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不夜燦然編
65.夜会の主
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「もぐもぐ…」
「このパンうまいね」
「はい」
「ソーセージ食べる?」
「……コク」
「あーん」
「あー…む。…おいしいです」
謝るタイミングを逃したせいで仲直りしたとは言い難いけど、こんな感じで朝ご飯を一緒にした。
テレサクロームは朝からそこかしこが賑わっていて、私たちを神妙にすることを許さない。
「今日は何しよっか」
「べつに」
「ど、どこか行きたいとことか…」
「特に無いです」
この素っ気無さよ…怒ってはいるんだよなぁ。
目も合わせてくれないし。
けど隣は歩いてくれる…この距離感てなんだ…?
このまま謝らないでうやむやに…いやいやそんなことあっていいわけないだろバカか私は。
時間が解決してくれると甘えでしかないから。
謝る……だけでいいのか?
『そろそろいいんじゃない?次に進んでも』
友だちの先…か。
「チラ…」
「見ないでください」
「しぃましぇん…」
ひぃん冷たすぎて心が折れる…
でも負けん!
アルティのために!見守ってくれているみんなのために!
「アルティ!」
「うるさいです大声で喋らないでください」
「しぃましぇん…」
折れるて…
「で、二人じゃ保たないからアタシたちに合流したと」
「ひっぐ…えっぐ…」
「お姉ちゃん大丈夫ー?」
「泣かない泣かないですよー」
「仲直りも出来んとかメンタル小学生かよ姫」
「返す言葉もごじゃいましぇん…」
だって、だってぇ…
「まあまあ。リコリスさんだって頑張っていますから」
「仲直り、しようとして偉い…ですね」
「アルティよ、リコリスも言い過ぎたと反省しておるのじゃ。今回の件はモナに大部分の非があろう。ここらで赦してやるのはどうじゃ?」
「うええええんママたちぃぃぃ!!」
「これをですか?」
「そなたの思いも否めぬが」
「ま、バカのことは一旦さておき」
バカにバカって言うとバカだけど傷付くんだぞ。
「せっかくだからパーっと遊びましょうよ。そしたらあんたも気分が晴れるでしょ」
「はぁ…遊ぶって、この街での娯楽は…」
「だからこの街らしい娯楽で遊ぼうってのよ。せっかくみんな揃って上層で行動出来るわけだし」
ドロシーは懐から金色のカードを取り出した。
「何それ」
「上層への通行証よ。昨日別れ際、あんたにってヴァネッサがくれたのよ。バタバタしてたからアタシが預かってたの。これがあれば上層の施設はどこでも利用出来るんだって」
「おーマジでかやった。ヴァネッサさんにお礼言いに行かないと」
「その前に遊び行こ。楽しそうなとこばっかだし。どこ行く?」
「そうだなぁ~」
「この通り沿いにある劇場なんてオススメだよ~♡」
またどこから現れたのか、モナは私の両肩に手を置いて悪魔の尻尾を燻らせた。
「今ね~エスメラルダ交響楽団がコンサートしてるんだぁ♡」
みんな警戒してんなぁ。私もだけど。
「そなた…昨日念を押したはずじゃが?妾らに関わるなと」
「うん♡だから昨日は大人しく帰ったでしょ?♡」
「屁理屈を…」
「おはよぉアルティちゃ~ん♡今日も可愛いねぇ♡」
アルティはシャーリーの影に隠れた。
悪魔は外見以上に魂で人を見る。測る。
大賢者クラスの膨大な魔力を有したアルティの魂は、師匠に言わせれば、磨き抜かれたダイヤモンドが空から降り注いでくるかのように神秘的で美しいらしい。
それが偶然モナの美的感覚に刺さったからこそ、昨日のようなことが起こったんだとか。
もう二度と昨日みたいなことにはさせないぞ。
「ダメだよ。私のだから」
「リコ…」
「モナは二人一緒でも大歓迎なんだけどなぁ♡」
一歩も退かねえじゃん無敵かよ。
「これからあたしたち遊び行くんだよね。邪魔するなら帰ってくんない?」
「モナも一緒に遊びたーい♡」
「メンタルいかちぃかよ」
「この先にねー楽しいところあるんだぁ♡みんなで行こう行こう♡ね、リコリスちゃん♡」
「まあ…」
ノリ気じゃないのは間違いなかったけど、断ってもついて来そうだしってことで。
私たちはモナの案内について行くことにした。
「じゃーん♡」
数分かけて到着したのは、上層でもとびきり大きな施設。
「ここはドリームランド♡テレサクローム1のカジノだよ♡」
