火の国と雪の姫

さくらもっちん

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名前の付けられない感情

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「闘夜は、どんな私でも、気にしないよね。それは、家族だから?」

スイカを切って、しばらくして、白雪のところに来た、闘夜。
考える様に、黙っていたが、口を開いた。

「オレは、白雪の側に居る。それだけだよ。体調を崩した時も、白雪は、付き添いしてくれたよな」

お皿を受け取ると、小さく切られたスイカに、白雪が、爪楊枝を刺した。
寝台の上で、白雪が、スイカの甘みを、堪能した。

「……分かってる。闘夜は、優しいから、私を、見捨てないものね。
茜さんも、同じ。私達は、家族で、同居人。これからも、一緒だよね」

白雪の前。床に座った、闘夜が、強く頷いた。

白雪は、雪人だ。
厄介事を、抱えているが、二人は、気にしない。
ただ守る。
それだけだ。
闘夜も茜も、白雪を、大切に、守っている。時々、過保護過ぎる程に。

闘夜は、白雪の顔を、じっと見た。
照れたり、いじけたり、思い悩んだり。白雪は、百面相したりする。
ごく自然に、振る舞うのは、気を許してる、証だ。

大きく切った、スイカを、食べ尽くすと、闘夜が、白雪のお皿を、回収した。

「オレは、白雪から、離れないよ。側に居る。白雪に寄り添いたいんだ。
……これって、もしかしたら、妹の域を、こえてるかもね。
なんて感情なのか、今はまだ、名前が、付けられないよ。
近い内に、答え合わせを、一緒にしようか?    白雪」

思わせぶりな言い方をすると、闘夜が、白雪から離れた。
閉じた襖。
白雪は、頭の中で、闘夜の台詞を、反芻《はんすう》した。単語ルビ
恋愛と言うものに、白雪は、鈍《にぶ》い。単語ルビ
白雪にとって、闘夜は、まだ、兄の域を、抜けていなかった。

何か、きっかけがあれば、白雪と闘夜の仲は、変化しそうだ。
ただ、進展するまで、まだまだ、時間は、かかりそうである。

不器用な二人だ。

「雪人……か。なんで私は、こんな力を、持ってるんだろう。
私が、面倒くさいから、お母さんは、私を、捨てたんだよね」

自問自答しても、答えは、出そうに無かった。
うだうだするのは、白雪の、悪いところだ。



あんなに、外で、響いていた、鳥や、蝉の声が、止んでいる。

不安に思った、白雪が、闘夜の姿を、探した。

物音が聞こえたのは、台所だ。
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