黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波

文字の大きさ
137 / 339
2年目の夏の章

124話

しおりを挟む
「‥‥‥『魔導書グリモワール顕現』」

 金色に輝く魔導書グリモワールを顕現させた後、ルースは魔導書グリモワールを宙に浮かせた状態でルーレア皇妃の前に立った。


「なるほど、通常の魔導書グリモワールでは見ることない色‥‥‥黄金の魔導書グリモワールか。どのような魔法が飛び出てくるのかは、皆目見当もつかないが、中々楽しめそうね」

 兜をかぶっているがゆえに、その表情は見えないが、隙間から見える目は面白そうに笑っていた。



 正直言って、分が悪い。

 何しろ、ルーレア皇妃はバルション学園長のライバルと言った女性……つまり、学園長と同等の値からを持っていると言ってもいいだろう。

 そして、壁を切り裂いた技量から見ても、近接戦闘に持ち込まれてしまえば、それこそ一巻の終わりである。

 
 とはいえ、勝算はゼロではない。

 一応、これは互いの実力を見るような模擬戦で、命を奪われる可能性はないはずだ。


 ゆえに、相手の降参、もしくは戦闘不能にしてしまえばいい話だ。


 頭の中に浮かぶ魔法を一度見直し、最適なものをルースは考える。

「それでは、審判として私がやらせてもらうぞ」

 と、レリアが中央に立って、審判役を買ってくれるようである。


「頑張ってルース君!負けそうになったら降参で良いからね!」
―――――ガンバレ!!

