ほしいものになってみたキツネ

早乙女純章

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後半

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 彼はよろこびましたが、つりざおを持ったクマが、その魚を持って森へと走っていってしまいます。

「あー、待って! せっかく手に入れたぼくのしあわせなのに!」

 彼は追いかけようとしましたが、クマは森の中に入って、見失ってしまいました。

「あの森の高い木みたいになれたら、クマがどこにいたってわかるのにな」

 そこで、彼は木に変身へんしんしてみることにしました。


 ポンッ!


 けれど、変身できたのは、切りかぶでした。

「でも、なんかちょっとなりたいものに近づいた」

 切り株でも、自分がそれになっていると、森の一部になっている気がしました。自分が森なら、魚を持って逃げていったクマもさがしだせる気がしました。

 うれしい気持ちでたされると、シカの子供がやってきて、切り株をテーブルに、ごはんを食べ始めました。

 別の動物たちも集まってきて、切り株をかこむようにみんなでごはんを食べました。

 すると、雨がふってきて、みんな、雨宿やどりしにどこかへ行ってしまいました。

 雨にぬれた彼は元の姿に戻りました。彼は長く変身し続けていることはできないのです。



 けれど、動物たちが持ってきた食べ物が、まだ山のようにありました。彼の大好きなものばかりです。

「やった、ぼくはとてもしあわせものだ!」

 彼はよろこびましたが、おなかをすかせた人間の家族が、その食べ物を持って町へいってしまいます。

「あー、待って! せっかく手に入れたぼくの幸せなのに!」

 彼は追いかけようとしましたが、人間の町へいくにはちょっと勇気がいります。

「あー、ぼくも人間になれたらなぁ。もっとおいしいたべものもたくさんたべられるだろうに」

 そこで、彼は人間に変身してみようと思いました。

 ところが、彼は人間に変身するのが苦手です。

 おとうさんやおかあさんは、人間に変身するのも得意とくいです。家に戻って二人に相談そうだんしてみようかなと思いましたが、

「でも、ひとりでがんばってやってみよう」

 彼は人間に変身してみました。


 ポンッ!


 姿すがたは人間の子供っぽくなれましたが、耳やしっぽはついたままです。

「でも、なんかちょっとなりたいものに近づいた」

 彼はその姿で、人間の町へいってみることにしました。

 町について、道をあるいていても、人間から変な目でみられません。

 どうやらまちでは大きなお祭りがもよおされているらしく、みんな変なかっこうをしています。

 耳やしっぽがはえたままの彼よりも、もっと変なかっこうです。おばけのかっこうをしていたり、モンスターのかっこうをしていたり。

 お祭りを楽しみながら歩いていると、たくさんの人間からおかしをいっぱいもらいました。

「やった、ぼくはとてもしあわせものだ!」

 すると、町を出る前に、彼は元の姿に戻りました。彼は長く変身し続けていることはできないのです。

 彼はだれにも気づかれないように、にげようとしましたが、二人の人間につかまってしまいました。

「うわ、どうしよう! せっかく手に入れたぼくの幸せなのに!」

「こんなところで、なにをしているの」

 彼をつかまえた人間は、きつねのすがたになりました。

「おとうさんとおかあさんだ!」

「うまくけていましたね」

 おとうさんとおかあさんはほめてくれました。


 人間のお祭りを楽しんだ三匹は、たべものをいっぱいもってなかよく家に帰りました。

 彼はおとうさんとおかあさんにほめられて、とてもしあわせでした。

 それに、家には桜の花も、鳥も、魚もありましたし、立派な木々にも囲まれていました。彼のほしいものは全部そこにあったのです。



おわり
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