家から追い出されました!?

ハル

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番外編

波乱?のクリスマスパーティー

 クリスマスというのは私の認識だとクリスマスプレゼントをもらってケーキを食べるイベントらしい。らしいというのは、生まれてこの方、クリスマスという行事をしたことがないからだった。クリスマスだからといって、父は会社が休みなわけではなく、休日でも両親でデートをしてきた終わっていた。小さい頃から、お留守番がクリスマスでの思い出だった。
 それを話すとジークだけでなく、彼の家族は驚愕していた。そして、なぜか、最高のクリスマスをと急に各々がいそいそとし始めて慌ただしくなった。電話をかけたり相談したり、私には付いていけない事態でぼうっと彼らの様子を眺めていた。

 それを話したというのも、クリスマス1週間前、リビングで彼の家族とお茶をしている時にジークの祖母が思い立ったように私に尋ねてきたのがきっかけだった。

「郁美さん、もうすぐクリスマスだけど、日本ではどんな風に過ごしていたの?イベントまでこちらに合わせることはないと思ってね。今年は郁美さんが過ごしていたクリスマスを再現できたらいいかと思ったの。どうかしら?」

 そんな風に尋ねられたものだから私の方が困惑してしまった。だから、思うがままに話して、

「こちらの仕様でジークさんたちが過ごしているところに便乗させてください。」

 と締めくくったのだ。
 それがいけないことだったのか、唖然とした一同。
 それを不思議に思ってみていると、彼らは冒頭のように慌ただしく何を始めたのだ。ただ、ウォーリーは普段通りに私のところにやって来た。

「郁美お姉さんはクリスマスにケーキを食べなかったの?お料理も?」
「ケーキは食べなかったよ。ケーキは今までで片手で数えるほどしか食べたことがないよ。料理は普通通りで変わらない食事だったよ。」
「そうなんだ。家族では過ごさなかったの?パートナーとか?」
「家族はイベントは全て家にいなかったよ。パートナー、恋人はできたことがないよ。平均的な感じだったからね。働ける年になってからはイベント関係なく仕事をしていたよ。」
「そうなんだ。寂しいね。」
「どうだろう。確かにウォーリー君ぐらいの年の時は、友達から聞くクリスマスの話とかバレンタインのこととか羨ましくて真似をしたこともあったけどね。大きくなってからは居ないのが当たりまえになっていたから、特にそんな感情はなかったよ。」

 すると、手を伸ばしてきたので、ウォーリーを抱っこして向かい合わせに膝に乗せた。そうかと思えば、彼は私の頭を撫でてきた。なんとも紳士的な対応だった。まさに外国人らしいと意識させられ苦笑が漏れた。
 どうも、私はこの小さな天使に心配をかけてしまったらしい。

「大丈夫だよ。私は今、そんな寂しさを埋めるぐらいには充実しているから。居候だけどね。」
「郁美お姉さんは家族だよ。」

 彼の言葉が自分の名前を呼んでくれる声が温かった。

「ストップ!!」

 また抱き合おうとした2人の間に入って来たのは隣に座っていたジークだった。彼はまたムッとした顔でこちらを見ていた。

「郁美が家族なのはウォーリーの言う通りだけど、ウォーリー、お前は郁美が来てから彼女との距離が近すぎると思うな。僕が彼女のパートナーなんだから、彼女との距離はもう少し見直しなさい。」
「パートナーならジークおじさんはもっと郁美お姉さんのことを大切にするべきだと思う。」
「大切にしているだろう・・・・・大切にしているよね?」

 ウォーリーに指摘されて不安になったのか、彼は私に尋ねてきた。その時の顔が捨てられた子犬のようで可愛らしくなり頷いてしまった。実際、彼にはとてもよくしてもらっている。