「カジノか…」
「花婿さん花婿さん、カジノって?」
「賭博場のことだよ。お金をかけていろんなゲームで遊ぶとこ」
けど、なんでまたこんなところに。
有無を言わさず中へと。
赤と金で豪奢に纏められた内装、それに身なりを整えたお姉さんがお出迎えしてくれた。
「いらっしゃいませ。ドリームランド支配人、経理嬢隊隊長、ムーフィー=ゴルドーと申します」
「こんにちは~ムーフィーちゃん♡遊びに来たよぉ♡」
「ようこそモナ様。お連れの方々は初めてと存じますが」
「はい。リコリスと言います」
「よろしくお願いいたします。当カジノは様々なゲームで楽しんでいただく折、賭け金が必要となります。最低ベットは金貨1枚から、上限は無しとなっておりますので、どうぞご了承くださいませ」
金貨1枚…10万円からって、ここヤバいお店じゃん。
「よろしければゲームのご案内をいたしますが」
「大丈夫大丈夫♡モナが付いてるから♡さ、遊ぼ遊ぼ♡」
ムーフィーさんの説明を振り切って、モナは私と腕を組んで奥へと進んでいく。
「キラキラいっぱい!」
「楽しそうです!」
スロットに類似した魔導具や、カードゲーム、動物レースで遊ぶようなものに、マリアとジャンヌは興味津々の様子だった。
「見てるだけもつまんないか。せっかくだし遊ぼうか」
「わーい!」
「やったー!」
「あんまり調子に乗った使い方しちゃダメだよ」
「うん!行こうジャンヌ!」
「うんっ!」
「姫っ♡あたしにもお小遣いちょーだい♡」
「自分の稼いだ金で遊んでこい」
「ちぇー」
「アタシたちも適当に見て回りましょうか」
「ええ」
「は、はいっ…」
みんなが方方へ散っていく中、私とアルティ、師匠とモナが残った。
アルティは離れるタイミングを失い、師匠はモナのお目付け役に残ったって感じだったけど。
「こっちこっち♡モナのお気に入りはね~これっ♡」
「ルーレット?」
1から36、0、00の数字にベットテーブル。
ディーラーがいない魔導具なことを除けば、他は普通のルーレットと同じみたい。
「リコリスちゃん、モナと勝負しない?♡」
「勝負?」
「お金を多く増やした方が勝ち♡単純でしょ?」
「モナよ、貴様」
「何にも無いよ~♡ただのゲーム♡やる?♡やらない?♡」
べつにやる意味は無い。
でも、腹いせしたい気が無いわけじゃない。
アルティの前で無様晒してられるかと、甘い声の挑発に乗った。
「いいよ。やろっか」
「クスクス♡」
「リコリスよ」
「テルナちゃん勝負に口出しはダメだよ~♡ただのお遊びなんだから♡」
「なにが勝負じゃ。リコリス、乗る必要はない」
「アルティちゃん、モナ頑張るからね~♡」
「あ…」
小さく肩を震わすアルティを背後に、私はモナを見据えたまま言う。
「私だけ見てろ」
「……はいっ」
ただのゲームでも負けてたまるか。
「ルーレットのルールはわかる?♡」
「大丈夫。問題無いよ」
前の世界じゃネトゲでやりまくって所持金カンストさせたからね。
「じゃあ所持金は金貨30枚♡チップが無くなったらその時点で負け♡十回回してゲーム終了時の手持ちで勝負をつけよっか♡」
「いいけど、この台に何か仕掛けをしてあるとか、そんなつまんないことしないよね?」
「大丈夫だよ~♡ね、ムーフィーちゃん♡」
「はい。当店の魔導具は全て我々の制御下にあり、外部から干渉を受ければ即座に守護嬢隊が飛んできます。当店において台に干渉しての不正は一切ありえません。同じく我々ディーラーもまた厳正にして公正。お客様である以上、一方に肩入れすることも無いとご了承ください。たとえそれが魔王であったとしても」
「はーい♡」
師匠を見やる。
一度頷いた。
ディーラーが公平で、第三者による介入も無いならひとまず安心していいかな。
「じゃあ一回戦、始めよっか♡」
「どっちが先に賭ける?」
「最初はモナからでいいよ♡」
ルーレットが回転し玉が射出される。
魔導具とはいっても、全自動なだけで玉が三次元的な動きをしたりとか、ポケットがランダムに変更したりとか、そういうことはしない。
機械的なものと大差無い感じだ。
「赤に金貨10枚♡」
ルーレットは基本的に、客側が負けるように設定されてるゲームだ。
当たりやすくする方法はあっても必勝法は無い。
そのため深く観察する必要がある。
ルーレットの角度。玉のスピード。
一回目はそれらを知るための様子見。
