婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?

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婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?

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 肩が重い。
 その理由を語るのは野暮というのだろう。
 私ディーカ=ペイズリーは、人々が息を呑む中、婚約者ミルメー=ナイデス公爵令息が高らかに宣言の前に沈黙していた。

「聞けディーカ=ペイズリー! 私は真実の愛を見つけた! よって君との婚約を破棄させてもらう!」

 隣に立つのは、侯爵令嬢のマーマ=ソコソコノッパイ。
 完璧な美貌と完璧な教養を併せ持つ、天が二物も三物も与えた奇跡の人。
 対して私はというと、子爵という家格のしがない令嬢であり、顔立ちも凡百にありふれた程度のもの。
 どちらが先に言い出したかはともかく、並び立つ二人は絵になるほどよくお似合いだ。
 私は一瞬だけ目を伏せため息をつき、それから顔を上げた。

「……そうですか」

 ざわ、と空気が揺れる。
 ミルメーは得意げだ。
 
「潔いな。元々家格が釣り合わない婚約だ。身の程を弁えたといったところか」

 いえ、そうではなくもう息苦しくて。
 一刻も早くドレスを脱ぎたくて仕方ないのです。

「お二人の新たな門出を心から祝福いたします。では、私はこれで」

 早く。早く帰らないと。
 でないと……
 踵を返そうと息を大きく吸い込んだ瞬間、パン――――――――と何かが爆ぜる音が響いた。
 同時、私の肺に入り込んでくる大量の空気。
 マズいです……ドレスが……
 ミルメーを初め場の方々の視線が私に集中する。
 もとい、私の胸部……乳に。

「お、おぉ……」
「な、なんと見事な……」
「両手に余るぞあの大きさは……」
「豊満なのに美しい……」
「まるで女神のようだわ……」

 男女問わず私の乳に息を呑む。
 かろうじて残ったサラシでギリギリ肝心なところは隠れているにしても、やはり面前の前で乳を露出するのは恥ずかしいですね。

「ディーカ……そ、それは……」
「それは、とは……見てのとおりの巨乳でございますが」
「し、しかし、そんな……」
「いつもはドレスを美しく着るためにサラシをキツく巻いておりました。ですが最近また大きくなってしまって。ドレスを直す時間がありませんでしたの」
「お、大きく……?」

 ゴクリ、とここまで生唾を飲む音が聞こえる。
 お母様譲りの見事な乳から目が離せないご様子。
 このまま婚約していれば、この乳を堪能する機会もあったでしょうが、婚約破棄を申し付けたのはそちらですから。
 一刻も早く退散して肩の力を抜きたいと思っていましたが、ドレスが弾けて息がしづらくなったことですし、どうせなら少しくらい、この自慢の巨乳で意趣返しをしてみましょうか。

「マーマ様、失礼ながらお訊ねいたします。マーマ様の胸囲は如何ほどでしょう。見たところCくらいといったところでしょうか」
「な、何を無礼な! わたくしこれでもDカップですわ!」
「私はKカップですよ」

 大きく実った西瓜すいかほどの大きさでありながら、けして型崩れしておらず美しいラインを保ち、張りツヤはさながら極上の水枕。
 これ以上のものはちょっと他にはないという自負がある。
 現に再度……いや、その場の視線は私の乳にずっと釘付けだ。
 ミルメーも目を泳がせようとしておらず、マーマの笑顔がわずかに引きつる。

「み、ミルメー様! あんな脂肪の塊にうつつを抜かさないで!」
「そ、そうだ! 私は貴族としてあんな――――」
「ちなみに走るとすごいですよ」
「くっ!!」

 ミルメーは膝から崩れ落ちた。
 手の平から溢れるはずの乳は、手の平に乗せる前に霞となって消えてしまった。
 その消失感が彼を地に伏したのだ。

「さて、それでは改めて失礼いたします」

 ずっと乳を露出しているのもおもしろくない。
 乳を隠しながらおざなりなカーテシーをした折、フワリとマントが私の身体を隠した。

「淑女が肌を晒しているのに、誰もそれを隠そうとしないとは。この国の格が知れるな。やがては国を率いる立場として恥ずかしい」

 私の傍でそう言ったのは、誰あろうこの国の王太子。
 ニューガ=ドゥアイスキ殿下。

「ナイデス公爵令息。なかなか興味深い余興だった。」
「で、殿下、これはその……」
「言い訳はいい。このことは陛下にも筒抜けだ。一方的な婚約破棄でペイズリー子爵令嬢の顔に泥を塗った……身勝手な振る舞いで王の庭を穢した罪は重いぞ。覚悟しておくことだな」
「そんな……ま、マーマ……どこだ、マーマ」

 気付けばマーマの姿は無かった。
 いち早く逃げたみたいだけど、それで責任の追及が無くなったわけではない。
 遅かれ早かれ何かしらの罰が下るだろう。

「災難だったな」
「いえ……。マントをありがとうございます」
「構わん。他の者にそれを見せるのが惜しくなっただけだ」

 あら、殿下の視線のまっすぐなこと。
 チラッとマントをはだけさせると、乳を見ていることを隠そうともしない熱い眼差し。
 つい顔が火照ってしまう。

「身分に臆さず己の強みを断言する覚悟。見事という他ない」
「恐れ入ります」
「婚約の破棄については王家が証人となろう。淑女の経歴に傷はついたが」
「ご心配は無用です。傷一つで価値が潰えるような弱い女ではございませんので」
「たしかに、それは相当だ。ディーカ=ペイズリー」
「はい」
「おれのものにならないか?」

 視線はあまりにも乳に向きすぎていたけれど、あまりに堂々とした雄々しい目をしていたので、私はクスッと吹き出してしまった。

「乳以外も見てくださるのであれば喜んで」

 こうして。
 婚約破棄されたはずの私は、何故か王子様に求婚され、後に王妃となる。
 肩は相変わらず重く、伸し掛かる誇りもまた重いけれど。
 まあきっと幸せにやることでしょう。
 私、巨乳ですから。
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