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森羅継承編
54.歴史の継承者
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そんなわけで。
亡国ロストアイでの事件、または騒動、そうでなければただのケンカは、こうして幕を閉じることとなった。
みんな泥みたいに眠って一夜が明けて。その後の顛末を少しだけ語ろう。
まずは人魚の魔眼。
「私たちは今回のことをギルドに報告しなければなりません」
元々ノアについての調査に来たミオさんたちの職務だ。そればかりは避けられない。
ただし、アウラたちのことは隠匿して。
「我々はどんな罪でも受け入れる。隠し立てしてもらう謂れは無い」
って、アウラは言うんだけど。
その必要はないっていうのが、私たち全員の総意だ。
「ただの魔物の撃退に、わざわざ悪人を仕立てる必要もあるまい」
「そうですね。第一、古代の精霊の変異など、報告したところで誰に理解出来るでしょう」
「今回の件は瘴気に当てられた魔物の活性化、及び凶暴化ということでギルドに報告しておきましょう。鳳凰級にはそれなりの地位と発言権もあることですし」
と、大人組のしたたかなこと。
さしものアウラも言いくるめられた。
「しかしそれでは…」
「アウラ、罪というならアタシもそうよ。あなたたちだけに背負わせることはしないわ」
アウラたちを咎めない運びになったのは、ドロシーの嘆願による部分が大きい。
女の子に頭を下げられては、リコリスさんも致し方無しだ。
まだどことなくぎこちなさは感じるものの、刺々しい感じはなくなった。
仲良きことは美しきかな。
なにはともあれ。
「とりあえず飲んで騒ごうぜ!かんぱーい!」
「かんぱーい!」
美味しい料理に美味しいお酒。
古今東西、飲みの席は全てを優しく包み込む。
「ねえねえ妖怪の剣士さん。リベンジさせてくださいよー。次は絶対私が斬りますから」
「クスッ、無理ですよ。私の方が強いのですから」
「あークルーエル!それより私が先ー!負けたままなの悔しいもんっ!」
「いいですよ。強い人は大歓迎です」
「次は絶対!絶対負けません!」
「おーおーその意気だお嬢ちゃん。ま、簡単に負けるようじゃ騎士は務まらねえってのを教えてやるよ」
「クハハ、言いおるのう。そなたこそ教えを請うて然るべきじゃろうに」
「ハッ、うっせえよ」
「あっあの、えと…」
「なによ」
「え、と、その…めちゃくちゃ吹き飛ばしてボロボロにしちゃうくらい強くてゴメンなさい…」
「ケンカを売られているのだけわかったわグズグズに溶かしてやるからこっち来なさい根暗女!」
「ひいいい!根暗女です!」
「皆さん血の気が多いことで」
「本当ですねぇ~。ふあぁ」
「そちらが望まれるなら、こちらも受けて立つ所存ですが」
「嫌ですよめんどくさい。一緒にお昼寝っていうなら、考えてあげなくもありませんけど」
「フフ、ステキなご提案ですね」
「あなたも内心、負けて悔しいと思っているのでしょうか」
「さあな。なんせこれでもエルフの騎士としては最強のつもりだったからな。初めての感情に心が追いついていないだけかもしれない」
「憑き物が落ちた今のあなたなら、もしかしたら少しはいい勝負が出来るかもしれませんよ。負けるつもりは毛頭ありませんけど」
「いつかリベンジさせてもらうとしよう。ドロシー様を守る者として、負けたままではいられないからな。ドロシー様が、また我々を騎士として受け入れてくれればだが」
「大丈夫ですよ。ドロシーはそんなに小さな人ではありませんから。一部はともかく」
「ああ…。一部に関しては嘆かわしいまでに昔とまったく変わっていなかったな」
「あんたら悉く滅殺するわよ?」
うへへ~♡女の子の仲直りパートすち~♡
ケンカの後の女の子のイチャイチャ眼福~♡
もう一生仲良くしてくれぇ~♡
それからドロシーの精霊について。
「改めて!ドロシーの精霊のトトです!みんなよろしく!」
「名前、気に入ってくれた?」
「うん!可愛い名前をありがとう!」
精霊っていうのは、ようは意思を持った魔力みたいなもので、案外その辺に浮いているものみたい。
エルフは特に精霊との結び付きが強い種族で、それ故に魔法や加護に精霊の力が加わってるってことなんだけど、トトはノアの魂を株分けした精霊で、普通とはだいぶ違うイレギュラーめいた存在なんだとか。
ま、可愛いからなんでもアリ!
