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序章 妖怪に出会いました
そんじゃちょいと行きますか
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「タカヒロ、三番テーブルさん呼んでる」
「え?」
恵理さんに言われ見ると、三番テーブルに座ったカップルが困ったように小さく手をあげていた。慌てて駆け寄り、注文を受ける。
「どうしたのよ? 今日はえらいボーっとしてるじゃない」
オーダーを終えてきた俺に、恵理さんはため息まじりにそう尋ねた。
「すみません……」
「なんか悩み? 試験あるなら言ってよ、シフト調整してあげるから」
恵理さんはドリンクの準備をしながらそう言ってくれる。
「あの……恵理さん。急にお金出してきて、仕事紹介してくる人ってどう思いますか?」
「怪しいね」
「……ですよね……」
俺がそう言うと、恵理さんは心配そうに聞いて来た。
「なに、そんな人に会ったの? あんた鈍いんだから、詐欺には気をつけなね」
「は、はい気をつけます!」
「パスタあがったぞー」
「はい!」
恵理さんの鋭い視線から逃れるように俺はパスタを取りに行く。そうしてお客さんに運びながら、日曜の出来事を思い出す。
「に、似顔絵屋?」
男の言葉に、俺は思わず聞き返した。彼はにっこりと笑う。
「はい。貴方の絵は風景もとてもいいですが、似顔絵もとても素晴らしい。誇張もないが、描いてくれたものは必ず満足する温かみがある」
「いえ、そんな……」
自分はずっと風景が得意だと思っていた。人体の構造はどちらかというと苦手だと感じていたくらいだ。
「世の中すべての人様を満足できるような似顔絵が描けるかは……」
「世の中すべてなど誰でも難しいですよ。それに、私がお願いしたいのは妖怪相手の似顔絵です。人ではないですよ」
「なーるほど。妖怪の……え?」
今、男はなんと言ったか。
頭の中で整理が終わらないうちに、男は次の言葉を発した。
「妖怪の似顔絵を、描いてほしいんです」
……妖怪? 何を言ってるんだろう、この人は。俺は瞬時に感じた。これ以上関わるとダメなやつだと。
「すみません、俺そろそろ帰らないと……」
引き留められたらどうしようかと思ったが、彼は「そうですか」と、あっさり返した。
「で、では……」
荷物を抱え、すごすご去っていく。
「もしご興味あれば、木曜の夜十時に、ここに来て頂けませんか」
「え、あのそれは……」
断ろうと振り返ると、ベンチに男の姿はなくなっていた。
「……やっぱり怪しいよなぁ」
バイトからの帰り道、深くため息をついた。恵理さんに話した部分だけでも怪しいのに、更に妖怪とか出てくる時点でやばい予感しかしない。自分にはオカルトや怪奇への探求心もない。
それなのに何故か、行くか悩んでいる自分がいる。
「……なんで来ちゃったんだろう」
家に帰るはずだったのに、何故か公園に来ている。昼とは違い、どこか不気味な雰囲気が漂っている。
男の姿はない。
ほっとしつつ、どこか残念な気持ちになっていた。その気持ちに疑問を抱きつつ、帰ろうとした時下駄の音が鳴った。
「来てくださいましたね」
見ると、さっきはいなかったはずの男がそこに立っていた。やはりこの前も、彼は公園から出たのではない。消えていたんだ。
「……貴方も、妖怪なんですか」
「ええ、そうです。よくぞお気づきで」
男は楽しそうに笑う。
「貴方は来てくださると思ってましたよ」
その言葉に、俺は何も言い返せない。
「そんじゃちょいと行きますか」
「どこにですか?」
俺はが尋ねると、男は「決まってるでしょう」と言った。
「お客さんのところですよ」
「え?」
恵理さんに言われ見ると、三番テーブルに座ったカップルが困ったように小さく手をあげていた。慌てて駆け寄り、注文を受ける。
「どうしたのよ? 今日はえらいボーっとしてるじゃない」
オーダーを終えてきた俺に、恵理さんはため息まじりにそう尋ねた。
「すみません……」
「なんか悩み? 試験あるなら言ってよ、シフト調整してあげるから」
恵理さんはドリンクの準備をしながらそう言ってくれる。
「あの……恵理さん。急にお金出してきて、仕事紹介してくる人ってどう思いますか?」
「怪しいね」
「……ですよね……」
俺がそう言うと、恵理さんは心配そうに聞いて来た。
「なに、そんな人に会ったの? あんた鈍いんだから、詐欺には気をつけなね」
「は、はい気をつけます!」
「パスタあがったぞー」
「はい!」
恵理さんの鋭い視線から逃れるように俺はパスタを取りに行く。そうしてお客さんに運びながら、日曜の出来事を思い出す。
「に、似顔絵屋?」
男の言葉に、俺は思わず聞き返した。彼はにっこりと笑う。
「はい。貴方の絵は風景もとてもいいですが、似顔絵もとても素晴らしい。誇張もないが、描いてくれたものは必ず満足する温かみがある」
「いえ、そんな……」
自分はずっと風景が得意だと思っていた。人体の構造はどちらかというと苦手だと感じていたくらいだ。
「世の中すべての人様を満足できるような似顔絵が描けるかは……」
「世の中すべてなど誰でも難しいですよ。それに、私がお願いしたいのは妖怪相手の似顔絵です。人ではないですよ」
「なーるほど。妖怪の……え?」
今、男はなんと言ったか。
頭の中で整理が終わらないうちに、男は次の言葉を発した。
「妖怪の似顔絵を、描いてほしいんです」
……妖怪? 何を言ってるんだろう、この人は。俺は瞬時に感じた。これ以上関わるとダメなやつだと。
「すみません、俺そろそろ帰らないと……」
引き留められたらどうしようかと思ったが、彼は「そうですか」と、あっさり返した。
「で、では……」
荷物を抱え、すごすご去っていく。
「もしご興味あれば、木曜の夜十時に、ここに来て頂けませんか」
「え、あのそれは……」
断ろうと振り返ると、ベンチに男の姿はなくなっていた。
「……やっぱり怪しいよなぁ」
バイトからの帰り道、深くため息をついた。恵理さんに話した部分だけでも怪しいのに、更に妖怪とか出てくる時点でやばい予感しかしない。自分にはオカルトや怪奇への探求心もない。
それなのに何故か、行くか悩んでいる自分がいる。
「……なんで来ちゃったんだろう」
家に帰るはずだったのに、何故か公園に来ている。昼とは違い、どこか不気味な雰囲気が漂っている。
男の姿はない。
ほっとしつつ、どこか残念な気持ちになっていた。その気持ちに疑問を抱きつつ、帰ろうとした時下駄の音が鳴った。
「来てくださいましたね」
見ると、さっきはいなかったはずの男がそこに立っていた。やはりこの前も、彼は公園から出たのではない。消えていたんだ。
「……貴方も、妖怪なんですか」
「ええ、そうです。よくぞお気づきで」
男は楽しそうに笑う。
「貴方は来てくださると思ってましたよ」
その言葉に、俺は何も言い返せない。
「そんじゃちょいと行きますか」
「どこにですか?」
俺はが尋ねると、男は「決まってるでしょう」と言った。
「お客さんのところですよ」
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