「0.5.7.9.11.17.26.28.30.32に金貨を1枚ずつ」
「リコは何故このようなバラけた賭け方を?」
「ルーレットを四等分した一角に集中させたんじゃろ。明確な思考と論理に基づいた堅実な方法じゃ」
玉がポケットに収まる。
出目は赤の7。
私たちの両方がチップを増やすことに成功した。
ただし色に賭けたモナより、数字で当てた私の方が配当は多い。
この時点でチップは倍近く差がついた。
「やるね~リコリスちゃん♡賭け事も強いんだぁ♡カッコいいねぇ♡」
「次、回すよ」
玉のスピードはさっきと一緒。
これなら【神眼】を持ってる私なら、弾道と速度を計算してもっと数字を近付けられる。
「2.4.14.16.23.35に金貨2枚ずつ」
「黒に金貨20枚♡」
さっきよりベットを増やしてきた。
カランと音を立て、玉は黒の2に。
また私たちのチップが増えた。
その後も回を重ね、私たちは勝ち続けてお互いチップを増やすことに成功した。
私が勝ってるのは間違いないのに、なんだ…?
「♡」
この手のひらの上で遊ばれているみたいな感覚は。
「そろそろいいかなぁ♡」
そう言ったのは八回目。
私が台のクセを完全に把握したときのこと。
「2.14.35に金貨を20枚ずつ」
「35に金貨100枚♡」
「は?!」
これまで赤と黒にしか賭けてこなかったモナが、いきなり数字に?
しかも一点賭け?
なんの冗談かと思ったけど、玉は35のポケットにキレイに転がった。
「なっ?!」
「♡」
私と同じで玉の計算をした?
いや、台なんか見てなかったろ…
「九回目だね♡次は21に金貨3000枚♡」
いや、この軌道なら真逆側に落ちる…
適当?自棄?
ブラフのつもりか?
何考えてんのか全然わからん…
「5.22.34に金貨を500枚」
賭け方も計算も間違ってない。
なのに、玉は私を嘲笑うように21に収まった。
「はぁ?!!ありえないだろ!!なんで?!」
「やーんリコリスちゃん可愛い~♡焦ってるね~♡これでモナの方がチップは多くなっちゃったもんね♡でもまだ最後の一回があるから、勝てるチャンスはあるよ♡」
「……じゃあ回す――――」
「00に全賭け♡」
回す前からベット?
とことんふざけてる…
けど…
「!!」
「♡」
玉は予言のとおり00へ。
モナはさも当然の如く、山のように積まれた金貨を前に勝ち誇った。
「モナの勝ちだね♡」
「リコが負けた…?」
私以上に、アルティは結果が信じられないと声を絞り出した。
悔しくて、そうじゃなければ受け入れ難い事実に、私は歯噛みするしかないっていうのに。
「なんだ、こんなものなんだ♡」
落胆を露わにした言葉に誰よりも反応したのは師匠だった。
師匠は血の短剣を台の上に突き立て、金貨を辺りにばら撒いた。
「いい加減、妾も腹の虫が治まらぬ。貴様はここで死んでおいた方が世界のためにもなろう。たかがイカサマで我が最愛を下し、あまつさえそれを卑下する…それがどれだけ罪深きことか。その身に刻み込んでくれようか」
「イカサマ…?」
「ですが台には…」
「此奴が細工したのはそれではない。言うなればリコリス自身じゃ」
「私?」
けど【状態異常無効】が…ていうかべつに何もされてない、はず…
「此奴は事象を自らが望む結果に確定させることが出来る。【運命操作】…本来無限にある可能性を選択し、自身にとっての最良の未来へと改変させる、此奴を魔王たらしめる力の一つじゃ」
「【運命操作】…」
「チートかよ…」
魔王すげえ。
「エヘヘ~♡ゴメンね♡ちょっとリコリスちゃんをからかいたかっただけなんだぁ♡でも、こんなことも見破れないなんて、ちょっとガッカリだな~♡」
「…どういうこと?」
「リコリスちゃんはね~、ちょっとだけモナに似てるなぁって思ったんだ~♡人の上に立つ器っていうか、人の下に立てない欠陥品っていうか、他とは明らかに存在が違う異端♡他者を求め、他者に求められることを本懐にする♡強いからこそ空っぽで、愛で自分に無いものを埋めようとする……ようは愛にしか生きられない孤独者♡なのにリコリスちゃんは弱すぎる♡それじゃあ、庇護下の子たちが可哀想♡」
「何が言いたいの」
モナは何一つ変わらない甘い笑顔で私に告げた。
「リコリスちゃんも、リコリスちゃんが愛する子たちもみんな、モナのものになっちゃいなよ♡」
みんなまとめて愛してあげるから、と。
何を言っているのかわからなかった。
私が、みんなが、モナのものに?
