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「……っはあ」
 
灼熱の砂浜が炙り返す熱は、僕らの全身を包むように纏わり付いた。
 
重なる唇から漏れてくる甘い吐息は、色の香りを染み込ませて互いの顔に降りかかる。
 
僕は声を出すこともままならない程、彼女の強く熱い口づけを受けていた。
 
「…隼くん…あっついわね…」
 
息を切らしながら、彼女は僕の耳にそんな事を吹き込んだ。
 
反射的にビクッと体を驚かせる僕に、満足そうな笑みを浮かべてまた追撃してくる。
 
暑いのは、この炎天下だからか、二人の息が重なっているからか…。
 
最早どちらかも分からなくなるほど、気がついたら僕たちは体をひっしりと密着させ合っていた。
 
僕は貪るように彼女の全てを吸い込んだ。
 
一度外された理性のタガは、もう元に戻ることを知らない。
 
彼女の瞳に、柔らかな胸に、しなやかな腕に引き込まれるように、僕は自分の全てをぶつけた。
 
8月の真夏の空の下。
 
照りつける太陽が真っ白な雲を輝かせている。
 
見渡す限り海と草原が広がる景色は、僕たちをまるで獣のように開放的な気持ちにさせる。
 
自由で開放的なこの気持ちは、きっとこんな場所だから生み出されたもの。
 
突き抜けるほどの高い空は、真っ直ぐ伸びていく二人の昂ぶりを邪魔しなかった。
 
時折耳を湿らす香しい海風は、速まる鼓動に合わせてリズムを刻んでいた。
 
貼り付き妙な感触を加える体の砂も、太陽の果汁のように絞り出る汗も、何もかもがこの海原で起こっている一夏の魔法。
 
 
 
 
だから、僕も菜摘さんもこれまでにないくらい激しく体をぶつけ合い、互いの名前を叫び合い求め合ったのも、きっとこんな昼だったから……。
 
世間も常識も忘れるくらい、暑くて広いこんな浜辺だったから…
 
最後の一滴を染み込ませた僕らは、力が入らない体を倒したままにして、必死に頭の中でそんなことを考えるしかなかった。
 
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