「また旅路が賑やかになるね。よろしくねトト」
「こちらこそ。ドロシーの花婿さんっ」
花婿……悪い気せぬ。
あ、ところで精霊の力に目覚めたドロシーは、羽が生えたり髪が光ったりしてたけど、今は元の姿に戻ってる。
トト曰く、あれは精霊の力を色濃く現した、精霊に近い姿なんだって。
今は魔力が昂ぶらないとあの姿にはなれないけど、ゆくゆくは自分の意思で制御可能になるらしい。
スキルの変化も加わって、ドロシーの成長を感じるね。
そうそう、成長といえば私もだ。
成り行きとはいえ、アウラたちに私の血を飲ませたことで【百合の姫】で繋がり、五人のスキルを使えるようになった。
ただし【精霊魔法】と【精霊の加護】についてはその限りじゃない。
これらは当人と波長の合った精霊がいて初めて成り立つものだからだ。
精霊といえば、私の中に入ったノアの魂だけど。
「まーったく変化無いんだよねこれが」
身体に違和感も無いし、いたって普通。
私の中に入ったように見えただけかと思うと、私自身に【精霊魔法】と【精霊の加護】が付いてるからそれも違う。
よくわからないけど、今はまだ眠っている、もしくは瘴気でダメージを負った身体を癒やしているところなのかもしれない。
そのうちひょっこり、私たちの前に現れたりして。
超絶美少女が抱いてーとか言ってきたらどーしよ♡
「ニシシ、楽しみだなー、っと!」
ノアの影響で魔力の出力が高まったんだけど、これがすごいすごい。
「わー!森が元に戻った!」
「さすがお姉ちゃんです!」
「すっごいすっごい!こんなこと出来る人間っているんだ!」
荒れ果てた森を再生するなんて余裕で、根元から折れた世界樹だって元通り。
地面も整地して、建物はハウスシードを撒いてっと。
「よし、こんなもんか」
元の街を知らないから多少私好みのニュアンスは入ってるけど、うん上出来じゃなかろうか。
「どう?」
「どう…って。あんた…」
「死んだ森が一瞬で…」
「大気も水も澄んで…ああ、懐かしい」
「そうだな…」
みんな喜んでくれて何より。
「貴殿には礼を尽くしても足りないな、リコリス殿。我らを救ってくれただけでなく、森を甦らせた。それにドロシー様のことも。改めて礼を言う」
「ウッヘッヘ、気にしなくていいって。てかそんな畏まらないでよ。リコリスでいいよ」
「そうは言うが、貴殿には大恩が…それにドロシー様の伴侶だろう。話に聞けばドラグーン王国の伯爵だというではないか。一介の冒険者とは話が違う」
「堅苦しいのは苦手なんだよ。貴族とか騎士とかじゃなくて、普通に友だちになろうぜ。って、私はとっくにそのつもりだけどね。ニシシ」
「変わった人間だ」
「私はそこがステキなんだよ」
って言うと、アウラは表情を柔らかくした。
「ドロシー様と出逢ったのがあなたでよかった。リコリス」
「うんっ。ところで、アウラたちはこれからどうするの?私たちと一緒に来る?」
「ドロシー様の傍にいたいのは山々だが、やるべきことがある。世界中に散らばった同胞たちに、森が甦ったことを伝える旅をしようと思う。この森で起きたことの一部始終を。そしてゆくゆくは再びロストアイ皇国を復活させたい」
「国の復活か…うん、いいね。そしたらドロシーはちゃんと皇女殿下じゃん」
「フン、そんなわけないじゃない」
ドロシーは髪を払って腰に手を当てた。
「アタシはいつかこの国を元の皇国に戻して、民全員を二度と争いの起こらない平和な時代に導いてみせるわ。ロストアイの歴史の継承者にして、永劫の未来を創る女皇!ドゥ=ラ=メール=ロストアイとしてね!」
女皇宣言ときたか。