魔王の庇護下で寵愛を受ける?
ハッハッハ。
「ふざけ――――」
「ふざけたことをぬかさないでください」
私が声を荒げるより早く、アルティが極寒の魔力を纏ってモナを睨んだ。
「黙って聞いていれば…私たちがあなたに?無理です無駄ですありえない。私たちが愛するのはただ一人。リコを於いて他にはありません」
「でも、リコリスちゃんにはその資格が無いよ♡誰かを愛するには強くなきゃ♡身も心も不十分で未成熟♡だからちょっとしたことで簡単に心が揺らいじゃう♡ね、アルティちゃん♡」
「…っ」
「貴様、よもや此奴らで戯れたか」
「だったら、どうする?♡」
師匠が、アルティが魔力で空気を震わせる。
すると、ムーフィーさんが手を叩いてそれを制止した。
「恐れ入ります。テレサクロームにて、目に余る暴力行為、器物の破損は処罰の対象となります。これ以上騒がれるようでしたら守護嬢隊を呼ばねばなりません」
「騒ぎを起こそうとしておるのは此奴じゃろう。諫めるならば相手を違えておる」
「ここに居られるのはお客様であられる前に、テレサクロームの今代の夜会の主。我々の上に立つお方。我々であろうと咎められる立場ではございません」
「夜会の主じゃと?此奴が?」
「夜会の主は、その年の一番の人気者が祀り上げられる地位だもん♡モナがなるのは当然でしょ?♡」
「どうせ他の嬢の客を寝取って得た地位じゃろう。そなたにとっては、この街で自由を得るための道具でしかないのはわかっておる」
「みんなみーんなモナのことを好きになる♡それが運命なんだよ♡幸せでしょ?♡モナのことを愛するだけで、何も考えなくても楽になれるんだから♡」
似てる…か。
たしかにそうかもしれないと、師匠の頬に指を這わせるモナを見て思った。
私とモナは本質が一緒だ。
欲望まみれで利己的で、結局は自分の幸せに繋がることを何よりも優先する。
世界が自分を中心に回っていると疑わない自己中女。
やっとわかった。
この人が苦手な理由が。
アルティを盗られそうになったから。
上からものを言ってくるから。
だけじゃない。
これは同族嫌悪だ。
「モナのものになれば、毎日楽しく――――」
「黙ってろ」
初めてだ。
女の子相手にここまで本気で怒りを抱いたのは。
「お前がどれほどのもんかは知らねえ。私が未熟なのも認めるよ。でも」
ルーレットを回す。
真っ白な玉が縁を勢いよく転がった。
「…0♡」
コールしたのを聞いてから、ルーレット台を踵で蹴り砕く。
玉は転がってモナの足に当たった。
「運命をぶち壊すことくらい私にだって出来るんだよ」
「へぇ…♡」
「私はたしかに未熟で、まだまだ弱くて頼りないけど、みんなを愛するために命賭けてんだよ。半端な覚悟で私の女に手ェ出してんじゃねえ!!」
ルーレットを破壊したことで、ムーフィーさんは守護嬢隊を手配しようとしたけれど、今度はモナが手を挙げて止めた。
「いいねやっぱり…おいしそう♡じゃあもう一回勝負しよっか♡今度は金貨なんて子ども騙しじゃなくて、お互いの大切なものを賭けて♡本気で♡この街を巻き込んで♡夜会の主の権限を以て、今ここに不夜の宴の開催を宣言する♡」
「っ、お待ち下さい。モナ様それは」
モナはムーフィーさんの唇に指を当てた。
「エヘヘ、逃げないよね?♡リコリスちゃん♡」
「当たり前だろ」
何が始まったとしても今度は負けない。
私の女を、こんな奴に渡してたまるか。
「このパンうまいね」
「はい」
「ソーセージ食べる?」
「……コク」
「あーん」
「あー…む。…おいしいです」
謝るタイミングを逃したせいで仲直りしたとは言い難いけど、こんな感じで朝ご飯を一緒にした。
テレサクロームは朝からそこかしこが賑わっていて、私たちを神妙にすることを許さない。
「今日は何しよっか」
「べつに」
「ど、どこか行きたいとことか…」
「特に無いです」
この素っ気無さよ…怒ってはいるんだよなぁ。
目も合わせてくれないし。
けど隣は歩いてくれる…この距離感てなんだ…?
