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白雪の家族
しおりを挟む白雪が、灯台まで走って来ると、狼退治を済ませた茜、闘夜《とうや》と、再会した。単語
華貴は、先程、眼にした、白雪の力を、言及《げんきゅう》しようとして、止めた。単語
雪人の名前は、禁忌だ。
みだりに口にしてはならないと、火の国で、禁止されている。他の国も含めて。
茜が直ぐに、白雪の異変に気付き、右手の包帯を真剣に見ている。
「……白雪。駄目だと言い聞かせたよね。いくら人助けでも、見過ごせないわ」
包帯を強く掴まれて、茜の怖い顔に、白雪が、狼狽《うろた》えた。単語
「その、少しだけだよ。華貴を守る為だから。使わないと、私達、殺されていたわ」
ピクッと、茜が一瞬、悲しげな表情を浮かべた。
「命には、変えられないか。……ごめんね。私、アナタが大事過ぎて、頭に血がのぼったの。
言い過ぎたわ。そうよね。アナタは、間違って無いわ」
眼をゆるませると、茜が、白雪の頭を、なでなでした。
もう茜の怒りは、消えている。口調も柔らかい。
「茜さんは、過保護だからな。気持ちは分かるよ。けど、完全に、白雪の存在は、外に、漏れて無いから、平気だって。そもそも、白雪の祖先は、悪者では、無いしな」
白雪や茜の人柄を知る、闘夜は、雪人の真実の一端を、知っているかの様な、口振りをした。
茜から、得た情報だ。
「親子揃って、互いに、気を遣い過ぎだよ。本当に、仲良しだよね」
からかう闘夜のおかげで、重苦しい空気が、消え去った。ほんわかしている。
「そんなの、闘夜も、家族だから、大切だよ。茜さん、闘夜、いつもありがとう」
助けられた事に、白雪が、素直に礼を言った。笑みも浮かべている。
「……何だか、疲れが、どっと出た……みたい」
体勢を崩した白雪を、闘夜が、しっかりと支えた。
寝息を立てる白雪に、闘夜は、温かい眼を向けている。
日の出が出る前に、闘夜が白雪を連れて、山に戻った。
茜にうながされて、華貴も、後を追いかけた。
茜は否応無く、茜を、保護した。
それは、苦難の道を、選んだとも、言える。
しかし、白雪が、体を張って、守り通した子だ。
茜に、突き放すのは、無理だった。
「あ、の、ごめんなさい。これから、お世話になります!」
大げさな程に、頭を下げた華貴に、先を歩く茜が、手を差し出した。
「……こちらこそ、宜しくね」
複雑な思いを抱えながらも、大人な茜は、笑みをこぼした。
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