いや第一皇女の立場押し退けてるじゃねーか。
「姉さんにだって譲らないわよ。アタシがそうするって決めたんだもの」
「ドロシーなら出来るよ!私もお手伝いする!」
「ありがとうトト」
「ニッシッシ。いいじゃんいいじゃん、応援する」
「ええ。だからあんたも隣で支えなさいよね。未来の皇帝様」
「……うえぇ?!!待ってその心の準備は出来てねえ!!」
「アタシはあんたと添い遂げるつもりなんだから、当然そうなるわよ。何があっても守る。絶対に味方でいる…でしょ?責任取ってよね」
「うぐ…」
私の困り顔を見て、ドロシーは上機嫌に笑った。今にもクルクル踊りだしそうなほど。
皇帝ねえ…そんな大それた役はさておき、ドロシーのことは幸せにするつもりだっての。
「そのためには薬売ってたくさん稼がないとね。なんせ何一つ残ってないんだもの。あーあ、せめて緑の心臓だけでもあればね」
「緑の心臓…たしか、メロシーさんがオネエ子爵のお祖父さんに渡したとかいう宝石だっけ?」
「あれ売れば白金貨100枚なんて余裕なのに」
「国宝だって聞いたんだけど」
そういえばどうなったんだろ。
オズの館にあったんなら、リルムが丸ごと食べちゃってるはずだし…【アイテムボックス】に入ってたり?
そのまま消化してませんようにってゴソゴソしようとしたら、
「これのことですか?」
シャーリーがでっかいエメラルドのネックレスを差し出してきた。
「緑の心臓!シャーリー、これ!」
「子爵の館で失敬したものです。前職の代金にその…ゴニョゴニョ。コホン…ずっと閉まっておいたのですが、取っておいてよかったです」
「ありがとうシャーリー!」
日の光を浴びて煌めくエメラルドの眩しいこと。
緑の心臓の名前を裏切らない、まさにエルフの国の象徴だ。
「よし、然るべき時に売ってお金に変えるわよ」
「思い入れとか情緒とか無いんかて」
「思い入れや情緒でお腹は膨れないのよ」
そうだった。
ドロシーってまあまあ守銭奴なんだよね。
さすが百合の楽園の経理担当。
「さすがに緑の心臓一つでは心元ありませんね。我々も旅すがら、冒険者を稼業に少しずつ蓄えを増やそうかと思います。これでも一応我々は鳳凰級の冒険者ですので」
「さすがにお金無しじゃ生きられないってわけで、百年の間に適当な依頼こなしてたらランクが上がっちゃったんですよね」
相当強いもんなみんな。
これなら五人旅も心配は無いかもだけど、せっかく再会出来たのに別れるのは寂しいだろうな。
と思ってたら、ドロシーの新スキルが有能だった。
【眷属召喚】。
【召喚魔法】の一種で、どれだけ離れていようと、魂で繋がった配下なら呼び出すことが出来るというもの。
「いざとなったらいつでもお呼びください。この命、再びあなた様に捧げます」
とは少し大仰だけれど、こればっかりはアウラの気質もあるのだろう。
よかったねドロシー。
そんでこのスキルを私も使えるわけだけど……グフフ♡お風呂中のアルティを呼んできゃー♡とか、ラッキースケベし放題じゃないですかぁ~♡
「邪な気配!!」
「うおお危ねえビンタ感覚でコキュんな!!」
はいはい自重しますよ。
…たぶん。
「それでは、私たちはこれで」
「はい。いずれまたどこかで」
ミオさんたちと別れ、私たちもそろそろ行くかと支度をする。
「姫さんたちはこれからどうするんだ?」
「ディガーディアーに。これといって目的があるわけじゃないんだけど、リコリスが決めたから」
「目的ならあるよ。異国の可愛い女の子とイチャイチャするんだ~♡」
ドワーフのイメージっていえば、やっぱり職人的なね。
やっぱり種族全体が気難しい感じなのかな?
