最低令嬢の愛し方

無色

文字の大きさ
1 / 1

最低令嬢の愛し方

「ローズ=スカーレット!! 貴様との婚約を破棄し、この国より追放する!!」

 そう声を荒げるのは、わたくしの婚約者でありこの国の第一王子、エミリオ=シュヴァルグラン。

「婚約破棄の上に追放とは穏やかではありませんわね殿下。そんな酷い扱いをされる覚えはありませんことよ」

 世界の叡智、至宝と謳われるこのわたくしが婚約破棄で追放だなんて。

 へそで紅茶がボッコボコですわ。

「覚えが無いだと……貴様ぁ!! 私に貢ぐだけ貢がせた挙げ句、贈り物を質に入れその金で遊び回っておきながら身に覚えが無いとはどういう了見だぁ!!」

「ほえぇ?ですわぁ」

「とぼけるな腹が立つ!! 調べはついているんだ!! しかも貴様!! 私だけでなく他の男にも同じようなことをしているらしいな!! 貴族の息子、商会の役員、近衛兵、学園の教師、平民の年端もいかない子ども!! わかっているだけでもとんでもない数だ!!」

「え? だって……ねぇ? わたくしに貢げるだけ光栄に思ってほしいのですが。幸福を享受させるのは貴族の役目ですし。というかセンスが無い贈り物をしてくるのが悪いのでは?」

「ここまででも鞭打ちは免れない罪を犯してる自覚が無いようだな……」

 わたくしの罪なんて美しすぎるくらいでは?

「不貞は一旦脇に置いたとして……貢ぎ物を売った金で娼館通いをしている件に関してはどう釈明する?」

「それは違いますわ殿下! ゴミ……貢ぎ物を売ったお金はあくまでチップ! 娼館はちゃんとお小遣いで通いましたわ!」

「ゴミと言ったか貴様!! 貴様が見たいと言うからわざわざ遠方より取り寄せた青薔薇を!! 貴様が私とお揃いがいいと言って作らせたこの世に二つと無い指輪を!!」

「ほえぇ?ですわぁ」

「その顔をやめろ!! もう可愛さを通り越して憎しみが勝つ!! 正直私はもう貴様を絞首刑に処したい気持ちでいっぱいだ!!」

 可愛さ余って的なやつでしょうか。

 わたくしの顔面最強ですしね。

「ですが殿下、ぶっちゃけわたくしが性に奔放なのは昔から知ってたでしょう?」

「とっくにな!! 十六の成人の儀に――――――――」



『お脱ぎあそばせ。ゆっくり千まで数えてなさいな殿下。数え終わる頃には夢の中ですわ』



「と初めてで限界まで搾り取られたのは今でもトラウマだ!!」

「思えばあの時が最初で最後でしたわね。何度夜這い……お誘いしても、忙しい、また今度、と。淑女に恥をかかせて。これだから早漏の短小包茎(笑)野郎は……コホン何でもありませんわぁ」

「断頭台に上れぇ!!」

「断りますわ!! このローズ=スカーレット!! 恥ずべき行為は一切しておりませんことよ!!」

「……では、貴様が貢ぎ物を売った金だけでは足らず、私の名を使い国庫の金を不正に利用した件についての話をしようか」

「ほえぇ~?ですわぁ」

「仮にも女だ私もあまり強い言葉は使いたくないがな……ぶん殴るぞ悪女クソビッチ!!」

「マジ下品ですわぁ」

「どの口が……!!」

「僭越ながら異議申し立てます殿下。神が産んだ唯一無二の絶対的美少女たるわたくしですわよ? 私財だろうが国庫だろうがわたくしに使われるのは自然で喜ばしいことでは? 泣いて崇め平伏し奉っていいですわよ」

「顔面火炙りにしてやろうか……!!」

 ピキッてますわぁ殿下。

「あと貴様、私にも内緒で勝手に議会を招集し法案を通したな。たしか……なんだったか……」

「法案……ああ、わたくしの言うことは絶対~ってあれですか?」

「何様ゲームだ!!!」

 殿下のツッコミキレッキレで草ですわ。

「何様と訊かれればわたくし様ですが。ですが突き詰めれば逢瀬を理由にお金を使っただけ。何か問題が?」

「ふんぞり返るな!! 何がだ!! 傲慢の塊か!!」

「自尊心無くしてなーにが貴族ですか」

「もう修道院に入れ貴様……清貧を美徳と知れ……」

「清貧とは富ある者が慎ましく在ろうとする心構えですわ。真に貧しき者に清貧を説いても、それはその場しのぎの逃げ道の示唆にすぎません。そんなもの、いったいどこの誰が好むというのでしょう」

「ローズ……」

「お金は在るに越したことはないのですわ。裕福とは余裕。余裕とは富無くして成らないのです。だからわたくしは、国が抱え込んだ無為な富を民に分け与えるのですわ」

「いや、それも全て娼館に通うために使ったという調べがついている」

「てへペロ☆ですわぁ」

「ぶち殺すぞ!!! 何を空っぽな言葉を並べ立てているんだ!!! 今の立場がわかっているのか!!!」

わたくしはいつ如何なる時もローズ=スカーレット! 誇り高きこの国の女神! 天地神明にその名在りの究極令嬢ですわ!」

「色に蕩け金に呆け……それでも飽き足らず尚も傲慢……ならば再度告げようローズ=スカーレット。貴様との婚約を破棄し、この国より追放する」

「このことは陛下や妃殿下もご存知で?」

「いや、私の独断だ。父も母も貴様に抱かれ貴様に陶酔してしまっているからな」

わたくしを嫌悪するのは殿下の勝手ですが、その後はどうするおつもりですの? この国には、いいえ世界には、わたくしを愛する者しかおりませんのよ」

 わたくしは猫を被らない。

 どこでだろうと、誰を相手にしようと、わたくしへりくだらず傲慢で在り続ける。

 自由に振る舞う。

 それこそがわたくし

 そうでなければローズ=スカーレットではないのですから。

わたくしを排したとなれば、殿下は国賊……いいえ、世界に仇なす逆賊として後世に名を残すでしょう。石を投げられ、市中を惨めな姿で引きずられ、最後は絞首か断首か。誰からも愛されないまま死んでいくのです。それでも」

