あんなに堅物だった俺を、解してくれたお前の腕が

いちごみるく

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前向きに、それぞれに5

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「………まあ、せっかくみんな自分の希望した道に進めるんだからさ!バラバラになるのはそりゃもちろん寂しいけど、嬉しいことでもあるって思おうよ。それに会えない時間が長ければ、次会えたときにすごい嬉しくなるし。会えない間はそれぞれ全力でやりたいことをやってればさ、寂しいのも忘れられるし次会ったときに胸張って皆に会えるじゃん!」



隼が明るい声でそう言って、俺達の微妙な沈黙を破った。

隼は寂しいのを隠すようにいつもの暖かい笑顔を湛え、柔らかな口調で俺らを励ます。


「………そうだな!合格してバラバラになるんだ。別に悪いことじゃねーもんな!」

「うむ。確かに寂しさに落ち込んでばかりで何も成せなければ、お前らに合わせる顔が無い。」

隼の言葉に、瑠千亜と五郎が同意する。


隼は、やはり総勢100人超えの大きな部活のキャプテンを務めていただけある。

一番繊細そうだが、実は一番前向きで切り替えが早いのかもしれない。

部活全体の空気が悪くなったときなどは、こいつのこんな所には何度も助けられてきた。


「ま!じゃあ次会うのは夏休みってことか!それまで俺も男を磨いておこうかな~」

「是非彼女ができたという報告を聞かせてくれ」

「勿論だ!お前らもいい人見つけろよ~…あ、隼と五郎はもういるか。優、俺らは頑張ろうぜ」

「俺は別に恋愛に精を出すつもりはない。勉学とテニスに励むのみだ」

「うわっつまんねー!!」


俺の言葉に呆れたように笑う瑠千亜を横目に、俺は少し考えていた。


進学した後、俺と隼の関係は変わるのだろうか。

俺は進学しようが、きっと隼以外を好きになることはない。

瑠千亜の言うように、大学で「いい人」が見つかればどんなに幸せだろうとも思う。


しかし俺は、小2の頃から隼に恋している。

いつの間にかそれを失うことを……

隼に恋する自分を失うことを、恐れていた。


隼へ想いを寄せていることこそが、俺のアイデンティティなのかもしれない。

隼ありきの俺の自我。

もし隼への気持ちが無くなってしまったら、俺は自分をどう保てば良いのだろう……



進学前最後の集まり。
俺以外の3人は寂しいながらも前向きに未来へ進もうとしていた。

しかし俺は、隼と関係が持てなくなる日を…

隼への気持ちが無くなる日を…

自分が自分で無くなる日を、心のどこかで恐れていた。
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