頑固一徹な職人気質な女の子…いい!!
「あなたの手には無骨な金槌よりも私という花が似合いますよ。なーんちゃってくっふぅ~♡入国と同時に国民全員から求婚されたらどうしよ~♡」
「姫さんの伴侶はなんていうかこう…個性的だな」
「ただのクズでスケベな変態よ。…ま、そこも含めて好きになったわけだけど」
「うっわドロシー様、雌の顔してる~。可愛い~」
「うっさいわね!!ほらほら、さっさと行くわよ!」
「あ、待ってよドロシーお姉ちゃん!」
「待ってくださいです!」
ドスドスと歩いて、ピタリと立ち止まる。
「アウラ、クルーエル、ヘルガ、ティルフィ、ネイア」
「はっ」
「またね」
「はい。御身体に気を付けて。我ら森羅騎士団一同、如何なる時も遠き空の下にてドロシー様を思っております。行ってらっしゃいませ」
今度はちゃんと。
ドロシーは笑って手を振った。
「うんっ!」
勇ましく、強く、たくましく。
別れはあれども涙は無く。
いざ次なる冒険へと、私たちは雄大な深緑の森を後にした。
出逢いと絆。
たくさんのものを得て。
或いは取り戻して。
或いは継承して。
また一歩。もう一歩。
前へ。前へ。
亡国ロストアイでの事件、または騒動、そうでなければただのケンカは、こうして幕を閉じることとなった。
みんな泥みたいに眠って一夜が明けて。その後の顛末を少しだけ語ろう。
まずは人魚の魔眼。
「私たちは今回のことをギルドに報告しなければなりません」
元々ノアについての調査に来たミオさんたちの職務だ。そればかりは避けられない。
ただし、アウラたちのことは隠匿して。
「我々はどんな罪でも受け入れる。隠し立てしてもらう謂れは無い」
って、アウラは言うんだけど。
その必要はないっていうのが、私たち全員の総意だ。
「ただの魔物の撃退に、わざわざ悪人を仕立てる必要もあるまい」
「そうですね。第一、古代の精霊の変異など、報告したところで誰に理解出来るでしょう」
「今回の件は瘴気に当てられた魔物の活性化、及び凶暴化ということでギルドに報告しておきましょう。鳳凰級にはそれなりの地位と発言権もあることですし」
と、大人組のしたたかなこと。
さしものアウラも言いくるめられた。
「しかしそれでは…」
「アウラ、罪というならアタシもそうよ。あなたたちだけに背負わせることはしないわ」
アウラたちを咎めない運びになったのは、ドロシーの嘆願による部分が大きい。
女の子に頭を下げられては、リコリスさんも致し方無しだ。
まだどことなくぎこちなさは感じるものの、刺々しい感じはなくなった。
仲良きことは美しきかな。
なにはともあれ。
「とりあえず飲んで騒ごうぜ!かんぱーい!」
「かんぱーい!」
美味しい料理に美味しいお酒。
古今東西、飲みの席は全てを優しく包み込む。
「ねえねえ妖怪の剣士さん。リベンジさせてくださいよー。次は絶対私が斬りますから」
「クスッ、無理ですよ。私の方が強いのですから」
「あークルーエル!それより私が先ー!負けたままなの悔しいもんっ!」
「いいですよ。強い人は大歓迎です」
「次は絶対!絶対負けません!」
「おーおーその意気だお嬢ちゃん。ま、簡単に負けるようじゃ騎士は務まらねえってのを教えてやるよ」
「クハハ、言いおるのう。そなたこそ教えを請うて然るべきじゃろうに」
「ハッ、うっせえよ」
「あっあの、えと…」
「なによ」