このまま謝らないでうやむやに…いやいやそんなことあっていいわけないだろバカか私は。
時間が解決してくれると甘えでしかないから。
謝る……だけでいいのか?
『そろそろいいんじゃない?次に進んでも』
友だちの先…か。
「チラ…」
「見ないでください」
「しぃましぇん…」
ひぃん冷たすぎて心が折れる…
でも負けん!
アルティのために!見守ってくれているみんなのために!
「アルティ!」
「うるさいです大声で喋らないでください」
「しぃましぇん…」
折れるて…
「で、二人じゃ保たないからアタシたちに合流したと」
「ひっぐ…えっぐ…」
「お姉ちゃん大丈夫ー?」
「泣かない泣かないですよー」
「仲直りも出来んとかメンタル小学生かよ姫」
「返す言葉もごじゃいましぇん…」
だって、だってぇ…
「まあまあ。リコリスさんだって頑張っていますから」
「仲直り、しようとして偉い…ですね」
「アルティよ、リコリスも言い過ぎたと反省しておるのじゃ。今回の件はモナに大部分の非があろう。ここらで赦してやるのはどうじゃ?」
「うええええんママたちぃぃぃ!!」
「これをですか?」
「そなたの思いも否めぬが」
「ま、バカのことは一旦さておき」
バカにバカって言うとバカだけど傷付くんだぞ。
「せっかくだからパーっと遊びましょうよ。そしたらあんたも気分が晴れるでしょ」
「はぁ…遊ぶって、この街での娯楽は…」
「だからこの街らしい娯楽で遊ぼうってのよ。せっかくみんな揃って上層で行動出来るわけだし」
ドロシーは懐から金色のカードを取り出した。
「何それ」
「上層への通行証よ。昨日別れ際、あんたにってヴァネッサがくれたのよ。バタバタしてたからアタシが預かってたの。これがあれば上層の施設はどこでも利用出来るんだって」
「おーマジでかやった。ヴァネッサさんにお礼言いに行かないと」
「その前に遊び行こ。楽しそうなとこばっかだし。どこ行く?」
「そうだなぁ~」
「この通り沿いにある劇場なんてオススメだよ~♡」
またどこから現れたのか、モナは私の両肩に手を置いて悪魔の尻尾を燻らせた。
「今ね~エスメラルダ交響楽団がコンサートしてるんだぁ♡」
みんな警戒してんなぁ。私もだけど。
「そなた…昨日念を押したはずじゃが?妾らに関わるなと」
「うん♡だから昨日は大人しく帰ったでしょ?♡」
「屁理屈を…」
「おはよぉアルティちゃ~ん♡今日も可愛いねぇ♡」
アルティはシャーリーの影に隠れた。
悪魔は外見以上に魂で人を見る。測る。
大賢者クラスの膨大な魔力を有したアルティの魂は、師匠に言わせれば、磨き抜かれたダイヤモンドが空から降り注いでくるかのように神秘的で美しいらしい。
それが偶然モナの美的感覚に刺さったからこそ、昨日のようなことが起こったんだとか。
もう二度と昨日みたいなことにはさせないぞ。
「ダメだよ。私のだから」
「リコ…」
「モナは二人一緒でも大歓迎なんだけどなぁ♡」
一歩も退かねえじゃん無敵かよ。
「これからあたしたち遊び行くんだよね。邪魔するなら帰ってくんない?」
「モナも一緒に遊びたーい♡」
「メンタルいかちぃかよ」
「この先にねー楽しいところあるんだぁ♡みんなで行こう行こう♡ね、リコリスちゃん♡」
「まあ…」
ノリ気じゃないのは間違いなかったけど、断ってもついて来そうだしってことで。
私たちはモナの案内について行くことにした。
「じゃーん♡」
数分かけて到着したのは、上層でもとびきり大きな施設。
「ここはドリームランド♡テレサクローム1のカジノだよ♡」
「カジノか…」
「花婿さん花婿さん、カジノって?」
「賭博場のことだよ。お金をかけていろんなゲームで遊ぶとこ」
けど、なんでまたこんなところに。
有無を言わさず中へと。
赤と金で豪奢に纏められた内装、それに身なりを整えたお姉さんがお出迎えしてくれた。
「いらっしゃいませ。ドリームランド支配人、経理嬢隊隊長、ムーフィー=ゴルドーと申します」
「こんにちは~ムーフィーちゃん♡遊びに来たよぉ♡」
「ようこそモナ様。お連れの方々は初めてと存じますが」
「はい。リコリスと言います」