 それにしても、日本を出る前にジークへの返事で『傍に居る』なんて答えたけれど、あれはパートナーになると同義だったなんて知らなかった。男女の関係はよく分からない。

 とにかく、私が頷いたことで彼は安堵しつつ、自然とウォーリーを私の膝から下ろして自分の膝の上に移動させていた。それに少しだけ不服そうな顔をしたが、ウォーリーは決して嫌がらなかったので、内心は叔父であるジークに構われて嬉しいのだろう。これで彼の寂しさが少しでも緩和されればいいと願った。

 それから、1週間はあっという間に過ぎクリスマスイブになった。今日の夜からパーティーを開いてクリスマスになった時刻、夜の0時、にお互いにそれを祝うんだそうだ。私の知らないことはたくさんある。
 そのパーティーのためにドレスまで用意されてしまっており、それに着替えて街の方に向かった。なんと、家ではなく誰かの招待を受けたからそこにジークの家族は揃って出席というのが彼らの恒例だった。
 そこは大きなお屋敷でパーティー会場となる部屋の入り口に入ると、そのパーティーの主催者とその奥様に出迎えられた。ここはジークの母の実家らしい。
 ここでの会話はフランス語だった。このことを知ってクラウド一家に礼儀とか語学とか色々と教えてもらい、準備はしてきたつもりであり、そのかいあって、入り口で出迎えてくれた彼らの会話も聞き取れたし、礼儀に反して怒らせるようなことはしていないようだった。ただ、彼らは驚いてはいたのだが。
 その理由は分からない。

 出席しているのは顔なじみばかりなのだろう。彼らは各々すでに集まっていたパーティーの客人に話しかけられては談笑をしていた。ジークも話しかけられており、友人らしい人達に私を紹介したりしていた。それを見て彼らは驚いており、その場は引いたようだが、ジークに何か言いたげな顔をした。

「ジークさん、なんで皆私を見て驚いた顔をするのですか?私ってそんなに変な顔ですか?それとも、礼儀とかに問題がありましたか?先ほど紹介してくださった友人の方たちはジークさんの方を見て何か言いたげでしたけど。」

 一気に訊いてしまったせいか、彼は驚いた顔をしたものの苦笑した。
 はぐらかされるかと思ったが、そうでもないようだ。

「ああ、それは、君がとてもきれいだからだよ。それと今日のパーティーには僕の元婚約者候補も来るんだ。彼女は母方の祖母の知り合いの孫だから、このパーティーには家のつながりもあって毎年招待されるんだよ。昔色々あったけど、今はもう他人だけどこういう場では仕方ないよね。彼らはそんな場所に新しいそれも婚約者である君を連れてきたことに驚いているし、少しだけ物申したいだけじゃないのかな?君を危険な目に遭わせる気かと。」
「そうだったんですか。それにしてもジークさんの恋人だった方はやはりそんな方だったんですね。」
「そうだね。親のつながりの紹介となると、そういう人種ばかりだよ。」
「そうなんですね。ところで、私は婚約者だったんですね。」
「え?婚約していなかったの?僕ら。」

 ここでわざとらしく驚いたふりをする彼が憎たらしいのだが、許してしまいそうになるのはなぜだろう。しかし、ここは断固として言っておかなければならない。

「そうですね。あれは元家族から私を守るための言葉のあやだと思っていました。」
「パートナーっていうのは婚約者や妻のことを指すんだよ。だから、君は婚約者・・・・なんなら、帰りに教会に行って式場の相談でもする?」
「いいえ、結構です。」
「僕は今すぐしてもいいけど。僕の家族はみんな君が来てくれるのを待っているからね。」
「あなたのご家族がとても優しい人たちだということはよく分かりました。でも、今のままだと私、寄生虫になりそうで怖いんです。学力もなくお金を稼いでいるわけではなく、あなた方に頼りっぱなしで自分の足が地についていないフラフラとした感覚を時々感じます。」
「そうなんだ。不安だったんだね。でも、将来はゆっくり考えて行けばいいよ。」
「あなたの場合だと、籍だけ入れて一生を使って見つければいいとか言い出しそうですからその提案には賛成できません。だから、私、こちらの学校に通いたいと思います。」

