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煌の告白
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煌が向かったのは日本にいた時に最後に連れて行かれた洋館で話した一室と配置が同じ部屋だ。そこにあの時と同じように隣あって座るとあの日会ったことがある執事が私たちにお茶のセットを運んで下がる。冷たい飲み物ばかりでお腹が冷えたこともあり、用意された温かいお茶はおいしく感じその味が記憶の中でつながる。
「気に入ってくれてよかった。冷たい飲み物を飲み過ぎてすぐに体調を崩すからこのお茶が良いと思ったんだ。日本にいた時もこのお茶は特に気に入っていたからね。俺もこれが一番好きなんだ。」
「ありがとう。用意してくれて。」
「どういたしまして。」
しばらくは静かにお茶を飲んでいただが、私はもう満足して彼に尋ねる。
「それでジェームズ・ウォルターって誰?煌という名前は嘘なの?」
「違うよ。煌も俺の名前だよ。ジェームズ・煌・ウォルター。俺の母親は日本人だから、母がつけてくれたんだ。元々、父親はいなかったけど、突然現れた父親と名乗る男が俺に与えたのがジェームズ・ウォルターだった。」
「そうなんだ。」
彼が淡々と生い立ちを話すので私は驚くが、今時それほど珍しいことではないのかもしれない。
「じゃあ、煌君で呼んでも問題ないってこと?」
「もちろん。伊月さんにはその名前以外では呼んでほしくないよ。」
「それならいいけど。」
彼の目は真剣そのものであり、私に了承以外は許さない声をしている。
「それで、煌君は私をどうしたいの?」
ここまで来て再会した彼に一番確認したかった。彼が私としているのはおままごとに近いもので、飽きたらきっとこれほどのものを持っている彼は簡単に止めるだろう、日本での声優活動のようにあっさりと。それとは逆に私にはそう簡単ではない。湊君の件がそうであり、時間がかかることはすでに証明済みだ。そのうえ、家族も小さい頃の記憶もほとんどが曖昧な私自身なら余計にそうだろう。不安に駆られそうになり視線を下げた私を煌が優しく抱き寄せる。
「俺は伊月さんと一緒にいたい。終わりのない関係が欲しい。それでは答えにならない?」
「それはどうして?何に拘っているの?私が思い出したのはたったワンシーンだけ。あなたと私が暗い場所から明るい場所に助け出されたところだけよ。その時、何があったのかも、あなたとなぜ一緒にいたのかもわかっていない。」
「そうだね。でも、それは俺が分かっているからいい。」
「その記憶の詳細があなたが私に拘る理由でしょう?あなたは別に私に対して気持ちはない。ただ、過去に執着しているだけ。私はそう感じたから日本で一方的だったけど別れを告げたの。こんな風に会うことさえ望んでいない。」
彼の言い分を遮り私は続ける。彼のペースにならないようにだが、私の見解に彼は口をつぐむ。今までテンポよく話していた彼が初めて止めた瞬間だ。きっと、彼なりに刺さった部分があるのだろう。
私は煌の手を握って言う。
「あなたがどうしてそんな風に執着しているのかはわからないけど、過去は過去であって今を生きる私たちには関係ない。曖昧だらけの私でも生きる上ですでに関係ないことばかりなの。だから、もう過去を気にしないでおこうと思う。あなたもそうした方がいい。」
「嫌だ!」
彼が初めて大声を上げる。
「俺から過去を取ったら何も残らない。こんなものを望んだことはない。こんな醜いものばかりに囲まれることなんて反吐が出る。幼い頃、伊月と過ごしている時だけが俺が俺だった時だった。両親と俺と伊月で過ごした時だけがそうだったんだ。」
「何を言っているの?」
私は彼から出た話に思わず聞いていられなくなる。彼と私が近しい関係だと思っていたが、彼の両親とも私は関係していることに驚く。それに心臓の音がうるさく、私に警告を告げている。
”これ以上は進むな!もうやめろ!引き下がれ!”
