらかじめ分かっていればまだいいが、そのあらかじめの前提にある予想を凌駕する究極の馬鹿がいたら、それこそどうしようもない。

 ゆえに、防ぎようのないような事もあり‥‥‥‥



「‥‥‥そして、目の前に黄金の状態で固まった連中がそれか」
【ピッギャコケィ!】

 ぷんぷんと、機嫌を悪くしているのか通常の1.4倍ほど体を膨らませて不満そうになくマロの前には、見事な黄金の像が出来上がっていた。

 一部かじられているが、不味かったのか吐き出された後もある。あ、頭頂部カッパになったやつもいるなぁ‥‥‥。


 マロが黄金化ブレスを吐けるようになって今日で1週間ほどたった今日、休日だったので適当に寮から出て都市内を歩いていたのだが…‥‥

【ピコギャッス?】

 と、マロが何か首を傾げてとててと路地裏へ走っていった。

 何かあったのかなと思い、追いかけてみると、どう見ても悪人顔のチンピラ共がマロの前に立ちふさがって、ナイフを手に襲い掛かろうとして…‥‥ルースが手を出す前にマロが動いて、チンピラ共は見事に返り討ちにあったのである。

 なお、このブレスは普通のコカトリスが吐く石化のブレスを受けたときに、治すための薬でも効果があるようなので、一応生きて返すことはできる…‥‥はず。

 とはいえ、マロを狙った犯行なのは明白なので、あの黄金像になった人たちが意識を戻すのは、おそらく連行された先であろう。




……そして数日後、黄金像と化して連行されていったチンピラ共は、引き渡されたところでしっかり自白したのであった。

「‥‥‥つまり、何処かでマロの黄金化ブレスを知った輩が、送り込んできたチンピラたちだったか」
「まぁ、大体予想通りというか、本当にそんなことをする馬鹿がいるとは思わなかったわね」
「人の欲望と言うのは、予想外な事もあるらしいけれどねぇ」
―――――一応、犯人ハ調査済ミダヨ。

 バトの送り込んだ妖精部隊の調査によれば、案の定というか、チンピラ共を送り込んできたのはどこぞやの貴族家の長男らしい。

 ゲルマー侯爵家の長男らしいが…‥‥聞いたことがない。

 
「なんでそんなやつがマロを狙うんだ?」
「一般的に、貴族家は長男による世襲が多いからと言うのがあるわね」

 まぁ、その跡継ぎの能力によって変わる事もあるが、基本的に長男が次期当主となる事が多い。

 で、今回のその貴族家の長男は、次期当主になれた可能性があったそうだが…‥‥何と言うか自滅して次期当主の座が閉ざされていたらしいのだ。

「自滅って‥‥‥もしかして、不貞とか、賭博とか、犯罪とかあったのか?」
―――――主様、正解!ソレ全部デスヨ。


 バトの妖精部隊の調べによれば、まさに絵にかいたようなレベルだったらしい。



 婚約者がいたのに自らの不貞で婚約破棄をした。

 その婚約者はその長男がいた貴族家の資金難を援助するための政略的な意図で婚約されていたそうで、その覇気によって援助が打ち切りとなった上に、それまでの持参金などの返金を求められた。

 さらに、その長男は浪費癖というか、賭博にはまって借金を抱え、その借金を返すために違法薬物の愛倍を行って裏ルートで取引もしていたそうだ。

 これらすべてが表に出ると、貴族家としても不味いからばれないように隠蔽しつつ、その長男は次期当主から外し、まだ幼いけれどもまともな次男を次期跡継ぎにしたのだとか。

 で、現在その長男はゲルマー侯爵家の離れの屋敷にて軟禁に近い状態で、更生すれば社交界への復帰なども望めたそうなのだが‥‥‥



「どうやってか、マロの情報を聞いて、そのブレスが金になると思って、裏ルートを築いていた時のつながりで、チンピラ共を雇ったのか……」
「というか、ここまで詳細がバレている時点で隠蔽できている物なのかしら?」
―――――正直ナ話、アッケナイレベルデ簡単ニ判明シチャッタ。

 さほど労力も使わずに、ちょっとはたいてみたような物だったが‥‥‥出るわ出るわの醜聞まみれだったらしい。ひどすぎるというか、貴族社会の情けない闇を見たような気が、一同はしたのであった。


「でも、そんな裏ルートでのつながりがあったとはいえ、そんなどう考えてもダメな奴にチンピラが従うのか?」
「ああ、なるほど。そこでマロか」
「ん?レリアはわかったのか?」
「うん。考えてみるとマロのブレスで黄金ができるのならば、それを売り払って資金に当てようとしたんじゃないかな?」

 手に入れる前提で話を進めていたという事のようだが‥‥‥捕らぬ狸の皮算用という言葉のようだ。

 狸じゃなくてコカトリスだし、そもそもマロを捕らえるのにチンピラを使った時点で物凄く舐めているとしか思えないが…‥‥可愛いけれども、モンスターだからね。


 とはいえ、マロを狙ったことは許せることではない。

 例え、情報不足過ぎて程度の低いチンピラしか雇えないようなはした金だけの、捕らぬ狸の皮算用しかできない、自らの自滅で道を失いまくり、破滅への道しかないような超馬鹿が相手だとしても…‥‥


「いや、いちいち気にするほど得もないかもしれないけれど…‥‥やっぱり同じような馬鹿が出る可能性を考えるなら、一度徹底的にやった方が良いかな?」
「賛成ね。ルース君ではなくそのペットを狙った犯行ですが……でも、将来的に家族になるのならば」
「徹底的にやって損はないなぁ」
―――――ウフフフフフフフフフフフフ


…‥‥この日、一つの侯爵家の長男の運命は定まってしまった。

 全貴族にとって、ルース及びその家族などに手を出してはならないと言う理由の、良い例となってしまうという運命に‥‥‥‥
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