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序章 妖怪に出会いました
憧れの場所
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「私の祖父は、それは偉大な烏天狗だったんですが」
烏杜さんは思い出を紐解くように、ゆっくりと話し始めた。
「祖父がよく、話をしてくれてたんです。人間界は12月になると、夜の街が明るくなると。そうしてこの駅が、とりわけ綺麗だったと」
そう言って、駅を見回す。駅の中央に飾られた大きなツリーも、電飾によってカラフルに光っている。
「私もいつか、見てみたいと思ってたんです。来てよかった。本当にとても綺麗だ……」
ここより豪華なイルミネーションもあるかもしれない。でも彼は、この景色が見たかったんだろう。
「おじいさんの事、とても好きだったんですね」
ヤイさんの言葉に、烏杜さんは頭をかいた。
「はい、私の憧れです。私もいつか、あんな風な立派な大妖怪になりたいと思っています」
なんか良いなぁと思う。妖怪が人間界を観光すると言うから、もっとおぞましいものを想像していたが。
憧れの人が好きな場所に行く。それはとても、温かなものに思えた。
烏杜さんは駅をとぼとぼ散策していく。それはまるで、道端にいる鳩のようだ。
隣接するデパートは閉まっているが、十時を過ぎた駅はまだ帰宅する人々がたくさん居る。飲みに行った帰りだろう人たちもいた。
烏杜さんはそれを綺麗に避けながら、楽しそうに見つめる。コンビニは空いていたので、中に入る事にした。
初めて見る光景に感激しつつ、店内を回る。やがて、レジ横にある肉まんを凝視し始めた。
「あれは、買う事はできますか?」
「可能ですよ。金額はですね」
ヤイさんが伝えると、烏杜さんは背中に背負った風呂敷をおろし広げる。そこには、金色に光るドングリが入っていた。ヤイさんは何個かそれを受け取る。
あれが妖界のお金なのか。感心していると、ヤイさんから百円玉と十円玉が差し出された。
「タカヒロ。すまないが、これで買ってきてくれないか」
「はっはい!」
俺は受け取ると、レジに並ぶ。注文すると、店員は慣れた手つきで袋に入れていく。烏杜さんはその様子を、背伸びしながら見ている。その目はとてもキラキラしていた。
買った後は、駅の人通りがない物陰で烏杜さんに渡した。彼はとても嬉しそうに肉まんを食べる。
その姿に、子供の頃肉まんを買ってもらった時の喜びを思い出した。明日買おうかな。なんてつい思う。
イルミネーションを一通り見た後、やはり気に入ったのか、烏杜さんはクリスマスツリーの前に戻ってきた。
「ツリーがお気に召しましたか」
「はい。祖父も大きな光る木を見たと言っていました。やはりこれが一番心惹かれます」
「では、こちらを描かせましょうか」
ヤイさんの問いに、俺もハッと思い出す。そうだ、俺は絵師としてここにいるんだった。
烏杜さんはその提案に、おずおずと尋ねた。
「あの……料金はいかほどかかるのでしょうか」
「これは新しく始めたキャンペーンですので、先に頂いたお代のみで大丈夫ですよ」
「そ、そうなんですか……」
ホッとしつつも、頼んでいいか迷ってるようだった。俺は気づけば叫んでいた。
「や、やります! やらせてください!」
俺が持ってきたスケッチブックを取り出そうとすると、ヤイさんから制止の声が入った。
「それは人間界のものだから。妖怪界には持って返れない」
「えっそれじゃどうすれば……」
「八矢」
「へぃっ」
ヤイの声かけに、八矢は赤い紐でとめられた長四角の白い箱を持ってきた。手渡されたので紐解くと、そこにスケッチブックと七色に光る筆が入っていた。
烏杜さんは思い出を紐解くように、ゆっくりと話し始めた。
「祖父がよく、話をしてくれてたんです。人間界は12月になると、夜の街が明るくなると。そうしてこの駅が、とりわけ綺麗だったと」
そう言って、駅を見回す。駅の中央に飾られた大きなツリーも、電飾によってカラフルに光っている。
「私もいつか、見てみたいと思ってたんです。来てよかった。本当にとても綺麗だ……」
ここより豪華なイルミネーションもあるかもしれない。でも彼は、この景色が見たかったんだろう。
「おじいさんの事、とても好きだったんですね」
ヤイさんの言葉に、烏杜さんは頭をかいた。
「はい、私の憧れです。私もいつか、あんな風な立派な大妖怪になりたいと思っています」
なんか良いなぁと思う。妖怪が人間界を観光すると言うから、もっとおぞましいものを想像していたが。
憧れの人が好きな場所に行く。それはとても、温かなものに思えた。
烏杜さんは駅をとぼとぼ散策していく。それはまるで、道端にいる鳩のようだ。
隣接するデパートは閉まっているが、十時を過ぎた駅はまだ帰宅する人々がたくさん居る。飲みに行った帰りだろう人たちもいた。
烏杜さんはそれを綺麗に避けながら、楽しそうに見つめる。コンビニは空いていたので、中に入る事にした。
初めて見る光景に感激しつつ、店内を回る。やがて、レジ横にある肉まんを凝視し始めた。
「あれは、買う事はできますか?」
「可能ですよ。金額はですね」
ヤイさんが伝えると、烏杜さんは背中に背負った風呂敷をおろし広げる。そこには、金色に光るドングリが入っていた。ヤイさんは何個かそれを受け取る。
あれが妖界のお金なのか。感心していると、ヤイさんから百円玉と十円玉が差し出された。
「タカヒロ。すまないが、これで買ってきてくれないか」
「はっはい!」
俺は受け取ると、レジに並ぶ。注文すると、店員は慣れた手つきで袋に入れていく。烏杜さんはその様子を、背伸びしながら見ている。その目はとてもキラキラしていた。
買った後は、駅の人通りがない物陰で烏杜さんに渡した。彼はとても嬉しそうに肉まんを食べる。
その姿に、子供の頃肉まんを買ってもらった時の喜びを思い出した。明日買おうかな。なんてつい思う。
イルミネーションを一通り見た後、やはり気に入ったのか、烏杜さんはクリスマスツリーの前に戻ってきた。
「ツリーがお気に召しましたか」
「はい。祖父も大きな光る木を見たと言っていました。やはりこれが一番心惹かれます」
「では、こちらを描かせましょうか」
ヤイさんの問いに、俺もハッと思い出す。そうだ、俺は絵師としてここにいるんだった。
烏杜さんはその提案に、おずおずと尋ねた。
「あの……料金はいかほどかかるのでしょうか」
「これは新しく始めたキャンペーンですので、先に頂いたお代のみで大丈夫ですよ」
「そ、そうなんですか……」
ホッとしつつも、頼んでいいか迷ってるようだった。俺は気づけば叫んでいた。
「や、やります! やらせてください!」
俺が持ってきたスケッチブックを取り出そうとすると、ヤイさんから制止の声が入った。
「それは人間界のものだから。妖怪界には持って返れない」
「えっそれじゃどうすれば……」
「八矢」
「へぃっ」
ヤイの声かけに、八矢は赤い紐でとめられた長四角の白い箱を持ってきた。手渡されたので紐解くと、そこにスケッチブックと七色に光る筆が入っていた。
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