 別の方では、エルゼとポケットから出たバトが声援を送ってくれた。

「できる限り早めに降参したほうが良いぞー!」
「可能ならその皇妃様を倒してほしい!!」
「できれば、敗北と言う味を教えてやれぇぇぇぇ!!」

 訓練場を使っていた兵士たちもなぜか声援を送ってくれたが…‥‥おい、自国の、それも兵士としては守るべき対象のはずの皇妃が負けても良いのかよ。

 しかも、どこか悲痛になっているところがあるし、普段どれだけ酷い目になっているのかちょっとわかってしまうな‥‥‥


「ふふふふ、手加減無しで良いわよ。娘の友達がどれだけの力を持つのか見たいし、あなた自身、まだまだ見せていないような力がありそうだしね」

 ニヤリと笑みを浮かべているような声を出すルーレア皇妃。

 どうも精霊の力に関しても、勘で見ぬいているようなところがある。

「‥‥‥はぁ、とりあえずお言葉に甘えさせてもらいますか」

 と言うか、全力でいかないと多分まずい。

 先ほど死ななない可能性が高いと考えたが…‥‥よくよく考えてみれば、この手の人はそんなことを考えず、全力で来る可能性の方が高い。

 そうなれば、こちらもできる限り迎え撃たないとあの世逝きになるだろう。


 そのようなことを避けるために、渋々しながらもルースは構える。


「それでは、両者とも位置について…‥‥始め!!」

 レリアが手を振りかぶって、開始の合図をすると同時にルースとルーレア皇妃は動き出した。

「はぁぁぁぁ!!」

 ルーレア皇妃はまず、一直線にルースへ向かって駆けだす。

 先手必勝と言うか、まずは距離を詰めて接近戦を行うつもりであろう。

「『マッドランナー』!!」

 いつもであれば防壁を張るが、それでは切り裂かれて意味はないと思い、ルースは異なる魔法を発動させた。


 水と土の複合魔法で、地面がドロドロの泥の河になり、ルーレア皇妃の足元に流れ始める。

「なるほど!まずは足場を奪ったわね!」

 ドロドロに流れる泥の河は、ご丁寧に沈みやすくしており、なかなか前には進めず、流されていく。

 接近戦は不利なので、遠距離から攻めていくのが良いと考えたのである。




 ここで手を緩めずに、ルースは次の魔法を発動させた。

「『スチームバースト』!!」

 水と炎の複合魔法で、水蒸気爆発を起こした後でその衝撃に指向性を持たせてぶつける魔法だ。

 しかも、熱された水蒸気が流れてくのだが、鎧の隙間から入ってくるのでサウナのような地獄となるだろう。


ドゴゥン!!
「ぐっ!!」

「連射!!」

ドゴゥン!!ドゴゥン!!ドゴゥン!!
「ぐっ!くっ!!ふっ!!なんのぉ!!」

 連続で当てていたところで、ルーレア皇妃は剣を振りかぶった。

 すると・・・・・

ズバァッ!!
「よし!衝撃波なら切り裂けるわね!!」
「無茶苦茶でしょ!?」


 ムリヤリ剣で魔法を切り裂くという暴挙に出られてしまった。

 まぁ、たかが水蒸気で出来た衝撃波なので可能なのかもしれないが、それでも無茶苦茶な事には変わりはない。しかもサウナ効果は効いていないようだ。

「そしてこの泥の河もこうすればいいわね!」

 と、そう叫んだかと思うと、ルーレア皇妃は一気に駆けぬけて距離を詰めてきた。

「嘘!?沈まないのかよ!?」
「沈む前に足を上げているだけよ!」

 どこの水の上を走る爬虫類だとツッコミを入れたいが、それどころではない。

 だが、こういう時にこそ別の方法がある。

「『ダイヤモンドダスト』!!」

 氷と水の複合魔法で、綺麗な氷の結晶が出来上がり、周囲に浮かび始める。

 これだけだとただの演出用の魔法だが、次に使う複合魔法で凶悪さを発揮する。

「『ハイドロウインド』!!」

 水と風の複合魔法が発動し、一気にできていた氷の結晶を飲み込んでルーレア皇妃の元へ襲い掛かる。


 しかし、あっさりと回避された。

「ふふふふふふふふふふふ!!接近戦で行くわよ!!」

 剣をしっかり握り直し、こちらへ振りかぶってくるルーレア皇妃。

 接近戦はできれば避けたかったが、こうなっては仕方がない。

「『ロックストライク』!!」

 岩を魔法で出して手に纏い、風魔法で浮かべて重さを軽減させる。
 
 いわば岩でできたガントレットを、その剣にたたきつける。


ドガギィィィィィン!!

 真正面からぶつかり合い、その衝撃で大気が震えた。



「おお!!まさか正面から受け止めるなんて!!」
「って、加減無しの本気の奴じゃないですかあぁぁl!!」

 ルーレア皇妃は驚いたようだが、ルースは今知りたくないことを知ってしまった。

 この皇妃、本気で手加減していなかった。

 どう見たって直撃コースだったし、ぶつかった時の衝撃は当たれば即死レベルである。

「ふふふ!互いに本気になってこそ、面白いのよね!」
「いや死にますよね!?」

 この皇妃、もしや自分を基準にしているのではなかろうか?


 とにもかくにも、命の危機を感じたルース。

 今はとりあえず、どうにかして止めるしかない。

「『ローズバインド』!!」

 木と土、水、光の4属性同時の複合魔法で一気に植物を生やし、成長させて皇妃に纏わりつかせた。

 動きを奪ってしまえば、それで勝負はつくはずで‥‥‥


「なんの!」

 ふんっ!!っとルーレア皇妃が力を入れた次の瞬間、拘束が一瞬にしてはじけ飛んだ。


「だったらこれでどうだ!『ボルトレイン』!!」

 電撃を纏った雨を降らせて、痺れさせて動きを止める魔法。

 これならば、ほぼ確実に触れて痺れて動けなくなってしまえるはずだが…‥‥ルースの思った以上hに、ルーレア皇妃は強かった。

「せいぇいぇいぇいぇいぇいぇいぇいぇいぇ!!」
「雨粒全部はじきまくっている!?」

 まさかの剣の高速切りによって、降っているはずの電撃を纏った雨がすべてはじかれた。

……そのはじかれた流れ弾のいくつかが、遠くから見ていた兵士に当たっていたが、まぁ見なかったことにしたほうが良いだろう。


「なら、『ポイズ、」

 次の魔法を発動させようとしたが…‥‥次の瞬間、ルースの周囲はひっくり返った。

「へ?」

 いや、ルース自身がひっくり返されたのである。

 見れば、すばやく接近したルーレア皇妃が背後に回って、身体をつかんで・・・・・

「バックドロップよ!!」


ドゴォォォォォォォォン!!
「ぎやぁぁぁぁぁぁあ!?」

 剣でも魔法でもなく、まさかの体術で勝負が決まった。


 この世には、まだまだ知らぬ強者あり。けれどもできれば、関わらずに平和を‥‥‥
 
 そうルースは思いつつも、そのまま気絶したのであった。



「ふふふふ、中々強かったけれども、最後がちょっと甘かったわね」
「る、ルース君!!」
「や、やり過ぎなんだけど!?」
―――――主様、ピクリトモ動カナイヨ!?。

 笑うルーレア皇妃がであったが、エルゼ達は気絶したルースを心配して慌てて駆け寄るのであった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

【毒僧】毒漬け僧侶の俺が出会ったのは最後の精霊術士でした

朝月なつき
ファンタジー
※完結済み※ 落ち着かないのでやっぱり旧タイトルに戻しました。  ■ ■ ■ 毒の森に住み、日銭を稼ぐだけの根無し草の男。 男は気付けば“毒漬け僧侶”と通り名をつけられていた。 ある日に出会ったのは、故郷の復讐心を燃やす少女・ミリアだった。 男は精霊術士だと名乗るミリアを初めは疑いの目で見ていたが、日課を手伝われ、渋々面倒を見ることに。 接するうちに熱に触れるように、次第に心惹かれていく。 ミリアの力を狙う組織に立ち向かうため、男は戦う力を手にし決意する。 たとえこの身が滅びようとも、必ずミリアを救い出す――。 孤独な男が大切な少女を救うために立ち上がる、バトルダークファンタジー。  ■ ■ ■ 一章までの完結作品を長編化したものになります。 死、残酷描写あり。 ↓pixivに登場人物の立ち絵、舞台裏ギャグ漫画あり。 本編破壊のすっごくギャグ&がっつりネタバレなのでご注意…。 https://www.pixiv.net/users/656961

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...