「え、と、その…めちゃくちゃ吹き飛ばしてボロボロにしちゃうくらい強くてゴメンなさい…」
「ケンカを売られているのだけわかったわグズグズに溶かしてやるからこっち来なさい根暗女!」
「ひいいい!根暗女です!」
「皆さん血の気が多いことで」
「本当ですねぇ~。ふあぁ」
「そちらが望まれるなら、こちらも受けて立つ所存ですが」
「嫌ですよめんどくさい。一緒にお昼寝っていうなら、考えてあげなくもありませんけど」
「フフ、ステキなご提案ですね」
「あなたも内心、負けて悔しいと思っているのでしょうか」
「さあな。なんせこれでもエルフの騎士としては最強のつもりだったからな。初めての感情に心が追いついていないだけかもしれない」
「憑き物が落ちた今のあなたなら、もしかしたら少しはいい勝負が出来るかもしれませんよ。負けるつもりは毛頭ありませんけど」
「いつかリベンジさせてもらうとしよう。ドロシー様を守る者として、負けたままではいられないからな。ドロシー様が、また我々を騎士として受け入れてくれればだが」
「大丈夫ですよ。ドロシーはそんなに小さな人ではありませんから。一部はともかく」
「ああ…。一部に関しては嘆かわしいまでに昔とまったく変わっていなかったな」
「あんたら悉く滅殺するわよ?」
うへへ~♡女の子の仲直りパートすち~♡
ケンカの後の女の子のイチャイチャ眼福~♡
もう一生仲良くしてくれぇ~♡
それからドロシーの精霊について。
「改めて!ドロシーの精霊のトトです!みんなよろしく!」
「名前、気に入ってくれた?」
「うん!可愛い名前をありがとう!」
精霊っていうのは、ようは意思を持った魔力みたいなもので、案外その辺に浮いているものみたい。
エルフは特に精霊との結び付きが強い種族で、それ故に魔法や加護に精霊の力が加わってるってことなんだけど、トトはノアの魂を株分けした精霊で、普通とはだいぶ違うイレギュラーめいた存在なんだとか。
ま、可愛いからなんでもアリ!
「また旅路が賑やかになるね。よろしくねトト」
「こちらこそ。ドロシーの花婿さんっ」
花婿……悪い気せぬ。
あ、ところで精霊の力に目覚めたドロシーは、羽が生えたり髪が光ったりしてたけど、今は元の姿に戻ってる。
トト曰く、あれは精霊の力を色濃く現した、精霊に近い姿なんだって。
今は魔力が昂ぶらないとあの姿にはなれないけど、ゆくゆくは自分の意思で制御可能になるらしい。
スキルの変化も加わって、ドロシーの成長を感じるね。
そうそう、成長といえば私もだ。
成り行きとはいえ、アウラたちに私の血を飲ませたことで【百合の姫】で繋がり、五人のスキルを使えるようになった。
ただし【精霊魔法】と【精霊の加護】についてはその限りじゃない。
これらは当人と波長の合った精霊がいて初めて成り立つものだからだ。
精霊といえば、私の中に入ったノアの魂だけど。
「まーったく変化無いんだよねこれが」
身体に違和感も無いし、いたって普通。
私の中に入ったように見えただけかと思うと、私自身に【精霊魔法】と【精霊の加護】が付いてるからそれも違う。
よくわからないけど、今はまだ眠っている、もしくは瘴気でダメージを負った身体を癒やしているところなのかもしれない。
そのうちひょっこり、私たちの前に現れたりして。
超絶美少女が抱いてーとか言ってきたらどーしよ♡
「ニシシ、楽しみだなー、っと!」
ノアの影響で魔力の出力が高まったんだけど、これがすごいすごい。
