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3話
奇跡の友 会
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夜が明け始めて、空が白ずんできた頃、武は森の中を歩いていた。いや、さまよっていた。
「まいったな…。」
もはや、右も左も元々歩いていた方向さえわからずにいた。「ガサガサ」木の葉を分け出てくる怪鳥。草の中の何者かの気配。彼は、神経が研ぎ澄まされ、全てに怯えていた。その日は一日中さまよい歩いた。やがて、歩いているうちに森の奥が燃えているのが見える。ただの夕焼けだが、彼の恐怖を煽るには十分なシュチュエーションだった。やがて訪れるであろう闇夜も、森が開けたとして、果たして、そこがどこなのかも、全てを彼には知るすべがない。「何も考えてなかった。準備も足りなかった。」その事に、今になって初めて気付かされるのだった。
そして、いよいよ本当に夜がやってきたのだった。行き交う者すべての生命体の声が武の神経をさかなでる。「まいったな…」
武は夜の暗闇を押しやりながら、西であろうと思った方向にあるき続ける。何も変化は無い森が続く。道に迷っているのかもしれない。しれないが、もともと、宛などないのだ。武に一つわかっているのは、今、方向転換をするのは、もっと、危険だということだけだった。立ち止まると、持ってきたリュックの中から、干し肉を一つ取り出し、口にほうばった。そして、歩を止めて水を一口口にした。しかし、この、干し肉が良くなかったのだが、無論武には知る由もない。「グゥルルルー」何かが、森の中を武に近づいてくる。
たけしの右の腰には、自警団の一人からもらった剣がさしてある。武の右手に、今始めて握られた剣。左手にもナイフが握られて、今、生まれてはじめて武は、臨戦態勢を構えていた。
「グゥルルルー」声が近づいてくる。そして、すぐそばで止まった。しかし、相手の姿を捉えられずに不安だけが駆り立てられる。
ガサガサ…。「上か!」
「ウォーン…」武は、構えたままで5歩ほど、後ろに飛び退いた。現れた…。目の前に現れたのは、真っ白な虎だった。身体からは、銀色の光を放っている。ナイフを投げ捨てて、右手の剣を、両手に握り直した。
「まいったな…。」
もはや、右も左も元々歩いていた方向さえわからずにいた。「ガサガサ」木の葉を分け出てくる怪鳥。草の中の何者かの気配。彼は、神経が研ぎ澄まされ、全てに怯えていた。その日は一日中さまよい歩いた。やがて、歩いているうちに森の奥が燃えているのが見える。ただの夕焼けだが、彼の恐怖を煽るには十分なシュチュエーションだった。やがて訪れるであろう闇夜も、森が開けたとして、果たして、そこがどこなのかも、全てを彼には知るすべがない。「何も考えてなかった。準備も足りなかった。」その事に、今になって初めて気付かされるのだった。
そして、いよいよ本当に夜がやってきたのだった。行き交う者すべての生命体の声が武の神経をさかなでる。「まいったな…」
武は夜の暗闇を押しやりながら、西であろうと思った方向にあるき続ける。何も変化は無い森が続く。道に迷っているのかもしれない。しれないが、もともと、宛などないのだ。武に一つわかっているのは、今、方向転換をするのは、もっと、危険だということだけだった。立ち止まると、持ってきたリュックの中から、干し肉を一つ取り出し、口にほうばった。そして、歩を止めて水を一口口にした。しかし、この、干し肉が良くなかったのだが、無論武には知る由もない。「グゥルルルー」何かが、森の中を武に近づいてくる。
たけしの右の腰には、自警団の一人からもらった剣がさしてある。武の右手に、今始めて握られた剣。左手にもナイフが握られて、今、生まれてはじめて武は、臨戦態勢を構えていた。
「グゥルルルー」声が近づいてくる。そして、すぐそばで止まった。しかし、相手の姿を捉えられずに不安だけが駆り立てられる。
ガサガサ…。「上か!」
「ウォーン…」武は、構えたままで5歩ほど、後ろに飛び退いた。現れた…。目の前に現れたのは、真っ白な虎だった。身体からは、銀色の光を放っている。ナイフを投げ捨てて、右手の剣を、両手に握り直した。
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