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「よーし!じゃあ今日の活動はここで終わり!」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


夕方。

何だかんだでカレーづくりは上手く行き、1日の行事が終わった。

僕たちはボランティアの団員と別れる時に、それぞれグループに付いてくれた人にお礼を言っていた。

「5人とも、カレー上手にできて良かったね!」

「うん。ほぼ俺のおかげだけどな。」

「はぁ?ちげーし!俺のおかげだし!」

「みんなのおかげだよ!…でも、強いて言うなら今日のMVPは隼くんかな?テキパキ片付けまでしてくれてたし。お米も野菜も上手にやってくれたしね。」

「そんな……僕なんて……」

「そーだよ!こいつ、普段役に立ってないんだからこういう時だけ張り切ってるんだよ。」

「今日いつもより調子乗ってるし。最悪!」

「乗ってないよ……」

「……だけど私は、隼くんみたいに文句も言わずに作業できる子がやっぱり立派だと思うなー。みんなが野菜を切るのをサボってるとき、隼くんは嘘ついてまでみんなを庇おうとしてたんだよ?」

「うそ?」

「そう。……まあ、詳しくは隼くんから聞きな!みんなは仲良くしなさいね!それじゃ、お疲れ様!」


ボランティアの女性は、そう言い残して他のボランティアの人たちと一緒にバスに乗って去っていった。

残された僕たちは微妙に気まずい雰囲気を感じていた。


「隼。お前まじで調子乗んなよ!」

「お前のことよく知らない人からはいっつも褒められてるだろうけどさ。お前の本性バレたらみんなお前なんか嫌いになるからな。」

「昭恵ちゃんの事件もそうだけど、本当は女に対して酷いことする奴って知ったらあのボランティアのお姉さんもお前のこと褒めなくなるんだからな!」

「あームカつく。なんでいっつもこいつばっか褒められるんだよ。」

「とっとと消えろよカス。目障りなんだよ。早く帰れ!」


みんなの一斉攻撃により、僕は何も言えずに追われるようにして帰った。

現地解散だったのが唯一の救いだ。

結局僕はみんなに反論することもなく、言われるがままに逃げることしかできない……。


そんな自分を情けなく思いながらも、今日これから会う約束をしている菜摘さんのことを思うと、少し心が晴れていくような気がしていた。
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