「わー!森が元に戻った!」
「さすがお姉ちゃんです!」
「すっごいすっごい!こんなこと出来る人間っているんだ!」
荒れ果てた森を再生するなんて余裕で、根元から折れた世界樹だって元通り。
地面も整地して、建物はハウスシードを撒いてっと。
「よし、こんなもんか」
元の街を知らないから多少私好みのニュアンスは入ってるけど、うん上出来じゃなかろうか。
「どう?」
「どう…って。あんた…」
「死んだ森が一瞬で…」
「大気も水も澄んで…ああ、懐かしい」
「そうだな…」
みんな喜んでくれて何より。
「貴殿には礼を尽くしても足りないな、リコリス殿。我らを救ってくれただけでなく、森を甦らせた。それにドロシー様のことも。改めて礼を言う」
「ウッヘッヘ、気にしなくていいって。てかそんな畏まらないでよ。リコリスでいいよ」
「そうは言うが、貴殿には大恩が…それにドロシー様の伴侶だろう。話に聞けばドラグーン王国の伯爵だというではないか。一介の冒険者とは話が違う」
「堅苦しいのは苦手なんだよ。貴族とか騎士とかじゃなくて、普通に友だちになろうぜ。って、私はとっくにそのつもりだけどね。ニシシ」
「変わった人間だ」
「私はそこがステキなんだよ」
って言うと、アウラは表情を柔らかくした。
「ドロシー様と出逢ったのがあなたでよかった。リコリス」
「うんっ。ところで、アウラたちはこれからどうするの?私たちと一緒に来る?」
「ドロシー様の傍にいたいのは山々だが、やるべきことがある。世界中に散らばった同胞たちに、森が甦ったことを伝える旅をしようと思う。この森で起きたことの一部始終を。そしてゆくゆくは再びロストアイ皇国を復活させたい」
「国の復活か…うん、いいね。そしたらドロシーはちゃんと皇女殿下じゃん」
「フン、そんなわけないじゃない」
ドロシーは髪を払って腰に手を当てた。
「アタシはいつかこの国を元の皇国に戻して、民全員を二度と争いの起こらない平和な時代に導いてみせるわ。ロストアイの歴史の継承者にして、永劫の未来を創る女皇!ドゥ=ラ=メール=ロストアイとしてね!」
女皇宣言ときたか。
いや第一皇女の立場押し退けてるじゃねーか。
「姉さんにだって譲らないわよ。アタシがそうするって決めたんだもの」
「ドロシーなら出来るよ!私もお手伝いする!」
「ありがとうトト」
「ニッシッシ。いいじゃんいいじゃん、応援する」
「ええ。だからあんたも隣で支えなさいよね。未来の皇帝様」
「……うえぇ?!!待ってその心の準備は出来てねえ!!」
「アタシはあんたと添い遂げるつもりなんだから、当然そうなるわよ。何があっても守る。絶対に味方でいる…でしょ?責任取ってよね」
「うぐ…」
私の困り顔を見て、ドロシーは上機嫌に笑った。今にもクルクル踊りだしそうなほど。
皇帝ねえ…そんな大それた役はさておき、ドロシーのことは幸せにするつもりだっての。
「そのためには薬売ってたくさん稼がないとね。なんせ何一つ残ってないんだもの。あーあ、せめて緑の心臓だけでもあればね」
「緑の心臓…たしか、メロシーさんがオネエ子爵のお祖父さんに渡したとかいう宝石だっけ?」
「あれ売れば白金貨100枚なんて余裕なのに」
「国宝だって聞いたんだけど」
そういえばどうなったんだろ。
オズの館にあったんなら、リルムが丸ごと食べちゃってるはずだし…【アイテムボックス】に入ってたり?
