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オレンジの海月
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小学5年生の夏。
茹だるような猛暑の8月、私はお兄ちゃんと2人で、おばあちゃん家の近くの海へ行った。
東北の沿岸部の夏は、都心とは違う雰囲気を感じる。
時折吹く強い風に温かい塩の香りが運ばれて、小さな塵ごと海に流されていく。
そんな力強い波の音が、私とお兄ちゃんの耳を通り抜けた。
「梨々、海に入るの怖いのか?」
真っ黒に日焼けした笑顔のお兄ちゃんは、浮き輪をはめて砂浜から動かない私に声をかけた。
「こわい……波の音がこんなに大きいんだもん…」
「大丈夫だって!梨々は俺の妹だぞ?少し慣れればすぐに泳げるようになるから!」
勇気を出して足を前に運んでも、寄せる波を見るたびに尻込みしてしまう。
そんな私を見て、お兄ちゃんは困ったように笑っていた。
私のお兄ちゃんは5つ年上で、中学3年生だった。
幼稚園児の時から通っていたスイミングスクールで才能を発見され、中学に上がってからは全国の水泳大会で優勝するのが当たり前になっていた。
一方で私はとにかく水が怖くて、水泳の時間が大嫌いだった。
「お兄ちゃんが手繋いでてあげるから。
もしどうしても怖くなったらしがみついてきていいよ。俺は絶対溺れないからさ」
「うう………」
「梨々も海で泳げるようになりたいって言ったから来たんだよ?少しでもいいから頑張って入ってみような!」
「………うん……絶対私の手離さないでね……!」
「離すわけ無いよ!」
優しく差し伸べるお兄ちゃんの大きな手に、私は恐る恐る手を重ねて一緒に歩き出した。
お兄ちゃんの言う通り、手を繋いでいれば絶対に溺れないかもしれない…
そう思わせてくれる大きな大きな手だった。
茹だるような猛暑の8月、私はお兄ちゃんと2人で、おばあちゃん家の近くの海へ行った。
東北の沿岸部の夏は、都心とは違う雰囲気を感じる。
時折吹く強い風に温かい塩の香りが運ばれて、小さな塵ごと海に流されていく。
そんな力強い波の音が、私とお兄ちゃんの耳を通り抜けた。
「梨々、海に入るの怖いのか?」
真っ黒に日焼けした笑顔のお兄ちゃんは、浮き輪をはめて砂浜から動かない私に声をかけた。
「こわい……波の音がこんなに大きいんだもん…」
「大丈夫だって!梨々は俺の妹だぞ?少し慣れればすぐに泳げるようになるから!」
勇気を出して足を前に運んでも、寄せる波を見るたびに尻込みしてしまう。
そんな私を見て、お兄ちゃんは困ったように笑っていた。
私のお兄ちゃんは5つ年上で、中学3年生だった。
幼稚園児の時から通っていたスイミングスクールで才能を発見され、中学に上がってからは全国の水泳大会で優勝するのが当たり前になっていた。
一方で私はとにかく水が怖くて、水泳の時間が大嫌いだった。
「お兄ちゃんが手繋いでてあげるから。
もしどうしても怖くなったらしがみついてきていいよ。俺は絶対溺れないからさ」
「うう………」
「梨々も海で泳げるようになりたいって言ったから来たんだよ?少しでもいいから頑張って入ってみような!」
「………うん……絶対私の手離さないでね……!」
「離すわけ無いよ!」
優しく差し伸べるお兄ちゃんの大きな手に、私は恐る恐る手を重ねて一緒に歩き出した。
お兄ちゃんの言う通り、手を繋いでいれば絶対に溺れないかもしれない…
そう思わせてくれる大きな大きな手だった。
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