雪降る夜はあなたに会いたい【本編・番外編完結】

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まだ、仕事中だろうか――。

創介さんが社会人になって、もうすぐで三年。いつも忙しそうで、平日は夜遅くまで、休日だってあまり自由な時間は取れていないようだった。もちろん、私がそのすべてを把握しているわけではない。本音を言えば、そのことに寂しさを感じる。でも、そんなことより創介さんの身体の方が心配になった。

”私も今、雪に気付きました――”

そう返信しようとして指が止まる。まだ、創介さんからのメッセージには続きがあった。

”今、どこにいる? バイトから帰る途中か? 迎えに行くから、少し会えないか”

これから――?

創介さんが社会人になって、こんな風に平日に突然会おうなんて言ってくることはほとんどなかった。

一体、どうしたんだろう――。

嬉しさよりも不安の方が上回る。

 無邪気に会えることを喜べるような関係じゃないことを理解している。こんな関係がずっと続くなんて思っていない。創介さんは、本当なら私なんかとは絶対に関わることのない住む世界の違う人。いつ突然終わるとも分からない、不安定で細い細い繋がりに必死にしがみついて。いつ捨てられるだろうかと不安に思いながら、気付けばもう三年。当初思っていたよりもずっと長い時間、こうしていられている。

”ちょうど、バイト先から最寄り駅に向かっているところです。では、駅で待っています”

文字を打ち終えると、すぐに着信を知らせるようにスマホが振動した。

”今からすぐに行く。着いたら連絡するから、暖かい場所で待っていろ”

それだけのメッセージなのに、何故か泣いてしまいそうになる。

――暖かい場所で待っていろ。

出会った時は、ただ強引で身勝手で最低な人だと思っていたのに。こうして、一緒にいるようになって、創介さんの中にあるいろんな顔を知った。強引なのに、私のことをこうしてちゃんと気遣ってくれる。

”はい、そうします”

恋人――。そう名乗るつもりはない。彼にとって私がなんなのか、そんなことは考えない。

ただ傍にいられるなら、時折、優し気な目を私にむけてくれるなら、私はそれで十分――。

そう自分を戒める。

これ以上何かを求めてしまわないように、創介さんとの未来なんて哀しい夢を見たりしないように――。


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