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PrimoFiume

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Linda’

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 アレックスは、見覚えのある部屋の中で目を覚ました。
「ここは、……」ベッドから起き上がり、目の前の光景に思わず繋ぐ言葉を見失った。
 見間違うはずなどなかった。そこは、先の大地震で倒壊したはずの建物、リンダのアパートメント、もっと言えばリンダの部屋だ。
 不意に、頭に鈍い痛みを感じたアレックスは、反射的に手を当てるとそこには包帯が巻かれていた。混沌とした頭の中をアレックスは必死に整理して、現状を理解しようと記憶の糸を辿り思考を働かせる。ここにくる前は、ザ・バックスにいた。そこで余震が起きて、地割れに吸い込まれた、そして、……。
 記憶の糸はそこで切れた。アレックスは自分はそこで死んだのかもしれないと思った。だが、すぐに思い直す。幽霊という状態がどんなものかは分からないが、体に変化があるようには思えない。これまでとなんら変わらない。ベッドサイドに置かれたコップを持つことも、それを満たす水を飲むこともできたし、今も感じる痛みは生きている証明と思えた。アレックスは部屋の中を見渡した。見慣れた部屋ではあるが、どこか違和感がある。注意深く見ていると、いくつかの点に気づいた。時計の色が違う、鏡の位置が違う、花瓶の柄が違う。

「ガチャ」ノブが音を立て、玄関のドアが開いた。そして部屋に入ってきたのは、……

「リンダ! そんなまさか! 生きていたのか! 一体これは?」アレックスは驚きのあまり声を上げる。
「どうしたの? 幽霊でも見たような顔して?」そんなアレックスをよそにリンダは微笑みを浮かべながら、買い物袋を胸の前に両手で抱えたままキッチンへと向かう。
「お腹すいてるでしょ? 何か作るわ」
 アレックスには依然目の前の光景に理解が追いつかない。生気に溢れたリンダが目の前にいる、ただ言えることはこれが夢だと言うならこのまま醒めないでほしいということだけだった。
「痛」アレックスのこめかみに再び痛みが走る。
「アレックス、まだ無理しちゃダメよ。横になってて。大丈夫、私はどこにも行かないから」そう言って笑みを見せたリンダは鼻歌交じりに調理にかかる。
 その姿、立ち振る舞いはまさにリンダそのものではある。だとするとあの時の遺体は何だったのだろうとアレックスは考えを巡らすが答えは出ない。
「お待たせ、さぁ食べましょう」リンダがパスタをテーブルに置きアレックスを呼ぶ。
 アレックスは勧められるままに席に着くと、すぐさまリンダに問いかける。
「一体どういうことなんだ、説明してくれリンダ!」
「慌てないで、まずは食べましょ。二人で食事なんて久しぶりじゃない?」リンダはワインのボトルを手に取りグラスに注いだ。
 アレックスは無造作にフォークでトマトソースのかかったパスタを口に運ぶ。それは間違いなくリンダの味だった。
「もういいだろ、リンダ? そろそろ教えてくれ!」
「アレックス、落ち着いて。いいわ、ゆっくり話しましょ。でも、そうねぇどこから話したらいいかしら」そう言ってリンダは傍に置いてあったカバンからタバコの箱を取り出して一本取り出すと口に咥えた。
「タバコ? いつから?」
「あ、ごめんなさい、吸ってなかったかしら? でもこれだけ吸わせて」
 リンダは慣れた手つきでタバコに火をつけると、天井を見上げて煙を吐き出した。
「そうね、まずは、Law of attraction(引き寄せの法則かしら)」
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