そんな風に今までにないほどに強く心臓が言っている。でも、ここで引き下がればきっと私は何も知れないだろう。過去は関係ないなんて言ったが私だって知ってきちんと受け止めたい。”養女”だと知った時のように、きちんと考えて決断を出したい。
「伊月は俺の姉だったんだ。姉と言っても父親になった人の連れ子だから血は全くつながっていない。俺にとっては父はその人だけだし、俺にとって家族と呼べるのは父と母、そして伊月だけだ。」
彼の告白に私は息をのむ。
「血縁関係にないなら、近親相姦にはならないんだ。」
私から最初に出たのはそんな言葉だ。
「気に入ってくれてよかった。冷たい飲み物を飲み過ぎてすぐに体調を崩すからこのお茶が良いと思ったんだ。日本にいた時もこのお茶は特に気に入っていたからね。俺もこれが一番好きなんだ。」
「ありがとう。用意してくれて。」
「どういたしまして。」
しばらくは静かにお茶を飲んでいただが、私はもう満足して彼に尋ねる。
「それでジェームズ・ウォルターって誰?煌という名前は嘘なの?」
「違うよ。煌も俺の名前だよ。ジェームズ・煌・ウォルター。俺の母親は日本人だから、母がつけてくれたんだ。元々、父親はいなかったけど、突然現れた父親と名乗る男が俺に与えたのがジェームズ・ウォルターだった。」
「そうなんだ。」
彼が淡々と生い立ちを話すので私は驚くが、今時それほど珍しいことではないのかもしれない。
「じゃあ、煌君で呼んでも問題ないってこと?」
「もちろん。伊月さんにはその名前以外では呼んでほしくないよ。」
「それならいいけど。」
彼の目は真剣そのものであり、私に了承以外は許さない声をしている。
「それで、煌君は私をどうしたいの?」
ここまで来て再会した彼に一番確認したかった。彼が私としているのはおままごとに近いもので、飽きたらきっとこれほどのものを持っている彼は簡単に止めるだろう、日本での声優活動のようにあっさりと。それとは逆に私にはそう簡単ではない。湊君の件がそうであり、時間がかかることはすでに証明済みだ。そのうえ、家族も小さい頃の記憶もほとんどが曖昧な私自身なら余計にそうだろう。不安に駆られそうになり視線を下げた私を煌が優しく抱き寄せる。
「俺は伊月さんと一緒にいたい。終わりのない関係が欲しい。それでは答えにならない?」
「それはどうして?何に拘っているの?私が思い出したのはたったワンシーンだけ。あなたと私が暗い場所から明るい場所に助け出されたところだけよ。その時、何があったのかも、あなたとなぜ一緒にいたのかもわかっていない。」
「そうだね。でも、それは俺が分かっているからいい。」
「その記憶の詳細があなたが私に拘る理由でしょう?あなたは別に私に対して気持ちはない。ただ、過去に執着しているだけ。私はそう感じたから日本で一方的だったけど別れを告げたの。こんな風に会うことさえ望んでいない。」
彼の言い分を遮り私は続ける。彼のペースにならないようにだが、私の見解に彼は口をつぐむ。今までテンポよく話していた彼が初めて止めた瞬間だ。きっと、彼なりに刺さった部分があるのだろう。
私は煌の手を握って言う。
「あなたがどうしてそんな風に執着しているのかはわからないけど、過去は過去であって今を生きる私たちには関係ない。曖昧だらけの私でも生きる上ですでに関係ないことばかりなの。だから、もう過去を気にしないでおこうと思う。あなたもそうした方がいい。」
「嫌だ!」
彼が初めて大声を上げる。
「俺から過去を取ったら何も残らない。こんなものを望んだことはない。こんな醜いものばかりに囲まれることなんて反吐が出る。幼い頃、伊月と過ごしている時だけが俺が俺だった時だった。両親と俺と伊月で過ごした時だけがそうだったんだ。」
「何を言っているの?」
私は彼から出た話に思わず聞いていられなくなる。彼と私が近しい関係だと思っていたが、彼の両親とも私は関係していることに驚く。それに心臓の音がうるさく、私に警告を告げている。
”これ以上は進むな!もうやめろ!引き下がれ!”
そんな風に今までにないほどに強く心臓が言っている。でも、ここで引き下がればきっと私は何も知れないだろう。過去は関係ないなんて言ったが私だって知ってきちんと受け止めたい。”養女”だと知った時のように、きちんと考えて決断を出したい。
「伊月は俺の姉だったんだ。姉と言っても父親になった人の連れ子だから血は全くつながっていない。俺にとっては父はその人だけだし、俺にとって家族と呼べるのは父と母、そして伊月だけだ。」
彼の告白に私は息をのむ。
「血縁関係にないなら、近親相姦にはならないんだ。」
私から最初に出たのはそんな言葉だ。
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