青春日記～禁断の恋だとしても、忘れられない日常を綴ります～

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「菜摘さん！雪が降ってきたよ！」


今日は12月25日。

菜摘さんと過ごす、初めてのクリスマス。


「今年の初雪かな？ツリーに降り積もる感じが、とても綺麗ね」


僕と菜摘さんの白い息が重なる。

外気の寒さ所以のそれは、まるで僕らの口から出る全ての言葉が温かいカイロのようなぬくもりを持っていることを示すよう。


「てっぺんのスターの部分に雪がかかると、余計に輝いて見えるんだね……」

「すごいね隼くん。よくそんなところに気づいたね」

「うん！」

「隼くんは、家族以外とクリスマスを過ごすのは初めて？」

「初めてだよ！いつもは家にいて、家族みんなでケーキとチキンを食べて、プレゼントを交換するんだ」

「そっか……じゃあ、今日は家族から隼くんを奪っちゃったね」

「うん！でも…みんな僕がデートするって言ったら喜んでくれたよ」

「それはよかったわ。」


菜摘さんの優しい笑顔が僕に降り注ぐ。

健気に積もってゆく雪の気高い冷たさは、僕と菜摘さんの全てを包み込むかのように甘く淡い色を持つ。



「それでね……」


ツリーの周りにはカップルたちが沢山いる。

そんな男女の中の1組となっていた僕たちは、向き合って立っていた。

震える手を自分のコートのポケットに入れ、中で必死に温める。

しばらくそうして手先も気持ちも温まり震えが止まったところで、意を決して僕は言った。


「これ……菜摘さんに、クリスマスプレゼント…」

僕の手には、小さな赤い箱が乗っている。

月光に照らされたワインのような真紅の入れ物は、菜摘さんの驚いた顔を染める頬と似たような熱情がこもる。

白い華奢なリボンが、この夜に降る雪のように辛うじて僕らに冷静な理性を留めさせる。


「ありがとう…！」

菜摘さんは僕の手のひらから、そっと箱を受け取った。


「何がいいか、すごい迷って……その、初めてのプレゼントだから……だけど、菜摘さんに似合うだろうなって思ったから……」

菜摘さんの反応が気になりすぎて、ついつい焦ったような早口な説明をしてしまう。

女の人にプレゼントを送ることなんて、これまで経験したことがなかった。

だからどんなものをあげたら喜ぶのか、必死にインターネットを使ってリサーチした。

相手の女性が好きなものが一番良いという至極真っ当な答えを得たので、僕は1ヶ月ほど前から特に注意して菜摘さんの身につけているものを観察していた。


「可愛い！！ありがとう隼くん！」


嬉しそうに言い、早速ネックレスを付けてくれる菜摘さんを見て、僕は少し安心した。


銀色のネックレスが、菜摘さんの艷やかな首筋の上で上品に光っている。

まるで街を彩るイルミネーションのように、降り注ぐ純白の細雪のように、そしてツリーの頂上に輝く星がこぼれたかのように、強力な彩度と鮮度を持って菜摘さんにフィットしている…。

「隼くん、センス抜群だね！私がシルバーや白が好きなこととか、こういうワンポイントのネックレスが好きなこと…分かっててくれてたの？」

「……前に誕生日にくれた時計が白だったし…菜摘さんがよくつけてるピアスもブレスレットもダイヤのものが多かったから…何となく好きなのかなって思ったんだ」


僕のこの数カ月における計画や調査の手の内を晒しているかのようで少し恥ずかしかったが、一方で本当に喜んでくれている様子なのが嬉しくて、僕はいつもより饒舌に菜摘さんの問に答えていた。