雪降る夜はあなたに会いたい【本編・番外編完結】

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第二部

あなたのために出来ること 10

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 繋がった場所を曝け出すみたい、片脚を持ち上げられた。顎を掴まれて後ろへとむけられ、音を立てながら舌に絡められる。
 後ろから何度も突きあげられて、二つの乳房がドレス越しに揉みしだかれる。ただでさえ身体全部が性感帯のようになっているのに、同時にそんな風にされたら身体が何度もびくびくと震えてしまう。

「身体が、いやらしく震えてる。そんなに気持ち、いいのか……?」

途絶え途絶えになる創介さんの声に、淫らに口を開く。

「気持ち、いいの……。気持ち、いいっ」

創介さんから贈られたイヤリングが激しく揺れる。

「あぁ……っ」
「はぁ……もう――っ」

もっともっと――。

もうそれしか考えられなくて、欲望のままに身体を振り乱した。そして、二人同時に果て、身体から力が抜ける。ゆるんだ身体に、乱れた呼吸と創介さんの余韻が残って、まだ私を敏感にしたままだ。

「おまえの、感じまくってる顔を見たい」

ドレスのファスナーを下ろされて、身体が露わになっていく。そのままドレスを完全に脱がされた後、バスルームに連れて行かれた。

 繋がったばかりの身体は、まだびくびくとしている。それなのに、引き抜かれた途端に、また欲しいと思っている。

「創介さんに、触れたい。たくさん、さわり、たい」

脱衣所で向き合って立ち、熱のこもった視線で見下ろしている創介さんに感情のままに訴えた。まだ、創介さんは服を着たままで。その肌に触れたくてたまらない。肌と肌を合わせたい。

胸に、触れたい。首筋に、腕に、腰に――。

「じゃあ、おまえが脱がせてくれ」

欲情した男の目。創介さんの挑発的で意地悪な目は、私をただ淫らにさせる誘発剤みたいなものだ。
 創介さんに手を伸ばす。蝶ネクタイをはずし、ぱりっとした白いシャツのボタンを一つ一つ外していくけれど、それが酷くもどかしくてたまらない。その間にも、意地悪するみたいに、囁きながら耳たぶに指を這わせる。

「手が止まってるぞ」
「だ、だって、創介さんが触れるから――」
「イヤリングを外しているだけだ」

少しずつ視界に入って来る、創介さんの厚い胸板。私の大好きな広い胸に、手のひらを入り込ませると、創介さんが小さく呻いた。

「ん……、おまえに触れられるだけで、ゾクゾクする」

創介さんの感じている顔を、もっと見たい――。

ジャケットから腕を引き抜き、白いシャツのボタンを全部外した後、創介さんの首筋に顔を寄せた。

「おまえに脱がされてるのを見ているだけで、また――」

創介さんの私に向けられる熱く滾った視線と乱れた呼吸を間近で感じるから、私の感情も昂ぶって行く。引き締まった胸板が露わになって、白いシャツが中途半端に着乱れた姿がたまらなく色っぽい。無心に胸の突起を激しく舌で舐める。

