47 / 94
第5章 お猿と行く温泉旅行
もてなす側の朝は早い
しおりを挟む
「おはよう。相変わらず着膨れしてるね」
「……どうも」
俺はダウンを着てもこもこになった風貌でそう答える。今度すごい軽くて薄いという奴を買おうと心に誓う。
ヤイさんは今日も着物だが、いつも着てる白い着物でなく紺色の着物に黒い羽織をまとっている。
「朝早くにすまないね」
時刻はまだ朝の六時。通勤通学で道行く人もいるが、人通りは少ない。
「いえ。大丈夫です。ヤイさん、今日って一日がかりって言われてましたよね?」
「ああ」
「でも考えたら、界渡りは時間制限がありますよね。今日はお昼前に終わるんじゃ?」
その問いに、ヤイさんは「いや、一日だ」と答えた。
「客は、お昼過ぎに来る」
「え?」
「車を呼ぶか」
彼が指を鳴らすと、大きなカエルが乗った空飛ぶ車がやって来た。それはこの間乗った人力車のような姿ではなく、先が尖った車だった。
「お久しぶりです、ヤイ様。タカヒロ様も」
「六矢さんだっけ。乗っけてってくれるんですか?」
「へぃ、どうぞ。ヤイ様、八矢には後で宿にご案内するように言ってます」
「ああ、その時はお迎え頼むよ」
「もちろんです」
そのやり取りに、疑問を抱く。
「依頼主の方と一緒に行かないんですか?」
「ああ。私たちは、もてなす準備をしなければいけない」
珍しい。なんとなく、今日接する妖怪はすごい存在なんだと感じた。
「失礼します」
俺はそう言って車の中に乗り込む。車は先は尖ってるものの、人が座れるスペースは十分にあった。座る部分はフワフワしていて、触ると気持ちいい。
「うわぁ、すごいコレ!」
俺が感動する傍ら、ヤイさんは淡々と告げた。
「じゃあ、出発してくれ」
「はい!」
その返事とほぼ同時に、豪速球で車は飛び立った。座ってはいるものの何も支えをつけてなかった為、盛大に揺らめく。
「ちょ、ちょっと待って……!」
俺の問いに答える事もなく、車は二時間弱飛び続けた。
「着いたよ」
言われ、自分が気を失っていた事を知る。車は止まり、どこかの地面に降り立っていた。
「気分はどうだい?」
「最悪です……」
俺の答えに、ヤイさんは笑った。その笑顔が、どこかツバキさんに似ている。結局彼女に、今日ヤイさんと会う事を伝えられなかった。
「ここは?」
周りを見渡す限り、緑いっぱいの自然溢れるところだ。
「九州のどこかの山だ」
「へー……って、九州!?」
そんな遠くまで行くから、あんな猛スピードだったのか。道理で酔った訳だ。辺りは一面緑で、すごく冷える。
「これは……」
そんな中、目の前にそびえ立つ御殿があった。赤い壁に、黒の屋根をもつその御殿は、横に面積がとても大きい。
「宿だよ」
ヤイさんの言葉に、俺はその表情を見る。彼はどこか、楽しそうに笑った。
「……どうも」
俺はダウンを着てもこもこになった風貌でそう答える。今度すごい軽くて薄いという奴を買おうと心に誓う。
ヤイさんは今日も着物だが、いつも着てる白い着物でなく紺色の着物に黒い羽織をまとっている。
「朝早くにすまないね」
時刻はまだ朝の六時。通勤通学で道行く人もいるが、人通りは少ない。
「いえ。大丈夫です。ヤイさん、今日って一日がかりって言われてましたよね?」
「ああ」
「でも考えたら、界渡りは時間制限がありますよね。今日はお昼前に終わるんじゃ?」
その問いに、ヤイさんは「いや、一日だ」と答えた。
「客は、お昼過ぎに来る」
「え?」
「車を呼ぶか」
彼が指を鳴らすと、大きなカエルが乗った空飛ぶ車がやって来た。それはこの間乗った人力車のような姿ではなく、先が尖った車だった。
「お久しぶりです、ヤイ様。タカヒロ様も」
「六矢さんだっけ。乗っけてってくれるんですか?」
「へぃ、どうぞ。ヤイ様、八矢には後で宿にご案内するように言ってます」
「ああ、その時はお迎え頼むよ」
「もちろんです」
そのやり取りに、疑問を抱く。
「依頼主の方と一緒に行かないんですか?」
「ああ。私たちは、もてなす準備をしなければいけない」
珍しい。なんとなく、今日接する妖怪はすごい存在なんだと感じた。
「失礼します」
俺はそう言って車の中に乗り込む。車は先は尖ってるものの、人が座れるスペースは十分にあった。座る部分はフワフワしていて、触ると気持ちいい。
「うわぁ、すごいコレ!」
俺が感動する傍ら、ヤイさんは淡々と告げた。
「じゃあ、出発してくれ」
「はい!」
その返事とほぼ同時に、豪速球で車は飛び立った。座ってはいるものの何も支えをつけてなかった為、盛大に揺らめく。
「ちょ、ちょっと待って……!」
俺の問いに答える事もなく、車は二時間弱飛び続けた。
「着いたよ」
言われ、自分が気を失っていた事を知る。車は止まり、どこかの地面に降り立っていた。
「気分はどうだい?」
「最悪です……」
俺の答えに、ヤイさんは笑った。その笑顔が、どこかツバキさんに似ている。結局彼女に、今日ヤイさんと会う事を伝えられなかった。
「ここは?」
周りを見渡す限り、緑いっぱいの自然溢れるところだ。
「九州のどこかの山だ」
「へー……って、九州!?」
そんな遠くまで行くから、あんな猛スピードだったのか。道理で酔った訳だ。辺りは一面緑で、すごく冷える。
「これは……」
そんな中、目の前にそびえ立つ御殿があった。赤い壁に、黒の屋根をもつその御殿は、横に面積がとても大きい。
「宿だよ」
ヤイさんの言葉に、俺はその表情を見る。彼はどこか、楽しそうに笑った。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる