179 / 196
《番外編 新しい常務がやって来た!!》
2.広報室広報係 三井えみりの場合 ②
しおりを挟む「そんな風に偉そうに答えられても。相手は、丸菱の御曹司で既婚者。そんな人に熱をあげるっていうのは、あまりオススメしないけど?」
倉っちが、B定食の茄子とトマトのスパゲッティーをフォークに絡ませていた。
「ばかっ! 榊常務をそんな目で見ているわけがないでしょうが! 尊敬する人であり憧れる人。たとえれば、テレビの中の好きな俳優さん、みたいなものだよ。現実で自分と結び付けたりするわけないじゃん。あ、でも、理想のタイプにはなったな。間違いなく」
うんうん。と腕を組んで一人納得する。
「それもそれで、相当に危険な思想だよ? あんな人、世の中にごろごろ転がってたら、適齢期の女子は誰も苦労しないのよ。金持ってて? 男らしくて? 仕事できて? 将来約束されていて? おまけに妻を溺愛? そんな人に出会って、それも自分を選んでくれるなんて、宝くじにあたるより難しいわ」
倉っちが鼻で笑う。
「もー。倉っちはいつも夢がないんだから。そんな現実的なことばかり言ってたら、人生楽しくないよ」
「あんたみたいに、夢みたいなことばかり考えている方が、あとで取り返しのつかないことになると思うけど? 現に――」
ちらりと横目で私を見た。
「あんたはフリーで、私は彼氏持ち。これが何よりの証拠よ!」
「むかーっ。それは言いっこなしだよ。私だって、私だって、榊常務の奥様みたいに、誰かに溺愛される予定なんだから――」
「それにしても、あのインタビューは女子社員全員の心を奪ったよね。それだけは認める。私だって、あの広報誌を読んだ後、3日くらい自分の彼が霞んで見えたもん」
「んー」
二人して、同時に溜息を吐く。
どうして、身近にはいないのに、確実に存在はするのだ?
とにかく。
私は、大学四年生の時目にした『週刊経済』に出ていた榊常務の姿を見た時から、密かに憧れていたのだ。
丸菱テクノロジーに就職することが決まっていた大学4年の12月。
同じ系列の丸菱グループの人が掲載されているとあって、興味本位で見てみたのがきっかけで。
それで目にした榊常務の写真と、インタビュー記事に、心奪われたのだ。
それから時が経ち、まさか私の勤めている会社にやって来るなんて。
心の中が狂喜乱舞だったのは、おわかりでしょう?
「榊常務、『liberty』っていうファッション誌に掲載されるかもしれないから。今、私、頑張ってるとこ! 広報マンとして、これは絶対イケるという確信があるんだもん。楽しみにしていて」
「本当に? あんたも頑張るねー。確かに、あの醸し出す雰囲気は圧倒的だし、かなりのイメージアップになるかも。頑張れー!」
「うん!」
今現在、室長はかなり乗り気だ。
それで今、秘書の神原さんにそのボールを投げている途中。
絶対いい返事をもらうべく、猛プッシュしているところだ
そして、もう一つ――。
私が精力的に動いている一件。
題して、
『榊常務と奥様を囲んで』
裏題、
”常務と奥様を呼んで飲み会しちゃおうぜ presented by 三井”
である。
先月、常務と海外出張に行っていた営業二課の人を引き込んで鋭意計画中である。
今日も、この後、密に連絡を取る予定だ。
そうそう、広岡君のことを忘れていた。彼も、最近仲間に引き入れた。
いつも覇気がない彼が、無表情な顔をしながら心の奥底で榊常務の奥様に会いたいなんてことを思っているということは、気付いている。
そこを、上手く利用させていただいた。
だって、『打ち上げ』なんて、本来なら私が音頭を取る立場にないのだから。
私はただの手伝いで潜り込んだだけだ。
あくまで、広報誌の作成は広報誌係のもの。
だから、広岡君は絶対に必要な人材だったのだ。
私、こう見えて策士でもある。
0
あなたにおすすめの小説
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
Emerald
藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。
叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。
自分にとっては完全に新しい場所。
しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。
仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。
〜main cast〜
結城美咲(Yuki Misaki)
黒瀬 悠(Kurose Haruka)
※作中の地名、団体名は架空のものです。
※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。
ポリン先生の作品はこちら↓
https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911
https://www.comico.jp/challenge/comic/33031
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
永久就職しませんか?
氷室龍
恋愛
出会いは五年前。
オープンキャンパスに参加していた女子高生に心奪われた伊達輝臣。
二度と会う事はないだろうと思っていたその少女と半年後に偶然の再会を果たす。
更に二か月後、三度目の再会を果たし、その少女に運命を感じてしまった。
伊達は身近な存在となったその少女・結城薫に手を出すこともできず、悶々とする日々を過ごす。
月日は流れ、四年生となった彼女は就職が決まらず焦っていた。
伊達はその焦りに漬け込み提案した。
「俺のところに永久就職しないか?」
伊達のその言葉に薫の心は揺れ動く。
何故なら、薫も初めて会った時から伊達に好意を寄せていたから…。
二人の思い辿り着く先にあるのは永遠の楽園か?
それとも煉獄の炎か?
一回りも年下の教え子に心奪われた准教授とその彼に心も体も奪われ快楽を植え付けられていく女子大生のお話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる