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「柔らかくて気持ちいいでしょ?ほら、こんなふうにして揉んで……」


ぼーっとしている僕の手の上に、菜摘さんは自分の手を重た。

そして優しくまるでマッサージをするかのように、自分の胸を揉んでいた。


「……っはぁ……気持ちいいよ隼くんっ…」

目を瞑りながら少し顔をしかめている菜摘さんが、突然聞いたこともないような甘い声を出した。

「……菜摘さん……」


僕はその声にビックリしたのと同時に、菜摘さんの胸に手を置かれたままどうしてていいか分からずにいた…。

「隼くん…女の人はこんな風におっぱいを優しく揉むと気持ち良いの。…分かった?」

目を充血させ息を乱れさせ、さっき重ねた唇を艶めかしく舌で舐めながら、菜摘さんは僕の目を捕らえて言う。

僕はそのあまりに官能的な姿に、思わず自分の意志とはまた別な奴が首を縦に振っていた。

さっきから、僕が僕でないような…

まるで、もう一人の僕が思考の追いつかない本来の僕を操っているかのような感覚があった。

だけどそんな僕の葛藤を知らない菜摘さんは、僕が頷いたことに満足したかのように微笑んだ。

「じゃあ逆に、男の人はどうしたら気持ちよくなれるのか教えてあげるね」


菜摘さんははそう言いながら、突然僕のズボンに手をかけた。

「えっ……!ちょっと……菜摘さんっ!?!?」


今までとは違う羞恥心に駆られたまま、僕は菜摘さんに抵抗しようとする……

が、それもむなしく菜摘さんの素早い手つきを交わすことはできず、僕はズボンどころか下着までもを剥ぎとられていた…。


「隼くんのここ、初めて見ちゃった…」


菜摘さんの舐めるような目線が、僕に一身に突き刺さった。

僕はつい恥で泣きそうになりながら、菜摘さんに見られているという事実から必死に現実逃避しようとした。

だけど菜摘さんはそんな僕の葛藤に全く気づく様子もなく、ひたすら僕を見ている…。

その表情は、これまで僕が見たことのない…菜摘さんの新しい1面だった。

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