「よろしくお願いいたします。当カジノは様々なゲームで楽しんでいただく折、賭け金が必要となります。最低ベットは金貨1枚から、上限は無しとなっておりますので、どうぞご了承くださいませ」
金貨1枚…10万円からって、ここヤバいお店じゃん。
「よろしければゲームのご案内をいたしますが」
「大丈夫大丈夫♡モナが付いてるから♡さ、遊ぼ遊ぼ♡」
ムーフィーさんの説明を振り切って、モナは私と腕を組んで奥へと進んでいく。
「キラキラいっぱい!」
「楽しそうです!」
スロットに類似した魔導具や、カードゲーム、動物レースで遊ぶようなものに、マリアとジャンヌは興味津々の様子だった。
「見てるだけもつまんないか。せっかくだし遊ぼうか」
「わーい!」
「やったー!」
「あんまり調子に乗った使い方しちゃダメだよ」
「うん!行こうジャンヌ!」
「うんっ!」
「姫っ♡あたしにもお小遣いちょーだい♡」
「自分の稼いだ金で遊んでこい」
「ちぇー」
「アタシたちも適当に見て回りましょうか」
「ええ」
「は、はいっ…」
みんなが方方へ散っていく中、私とアルティ、師匠とモナが残った。
アルティは離れるタイミングを失い、師匠はモナのお目付け役に残ったって感じだったけど。
「こっちこっち♡モナのお気に入りはね~これっ♡」
「ルーレット?」
1から36、0、00の数字にベットテーブル。
ディーラーがいない魔導具なことを除けば、他は普通のルーレットと同じみたい。
「リコリスちゃん、モナと勝負しない?♡」
「勝負?」
「お金を多く増やした方が勝ち♡単純でしょ?」
「モナよ、貴様」
「何にも無いよ~♡ただのゲーム♡やる?♡やらない?♡」
べつにやる意味は無い。
でも、腹いせしたい気が無いわけじゃない。
アルティの前で無様晒してられるかと、甘い声の挑発に乗った。
「いいよ。やろっか」
「クスクス♡」
「リコリスよ」
「テルナちゃん勝負に口出しはダメだよ~♡ただのお遊びなんだから♡」
「なにが勝負じゃ。リコリス、乗る必要はない」
「アルティちゃん、モナ頑張るからね~♡」
「あ…」
小さく肩を震わすアルティを背後に、私はモナを見据えたまま言う。
「私だけ見てろ」
「……はいっ」
ただのゲームでも負けてたまるか。
「ルーレットのルールはわかる?♡」
「大丈夫。問題無いよ」
前の世界じゃネトゲでやりまくって所持金カンストさせたからね。
「じゃあ所持金は金貨30枚♡チップが無くなったらその時点で負け♡十回回してゲーム終了時の手持ちで勝負をつけよっか♡」
「いいけど、この台に何か仕掛けをしてあるとか、そんなつまんないことしないよね?」
「大丈夫だよ~♡ね、ムーフィーちゃん♡」
「はい。当店の魔導具は全て我々の制御下にあり、外部から干渉を受ければ即座に守護嬢隊が飛んできます。当店において台に干渉しての不正は一切ありえません。同じく我々ディーラーもまた厳正にして公正。お客様である以上、一方に肩入れすることも無いとご了承ください。たとえそれが魔王であったとしても」
「はーい♡」
師匠を見やる。
一度頷いた。
ディーラーが公平で、第三者による介入も無いならひとまず安心していいかな。
「じゃあ一回戦、始めよっか♡」
「どっちが先に賭ける?」
「最初はモナからでいいよ♡」
ルーレットが回転し玉が射出される。
魔導具とはいっても、全自動なだけで玉が三次元的な動きをしたりとか、ポケットがランダムに変更したりとか、そういうことはしない。
機械的なものと大差無い感じだ。
「赤に金貨10枚♡」
ルーレットは基本的に、客側が負けるように設定されてるゲームだ。
当たりやすくする方法はあっても必勝法は無い。
そのため深く観察する必要がある。
ルーレットの角度。玉のスピード。
一回目はそれらを知るための様子見。
「0.5.7.9.11.17.26.28.30.32に金貨を1枚ずつ」
「リコは何故このようなバラけた賭け方を?」
「ルーレットを四等分した一角に集中させたんじゃろ。明確な思考と論理に基づいた堅実な方法じゃ」
玉がポケットに収まる。
出目は赤の7。
私たちの両方がチップを増やすことに成功した。
