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学園1年目

37話

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 バルスト村にルースたちが帰還して数日、ようやく学園の方から馬車で帰還した生徒たちも村に入り、村の中は活気に満ち溢れていた。

 それぞれの家の手伝いのために、魔導書グリモワールを利用して魔法を扱う者たちも多い。


 畑に水を撒く、耕す、種をまく、畝を作る等、青色や茶色の魔導書グリモワールで水魔法や土魔法を。

 日光を当てる、逆に雑草などに当てないようにしてしまうなど、白色や黒色の魔導書グリモワールで光魔法や闇魔法を。

 そして、成長を促進させるなどで緑色の魔導書グリモワールで植物成長促進系統の魔法を扱うなど、それぞれ便利に利用されていた。


 魔導書グリモワールで魔法が扱えるがゆえに、畑仕事等も便利になる。



 ちなみに、炎関連の魔法や電気関連の魔法を扱う赤色や黄色の魔導書グリモワールを持つ者たちが働けないかというと、そうでもない。


 雑草を集めて燃やして肥料にしたり、電気刺激をあえて与えることによって促進系の魔法とはまた違った成長をさせるなど、使い道は多くあった。





「で、母さん、このお酒の時間を促進させろと」
「ええ、寝かせてどんどん味わい深く出来るかしら?」
「可能といえば可能だけど‥‥‥こういう使い道を予想していなかったよ」

 一方、ルースの場合は少々事情が異なった。

 彼の家は、というよりも母のアバウトの職業が村のバーの経営。

 バーテンダーも兼ねており、お酒の貯蔵庫で、ワインなどをより味わい深くするように言われ、魔法で促進させていた。

…‥‥こういう魔法の使い方もどうなのかと思うが、複合魔法の練習にはなかなかよかった。

「にしても、うちにこれだけ酒があるけどさ、これってどこから仕入れているんだ?」

 ふと、酒の発酵を進めている中で、ルースはその疑問を口にした。


 バーを経営するがゆえに、酒を購入するのはまだわかる。

 だがしかし、ここは田舎の村でもあり、入ってくる客は常連が多いがそこまで多いわけでもない。

 けれども、この酒はどうも高いものが多く、そんなバーの経営だけで賄えるようなものに思えなかったのである。

 酒の山を見て、ルースはここでその疑問を抱いたのであった。

「ん~秘密ね。ルースがもうちょっと成長して、そうねぇ、エルゼちゃんと結婚出来たら話してもいいかしら?」
「なぜそこでエルゼを引き合いに出すんだよ母さん‥‥‥」

 なんかもう、外堀からエルゼに埋められているような気がしつつも、結局のところその疑問にアバウトは答えることが無かった。

 調べようとしたが、そう言った類の事は全てアバウトが行っており、関連する書類などはルースにもどこにあるのかわからない。

 魔法で探そうにも、そこまで万能なものではないので不明である。


…‥‥そもそも、ルースの母は何かと謎が多い。

 こんな母子家庭で、女の細腕一つで一軒家を持ち、バーを経営しながらも生活費は常日頃余裕があって、どこかつかみどころもなかったりする。

 父親が誰なのか、昔ルースは聞いたことがあったのだが…‥‥その答えも帰っては来ない。

 写真があるのか聞いてみたが、全くその写真はない。

 

 気になることは気になるが、その詳細は誰もわからない。

 知っている可能性のある村長に一度訪ねたことがあったのだが…‥‥知らないと言われたので、おそらく本当に知らないのであろう。









「そこが本当に謎というか、我が母ながらつかみどころがないんだよなぁ‥‥‥」
「ルース君のお義母様の謎って、確かこの村の不思議に入っているわよね?」
「そういえばそうだよなぁ‥‥‥ルースんちのかぁちゃん、俺っちたちの方でも謎が多いからな」

 昼過ぎ、自由時間として村を出歩いていたルースは、公爵家から遊びに来たエルゼと、家の仕事をひと段落終えたスアーンと共に、適当な木の下で話していた。

「女の不思議は、殿方には永遠の謎だけどね」
「‥‥‥時々エルゼって、なんか核心をつくよな」

 エルゼのその言葉に、ルースはなんとなく納得した。

 あと、さり気なく「お義母様」と呼んでいたところにツッコミを入れるべきか?


「ま、謎は謎だからこそいいけど‥‥‥そういえば、俺っちの畑の方でも謎が起きているんだよな」
「謎って何だスアーン?」
「何が起きているのよ?」

 首を傾げたスアーンに対して、ルースとエルゼはその謎とやらに興味を持って尋ねた。

「いや、なんかな‥‥‥でかいんだよ」
「でかい?」
「農作物がさ、なんというか今までに比べてちょっと、いや、かなり巨大化しているんだよ」
「それならいいんじゃないの?」

 どうやら、スアーンの家の畑、いや、それにとどまらず、村中の畑の農作物が巨大化しているらしい。

 納税するのに納めたりするのだから、むしろ儲けものだと思うのだが‥‥‥


「ただでかいんじゃ意味がない。邪魔になるし、ギュウギュウ詰めになるから変形したり、そもそもまだ味見もしていないが、そのあたりも不安なんだよ」

 物事、そう都合よくいかないようで、様々な問題が起きているようである。

「不思議というか、前例がないんで親父たちが疑問に思いつつ調べているが‥‥‥何が起きたのやら」
「色々大変なんだなぁ」
「あたしたちの家は畑仕事と関係ないから今一つ、わからない悩みよね」

 ルースの家は村のバー、エルゼの家は、この村のある領地の領主の公爵家。

 どちらも特に畑仕事の現場に行くことは少なく、その悩みはわかりにくいがとにもかくにも大変そうなのだという事を二人は何とか理解した。

「そういうわけで、どうやら外部から専門家が来るそうだ」
「外部ってどこからだ?」
「さぁ?そこまではわからん。ただ、村長が呼んだわけではないらしいぜ。その詳細は口にしなかったが…‥なんだろうな?」
「村長が呼んだわけじゃないって‥‥‥どういうことだよ」


 疑問に抱きつつも、とりあえず3日後には専門家の人が来るらしい。

 畑に関してなので、己には関係のないことだとこのときルースもエルゼも思っていた。

 だがしかし、それは油断に過ぎなかったのだと後で思い知るのであった‥‥‥
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