「あぁ……はっ、ゆき――っ」

何かにしがみつくかのように、大きな手のひらが私の髪に差し入れられる。

「ゆき、のっ……」

無意識なのか私の名前を呼び続けて、その身体が苦しげに揺れている。

 切羽詰まったようにシャツを脱ぎ去ると、私たちはバスルームへと入った。

 シャワーのしぶきの中で、創介さんの鎖骨に当てた唇をゆっくりと這わせ、下へ下へと身体を移動させた。

「創介さん、どうして、ほしいです、か……?」

舌を滑らせながら、囁く。

「仕返し、のつもり、か……?」
「ん……。ご褒美、です」

舌を下へ下へと滑らせていく。その度に創介さんが呻くように息を漏らした。私の頭に触れる手のひらに力を入れているくせに、創介さんは答えない。

「言って……?」
「ぁっ。やめろ……」

自分がどんどん自分じゃなくなって行く。創介さんの下半身へと顔を近付けて行く。

「どうしたら、気持ちよく、なる……?」
「雪野……っ」

創介さんは、これまで、一度も自らそれを私に求めたことはない。私が勝手にしていたこと。

でも今日は、言わせたい――。

私をもっと、求めて。
私に溺れて――。

「言って、ください――」
「俺の、口で、してくれ……」
「ん――」

それでもまだ躊躇いがちに吐かれた言葉。私はすぐに、既に張り詰めていたそれを口に含んだ。

「あぁ……っ、雪野、っ」

熱くて硬いものが口いっぱいに広がる。
舌を這わせて、喉の奥まで咥えて口を目一杯動かした。

「お、い、そんなに、激しくするな」
「ひも、ち、いい……?」
「あっ、イク――っ」

創介さんの表情を確かめたくて、口を動かしながら見上げる。

 濡れた髪に、眉をしかめて、その恍惚の表情が色っぽい。もう、そんな創介さんを見ているだけで、疼いて疼いてたまらない。その分だけ舌の動きを激しくする。

「ダメだ、イキそうだ。口を、離せ――っ」
「そ、創介さん――?」

突然創介さんが勢いよく私を抱きかかえ、壁を背に立たせた。

「雪野の顔を見ながら、おまえの中でイキたい」
「……ぁっ!」

もう既に濡れてとろとろになっていた私の秘部に創介さんの先端が当たる。

「俺のを咥えながら、こんなに濡らしてたのか? いやらしいな」
「やっ、あ……」
「これだけ溢れさせてたら、いいな。そのまま入れるぞ」

たまには私が創介さんを気持ちよくさせたいと思ったのに、あっという間にまた主導権を握られてしまう。
 悔しいと思うのに、もう私だって限界で。

「創介さんっ」
「雪野……っ」

創介さんの首に腕を回してしがみつき、私の中へと飲み込んでいく。
 さきほどとはまた違う角度のせいで、新たな快感が身体を貫いて行った。

「あぁ……っ、深いです、奥まで、届くーーっ」
「肌が濡れて、赤く染まってる……たまらなく、可愛いな」

見つめ合いながら繋がっていると、物理的な刺激だけじゃない感情までもが快感を増幅させる。

「やっぱり、こうして顔を見ながらするが、いいな。感じてるその顔、全部、俺のものだ」
「やぁ……あんっ」

そう囁いたかと思ったら、私の胸の先を唇に含んで、舌でもてあそぶ。繋がったところと、胸と、両方同時に与えられる刺激に、身体を振り乱した。

「そ、創介さんっ」
「ん……?」

私のなかを熱くて硬いものが絶え間なく律動する。

「キス、したい。キスし……て――んっ」

唇を激しく重ね合わせる。自らも腰を激しく振り創介さんの動きに呼応するように、快感を貪って。唇を重ねただけでは足りなくて、舌だけを絡み合わせる官能的なキスをする。身体も心も、嫌と言うほどに溶かされて。

「す、き……っ。創介さん、好きっ――ん」

唇が離れたすきに思わず感情が零れても、創介さんの熱い唇がまた私を溶かしていく。

「一緒に――」
「創介さんっ!」

加速度的に激しくなる腰の動きに、身体が跳ねる。

「あぁぁっ」
「雪野っ」

激しい快感が身体の真ん中を突き抜けて、目の前が真っ白になる。身体がふわっと浮いたような感覚に、思わず膝から崩れ落ちてしまいそうになった。でも、がっしりとした腕が私を受け留めてきつく抱きしめてくれる。



「――おはよう、ございます」

隣に眠る創介さんが、ゆっくりと瞼を開ける。

「ああ、おはよう」

まどろんだ瞳のまま、創介さんが私を抱き寄せた。

「身体、大丈夫か?」
「……はい」

バスローブ合わせ目から見える胸に頬を寄せると、ほのかに香るボディソープの匂いに包まれる。

「昨日の雪野は、最高にエロかったな」

創介さんの指が私の髪を梳きながら、囁いた。
 そんな言葉に返事なんて出来るわけない。私は黙ったままでいた。

「――なのに、朝になると、魔法が解けたみたいに、恥ずかしがり屋の雪野に戻る。二人の雪野と過ごしているみたいだな」

そう言って、創介さんが笑った。

「ご、めんなさい……」

本当にその通りだ。どうしてあんな風に全く別の人格が出て来るのだろうと、冷静に考えると自分でだって理解できない。

「謝ることなんてない。俺にとっては、嬉しいことだ」

寝起きの創介さんの、前髪がおろされたラフな姿。私だけが見ることのできるその姿に、いつも懲りずにドキドキとする。

「雪野が二人なんて、最高じゃないか。俺は、どちらの雪野も可愛くてたまらない」

甘い声と甘い甘い瞳が、私に注がれる。

「おまえは、どれだけ俺を狂わせれば気が済むんだ?」
「狂わせているつもりなんて、ありませんっ」

朝の明るい光が部屋いっぱいに広がる。
大好きな人とまどろむ朝は、最高に幸せな時間だ。

「それは、嘘だ。昨日のおまえは、明らかに――」
「もう、昨日の話はやめてください!」

甘えるように創介さんの胸を叩く。この人の胸の中にいると、包み込まれている安心感と愛しさについつい甘えてしまいたくなるのだ。

「分かった、分かった。俺の中でだけ、思い出すことにしよう」
「思い出すのも、ダメ」
「それは、無理だ」

目と目を合わせて、笑い合って。幸せ過ぎて、怖いくらい。人は幸せ過ぎると怖くなると言うけれど、本当のことだ。
 幸せの向こうにあるものをつい想像してしまうからだろうか。
 それでも、このひと時は、嘘でも夢でもない。私の目の前には、愛しい創介さんがいる。

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