龍悲

上原武重

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始まり

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 ガヤガヤ。ガラッ。賑やかな教室の扉が開いた。生徒たちは一瞬の視線をその先に向けるが、特に興味はないというふうで視線をそれぞれの目の前の学友へと戻した。さて、今教室に入ってきた生徒だが、身体付きは細く痩せっポチでなで肩。顔も青白く、髪の毛を七三分けにしている。顔立ちは少し女の子っぽく、決して活発な男の子には見えなかった。
 ガヤガヤ。まだ教室は、騒然としている。「武、おはよっ。元気?」アメフトの選手のような、体の大きな生徒が武の両肩をバシバシ叩く。頭は、坊主頭で顔はどちらかというといかつい。見た目で言うなら、だいぶ威圧的だ。
武と呼ばれた生徒「あ、うん…」
少年は武と呼ばれている。正確には千葉 武と言う。この物語の、主人公だ。年は14才、中学2年生。
 再び、ドアが開いてオールバックで眼光の鋭い大人が入ってきた。
「起立、きおつけ、礼」
どうやら、大人は教師らしい。男が入ってきて教壇に立つと、女子の一人が号令をかけた。教師は、左手でメガネをなおす仕草をして教壇に教科書を、叩きつけた。
 そして、授業が始まり、時間は流れて行く。そして、昼食の時間になり…。一人の女子が武の机に両手をつくと、身を乗り出すように話しかけてきた。
女子「武、今日学校が終わってから時間ある」
武「あるけど何?」
 少年はだいぶ無愛想だった。この女子とは幼なじみなのだが、いつも小言を言われるので、少し苦手意識があった。
女子「そんなに、嫌わないでよ~。」
 武は、そのとおりといったような仕草をする。目を閉じたまま、首を2回ばかり立てに振った。
武「だって、お前うるせーんだもん。」
 女子は、浅井 麻美と言う名で、武とは10才の時からずっとクラスメートだった。小学校でも、中1の時もずっと同じクラス。武は心の中でいつも言っていた(ありえねーよな)

 放課後になると、麻美と武は肩を並べ街へと繰り出す。後ろから見ると、麻美のほうが少し背が高く大人に映るのだ。
麻美「ネェ武、4年間一緒だね。武は、私のことどう思ってるか、聞きたいんだけど?」
 武はこういう質問に答えたことがないので、困ってしまい、うつむいた。
 武「わかんねぇよ。」
 会話はそれで終わってしまい、無言のままただ歩く二人。気がつくと空が暗くなっていた。「バイバイ。」麻美は、長い髪を冷たい風になびかせうつむいたまま、街路を先へ行く。その後は振り返らなかったのだった。
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