そのまま消化してませんようにってゴソゴソしようとしたら、
「これのことですか?」
シャーリーがでっかいエメラルドのネックレスを差し出してきた。
「緑の心臓!シャーリー、これ!」
「子爵の館で失敬したものです。前職の代金にその…ゴニョゴニョ。コホン…ずっと閉まっておいたのですが、取っておいてよかったです」
「ありがとうシャーリー!」
日の光を浴びて煌めくエメラルドの眩しいこと。
緑の心臓の名前を裏切らない、まさにエルフの国の象徴だ。
「よし、然るべき時に売ってお金に変えるわよ」
「思い入れとか情緒とか無いんかて」
「思い入れや情緒でお腹は膨れないのよ」
そうだった。
ドロシーってまあまあ守銭奴なんだよね。
さすが百合の楽園の経理担当。
「さすがに緑の心臓一つでは心元ありませんね。我々も旅すがら、冒険者を稼業に少しずつ蓄えを増やそうかと思います。これでも一応我々は鳳凰級の冒険者ですので」
「さすがにお金無しじゃ生きられないってわけで、百年の間に適当な依頼こなしてたらランクが上がっちゃったんですよね」
相当強いもんなみんな。
これなら五人旅も心配は無いかもだけど、せっかく再会出来たのに別れるのは寂しいだろうな。
と思ってたら、ドロシーの新スキルが有能だった。
【眷属召喚】。
【召喚魔法】の一種で、どれだけ離れていようと、魂で繋がった配下なら呼び出すことが出来るというもの。
「いざとなったらいつでもお呼びください。この命、再びあなた様に捧げます」
とは少し大仰だけれど、こればっかりはアウラの気質もあるのだろう。
よかったねドロシー。
そんでこのスキルを私も使えるわけだけど……グフフ♡お風呂中のアルティを呼んできゃー♡とか、ラッキースケベし放題じゃないですかぁ~♡
「邪な気配!!」
「うおお危ねえビンタ感覚でコキュんな!!」
はいはい自重しますよ。
…たぶん。
「それでは、私たちはこれで」
「はい。いずれまたどこかで」
ミオさんたちと別れ、私たちもそろそろ行くかと支度をする。
「姫さんたちはこれからどうするんだ?」
「ディガーディアーに。これといって目的があるわけじゃないんだけど、リコリスが決めたから」
「目的ならあるよ。異国の可愛い女の子とイチャイチャするんだ~♡」
ドワーフのイメージっていえば、やっぱり職人的なね。
やっぱり種族全体が気難しい感じなのかな?
頑固一徹な職人気質な女の子…いい!!
「あなたの手には無骨な金槌よりも私という花が似合いますよ。なーんちゃってくっふぅ~♡入国と同時に国民全員から求婚されたらどうしよ~♡」
「姫さんの伴侶はなんていうかこう…個性的だな」
「ただのクズでスケベな変態よ。…ま、そこも含めて好きになったわけだけど」
「うっわドロシー様、雌の顔してる~。可愛い~」
「うっさいわね!!ほらほら、さっさと行くわよ!」
「あ、待ってよドロシーお姉ちゃん!」
「待ってくださいです!」
ドスドスと歩いて、ピタリと立ち止まる。
「アウラ、クルーエル、ヘルガ、ティルフィ、ネイア」
「はっ」
「またね」
「はい。御身体に気を付けて。我ら森羅騎士団一同、如何なる時も遠き空の下にてドロシー様を思っております。行ってらっしゃいませ」
今度はちゃんと。
ドロシーは笑って手を振った。
「うんっ!」
勇ましく、強く、たくましく。
別れはあれども涙は無く。
いざ次なる冒険へと、私たちは雄大な深緑の森を後にした。
出逢いと絆。
たくさんのものを得て。
或いは取り戻して。
或いは継承して。
また一歩。もう一歩。
前へ。前へ。
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ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
転生したらスキル転生って・・・!?
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〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
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