ただし色に賭けたモナより、数字で当てた私の方が配当は多い。
この時点でチップは倍近く差がついた。
「やるね~リコリスちゃん♡賭け事も強いんだぁ♡カッコいいねぇ♡」
「次、回すよ」
玉のスピードはさっきと一緒。
これなら【神眼】を持ってる私なら、弾道と速度を計算してもっと数字を近付けられる。
「2.4.14.16.23.35に金貨2枚ずつ」
「黒に金貨20枚♡」
さっきよりベットを増やしてきた。
カランと音を立て、玉は黒の2に。
また私たちのチップが増えた。
その後も回を重ね、私たちは勝ち続けてお互いチップを増やすことに成功した。
私が勝ってるのは間違いないのに、なんだ…?
「♡」
この手のひらの上で遊ばれているみたいな感覚は。
「そろそろいいかなぁ♡」
そう言ったのは八回目。
私が台のクセを完全に把握したときのこと。
「2.14.35に金貨を20枚ずつ」
「35に金貨100枚♡」
「は?!」
これまで赤と黒にしか賭けてこなかったモナが、いきなり数字に?
しかも一点賭け?
なんの冗談かと思ったけど、玉は35のポケットにキレイに転がった。
「なっ?!」
「♡」
私と同じで玉の計算をした?
いや、台なんか見てなかったろ…
「九回目だね♡次は21に金貨3000枚♡」
いや、この軌道なら真逆側に落ちる…
適当?自棄?
ブラフのつもりか?
何考えてんのか全然わからん…
「5.22.34に金貨を500枚」
賭け方も計算も間違ってない。
なのに、玉は私を嘲笑うように21に収まった。
「はぁ?!!ありえないだろ!!なんで?!」
「やーんリコリスちゃん可愛い~♡焦ってるね~♡これでモナの方がチップは多くなっちゃったもんね♡でもまだ最後の一回があるから、勝てるチャンスはあるよ♡」
「……じゃあ回す――――」
「00に全賭け♡」
回す前からベット?
とことんふざけてる…
けど…
「!!」
「♡」
玉は予言のとおり00へ。
モナはさも当然の如く、山のように積まれた金貨を前に勝ち誇った。
「モナの勝ちだね♡」
「リコが負けた…?」
私以上に、アルティは結果が信じられないと声を絞り出した。
悔しくて、そうじゃなければ受け入れ難い事実に、私は歯噛みするしかないっていうのに。
「なんだ、こんなものなんだ♡」
落胆を露わにした言葉に誰よりも反応したのは師匠だった。
師匠は血の短剣を台の上に突き立て、金貨を辺りにばら撒いた。
「いい加減、妾も腹の虫が治まらぬ。貴様はここで死んでおいた方が世界のためにもなろう。たかがイカサマで我が最愛を下し、あまつさえそれを卑下する…それがどれだけ罪深きことか。その身に刻み込んでくれようか」
「イカサマ…?」
「ですが台には…」
「此奴が細工したのはそれではない。言うなればリコリス自身じゃ」
「私?」
けど【状態異常無効】が…ていうかべつに何もされてない、はず…
「此奴は事象を自らが望む結果に確定させることが出来る。【運命操作】…本来無限にある可能性を選択し、自身にとっての最良の未来へと改変させる、此奴を魔王たらしめる力の一つじゃ」
「【運命操作】…」
「チートかよ…」
魔王すげえ。
「エヘヘ~♡ゴメンね♡ちょっとリコリスちゃんをからかいたかっただけなんだぁ♡でも、こんなことも見破れないなんて、ちょっとガッカリだな~♡」
「…どういうこと?」
「リコリスちゃんはね~、ちょっとだけモナに似てるなぁって思ったんだ~♡人の上に立つ器っていうか、人の下に立てない欠陥品っていうか、他とは明らかに存在が違う異端♡他者を求め、他者に求められることを本懐にする♡強いからこそ空っぽで、愛で自分に無いものを埋めようとする……ようは愛にしか生きられない孤独者♡なのにリコリスちゃんは弱すぎる♡それじゃあ、庇護下の子たちが可哀想♡」
「何が言いたいの」
モナは何一つ変わらない甘い笑顔で私に告げた。
「リコリスちゃんも、リコリスちゃんが愛する子たちもみんな、モナのものになっちゃいなよ♡」
みんなまとめて愛してあげるから、と。
何を言っているのかわからなかった。
私が、みんなが、モナのものに?