 ずっと考えていた。自分が居候のように思うのはどうしてだろうと。元家族と住んでいた時も居心地の悪さを感じていたが、働いていた時間ができた高校生になってからはそれも無くなっていて、家無しになってからもきちんと自分の足で立っていられた。それなのに、ここに来てから温かいけど流されている感覚があった。

「学校に行って学んでいる時に自分の将来が見えてくることだってあると思うんです。」
「そうだね・・・・その件は後で話そう。例の女性が来た。」

 ジークが急に声を落としたかと思えば、私に囁いてきた。それは彼の元婚約者候補の来訪を知らせていた。ゴングが鳴った気がした。

 いや、別に対決しているわけではないんだけど。

「ジーク、久しぶりね。」

 英語で話しかけていた。ちゃんと英語も一応聞き取れる程度はマスターしていたので会話の聞き役に徹していた。
 そう挨拶をしてきたのは胸の開いたドレスを着た女性だった。気の強そうな、そして、自分が一番だと気が済まない人種のようだった。私が目線を下げなければならないけれど、茶髪に青い目、165センチぐらいの身長にグラマラスな体格で誰もが一度は振り返る美貌であり、最も特出すべきは妖艶な雰囲気だろう。彼女を見て私はジークが心を許した相手に選んだという女性イメージとはかけ離れていたので驚いてしまった。それに彼女の方はジークよりも結構年が上に見えた。30代だろうか。

「ああ、久しぶり。あの一件以来だから5年ぶりかな。ニューヨークの証券会社で働いているって聞いたよ。」
「ええ、そうよ。でも、もう少しで独立するわ。経験も十分積めたしね。」
「そっか。おめでとう。そうそう、僕の婚約者だ。一応紹介しておくよ。」
「初めまして、お会いできて光栄です。ミス。郁美です。」

 英語で自己紹介をして礼儀作法通りのカーテシーをした。
 それを見た瞬間、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「あら、よろしく。アマンダよ。アマンダ・ウィーレット。ジークが迷惑をかけているんじゃない?彼って、結構しつこいし、甘えたがりだから。」
「そういうことはこんな場所でいう物じゃないだろう。」

 周囲に野次馬が集まってきていた。好奇な視線と心配げな視線が入り混じっていた。心配そうに伺っているのはジークの家族と紹介された友人たちだ。

「そうですね。ジークさんは甘えたがりですけど、あなたに迷惑をかけているかを心配されるほどの関係性がないと彼から伺っておりますし、私にももちろんありません。それはもしかして、彼の元婚約者候補だったあなたからのアドバイスですか?それならご参考にさせていただきます。ジークさん、ストーカー行為だけは止めてください。」
「・・・うん、もちろんだよ。そんなことしないよ。」
「それなら安心です。」

 私が彼にアマンダの言葉を受けて注意をすると、彼はなぜか苦笑していた。それに不思議そうに首を傾げると周囲は噴出したり苦笑したりと空気が緩んでいたが、目の前にいる彼女1人が顔を真っ赤にしていた。

「アマンダさん、どうかしましたか?」

 そんな反応をするほどに彼に恥をかかせてしまったのかと心配になったのに、彼女は体を震わせて何も言わず人の中をくぐった。
 その後ろ姿を見送って、どっとその場が大笑いで包まれた。

 何なんだ?一体。私が何かそんなに笑うほどにおかしいことを言ったのかな?
 全く心当たりがなかった。

 その後、当事者の私だけが分からずに周囲から親しまれているのに付いていけないながらも挨拶を交わしつつパーティーは進んでいった。
 結局アマンダはそれから会場には戻らずに帰ってしまったらしい。というのは、後日、ジークから聞いた。
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