「ああ」

「最後に、そうまでしてでもわたくしを追放したい理由をお訊かせ願えますか?」

「……そうだな。そうでもしないと、の心から私が消えてしまうからだろうか」

 私はため息をついた。

 本当にこの方はおバカさんですわ。

「殿下。最後によろしいでしょうか」

「なんだ」

わたくしはおセッ○スが好きですわ」

「知っている」

「誰が相手だろうと気持ちいいものは気持ちいい。身体を重ねればそれだけで幸せを共有出来るのです。老若男女、わたくしに抱かれて喜ばぬ者などいません。ですが、わたくしが一番幸せだと思ったのは、殿下とまぐわっているときでした。早漏でも短小でも包茎でも、あなたが私を幸せにしたのです」

 早漏でも短小でも包茎でも。

「性に奔放……それでも、案外わたくしは一途でしたよ。殿下、あなたをお慕いしておりました」

「……貴様は、やはり悪女だ。言葉一つでこんなに揺らぐ」

「クスクス。どうします? 最後にキスくらいしておきますか? それとも一発ブチ込んでみますか? その場合一発と言わず搾れるだけ搾って殿下の子を確実に孕んでみせますが」

「やめておこう。後悔しそうだ」

「残念。後悔しやがれですわ、って中指を立ててやろうと思いましたのに」

「……さらばだ、ローズ=スカーレット」

「ええ。さようならですわ、エミリオ」

 

 ローズ=スカーレットは姿を消した。

 国から、世界から。
 
 彼女の行方も、その後どう生きたのかも、知る者は一人もいない。

 王子エミリオは彼女を追放したことで王家の怒りを買い廃嫡。

 国民の怒りを一身に受け、弱冠二十歳という若さでこの世を去った。

 そして――――――――



「おい水奈みな!! お前また浮気しただろ!!」

理央りおうるさい。したけど? なにか?」

「なんでそんなキョトンて出来るの?! おれお前の彼氏だよね?! 一応親が決めた許嫁いいなずけだよね?!」

「彼氏がいて他の子とセッ○スしちゃいけないんですか~? 誰が決めたんですか~? 何時何分何秒子宮が何回排卵したときですか~?」

「貴様ぁ!! また婚約破棄して追放してやろうか!!」

「やれるもんならやってみやがれですわぁ!!」

「「ん??」」



 物語は何度でも紡がれる。

 二人の恋も、愛も。

 何度でも。
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あのとき助けていただいた触手です

無色
恋愛
 美しく聡明な侯爵令嬢メルクルディ=アヴァローンは、妬みを抱いた公爵令嬢グリセリアによって、身体の半分が触手に変わる呪いをかけられ、王都から追放される。  孤独と絶望の中で生きる彼女のもとに現れたのは、天才だが変人の魔法使いロッシュ=カサンドル。  異形となった彼女の姿を美しいと称賛し、毎日触手の研究に没頭するロッシュに、メルクルディの心は次第にほぐれていく。  一方、呪いをかけたグリセリアは、満足げに高笑いするが、じわじわと破滅の兆しが忍び寄っていることに気付かないでいた。

婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ

松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。 エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。 「…………やらかしましたわね?」 ◆ 婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。 目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言―― 「婚約破棄されに来ましたわ!」 この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。 これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。

悪役令嬢は趣味が悪い

無色
恋愛
あなたとの婚約なんて毛ほどの興味もありませんでした。  私が真に慕うのは……

【短編】その婚約破棄、本当に大丈夫ですか?

佐倉穂波
恋愛
「僕は“真実の愛”を見つけたんだ。意地悪をするような君との婚約は破棄する!」  テンプレートのような婚約破棄のセリフを聞いたフェリスの反応は?  よくある「婚約破棄」のお話。  勢いのまま書いた短い物語です。  カテゴリーを児童書にしていたのですが、投稿ガイドラインを確認したら「婚約破棄」はカテゴリーエラーと記載されていたので、恋愛に変更しました。

破棄ですか?私は構いませんよ?

satomi
恋愛
なんだかよくわからない理由で王太子に婚約破棄をされたミシェル=オーグ公爵令嬢。王太子のヴレイヴ=クロム様はこの婚約破棄を国王・王妃には言ってないらしく、サプライズで敢行するらしい。サプライズ過ぎです。 その後のミシェルは…というかオーグ家は…

婚約破棄されたのに、王太子殿下がバルコニーの下にいます

ちよこ
恋愛
「リリス・フォン・アイゼンシュタイン。君との婚約を破棄する」 王子による公開断罪。 悪役令嬢として破滅ルートを迎えたリリスは、ようやく自由を手に入れた……はずだった。 だが翌朝、屋敷のバルコニーの下に立っていたのは、断罪したはずの王太子。 花束を抱え、「おはよう」と微笑む彼は、毎朝訪れるようになり—— 「リリス、僕は君の全てが好きなんだ。」 そう語る彼は、狂愛をリリスに注ぎはじめる。 婚約破棄×悪役令嬢×ヤンデレ王子による、 テンプレから逸脱しまくるダークサイド・ラブコメディ!

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。