魔王の庇護下で寵愛を受ける?
ハッハッハ。
「ふざけ――――」
「ふざけたことをぬかさないでください」
私が声を荒げるより早く、アルティが極寒の魔力を纏ってモナを睨んだ。
「黙って聞いていれば…私たちがあなたに?無理です無駄ですありえない。私たちが愛するのはただ一人。リコを於いて他にはありません」
「でも、リコリスちゃんにはその資格が無いよ♡誰かを愛するには強くなきゃ♡身も心も不十分で未成熟♡だからちょっとしたことで簡単に心が揺らいじゃう♡ね、アルティちゃん♡」
「…っ」
「貴様、よもや此奴らで戯れたか」
「だったら、どうする?♡」
師匠が、アルティが魔力で空気を震わせる。
すると、ムーフィーさんが手を叩いてそれを制止した。
「恐れ入ります。テレサクロームにて、目に余る暴力行為、器物の破損は処罰の対象となります。これ以上騒がれるようでしたら守護嬢隊を呼ばねばなりません」
「騒ぎを起こそうとしておるのは此奴じゃろう。諫めるならば相手を違えておる」
「ここに居られるのはお客様であられる前に、テレサクロームの今代の夜会の主。我々の上に立つお方。我々であろうと咎められる立場ではございません」
「夜会の主じゃと?此奴が?」
「夜会の主は、その年の一番の人気者が祀り上げられる地位だもん♡モナがなるのは当然でしょ?♡」
「どうせ他の嬢の客を寝取って得た地位じゃろう。そなたにとっては、この街で自由を得るための道具でしかないのはわかっておる」
「みんなみーんなモナのことを好きになる♡それが運命なんだよ♡幸せでしょ?♡モナのことを愛するだけで、何も考えなくても楽になれるんだから♡」
似てる…か。
たしかにそうかもしれないと、師匠の頬に指を這わせるモナを見て思った。
私とモナは本質が一緒だ。
欲望まみれで利己的で、結局は自分の幸せに繋がることを何よりも優先する。
世界が自分を中心に回っていると疑わない自己中女。
やっとわかった。
この人が苦手な理由が。
アルティを盗られそうになったから。
上からものを言ってくるから。
だけじゃない。
これは同族嫌悪だ。
「モナのものになれば、毎日楽しく――――」
「黙ってろ」
初めてだ。
女の子相手にここまで本気で怒りを抱いたのは。
「お前がどれほどのもんかは知らねえ。私が未熟なのも認めるよ。でも」
ルーレットを回す。
真っ白な玉が縁を勢いよく転がった。
「…0♡」
コールしたのを聞いてから、ルーレット台を踵で蹴り砕く。
玉は転がってモナの足に当たった。
「運命をぶち壊すことくらい私にだって出来るんだよ」
「へぇ…♡」
「私はたしかに未熟で、まだまだ弱くて頼りないけど、みんなを愛するために命賭けてんだよ。半端な覚悟で私の女に手ェ出してんじゃねえ!!」
ルーレットを破壊したことで、ムーフィーさんは守護嬢隊を手配しようとしたけれど、今度はモナが手を挙げて止めた。
「いいねやっぱり…おいしそう♡じゃあもう一回勝負しよっか♡今度は金貨なんて子ども騙しじゃなくて、お互いの大切なものを賭けて♡本気で♡この街を巻き込んで♡夜会の主の権限を以て、今ここに不夜の宴の開催を宣言する♡」
「っ、お待ち下さい。モナ様それは」
モナはムーフィーさんの唇に指を当てた。
「エヘヘ、逃げないよね?♡リコリスちゃん♡」
「当たり前だろ」
何が始まったとしても今度は負けない。
私の女を、こんな奴に渡してたまるか。
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