あやかし観光専属絵師

紺青くじら

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第2章 おばあちゃんと化け猫

作ってもらったんだ

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「やあ」

 家に帰ると、ドアの前にヤイさんが立っていた。今日は妖の姿だ。その人間に似た、けれども神秘的な姿を見て思う。彼は一体なんて名前の妖怪なんだろう。人間に似た妖怪というものをネットで調べてみたが、彼に似た姿は見つけられなかった。そもそも、人間が考えた妖怪の中に答えはないのか。

「驚かないね」
「二回目ですからね」

 これが知らない人間だったら怖いが、知り合いだし、そう驚く事もない。俺はドアを開けながら、「上がってきますか?」と尋ねる。断られるかと思ったが、彼は少し嬉しそうに「いいのかい?」と返してきた。

「散らかってますけど」
「有難う。おじゃまするよ」

 彼は下駄をぬぎ、俺が用意したスリッパを履く。部屋に入ると、感想をわざわざくれた。

「君らしい部屋だね」
「そうですか?」
「散らかってるが、清潔感はある」

 どういう意味だろう。俺はその問いは口にせず、コップを取った時に湧いた疑問を口にする。

「ヤイさん、飲み物とか大丈夫なんですか? この前はコーヒー飲まれてましたかね」
「なんでも大丈夫だよ。お茶でもコーヒーでも」
「じゃあコーヒーにしますね。腹減ってますか? 俺まかない食べたんですけど、あれだったら軽くなんか作りますよ」
「大丈夫だよ、今日は家でオムライスを食べた」

 その答えが意外で、コーヒーの準備をしながら話題を続ける。

「普段も人間と同じものなんですね。ご飯自分で作るんですか?」
「妖怪の嗜好にもよるけどね。俺は元々人間は食べなくて、嗜好も人間と似てるから。今日のオムライスは、作ってもらったんだ」
「え。誰にですか?」

 ヤイさんはその問いに、ニッコリと笑った。彼女かな。田貫さんの話から人間嫌いかと思ってたが、そうでもないのか。それとも、妖怪の彼女だろうか。
 コーヒーを差し出し、斜め向かいに座る。テーブルの向こうには、写っていないテレビがある。

「来週、空いてる日あるかい?」
「来週は……早いのは火曜日ですかね」
「分かった。空けててくれないか? 時間はまた後で伝える」

 あっさりそう言うヤイさんに、こちらが心配になってくる。

「お客さんですか? あの、お客さんの予定を優先して頂いて」
「気にしないでいい。今回は、君の絵ありきの話だ」
「え?」

 俺がピンとこないでいると、ヤイさんはにこりと笑って告げた。

「君に絵を、描いてもらいたい奴がいる」
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