いらないものを、僕にくれる兄

いちごみるく

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「……舞香にはとっくに謝ったよ。なあ舞香?」

「うん、まあね……けど…歩のことなんて、許さないからっ」


重苦しいような雰囲気の中、舞香はそう言って頬を膨らませた。


「私、歩よりも裕樹と仲良くするもん!」

「いやそれ今既にそうなってるだろ…」

「今までよりももっと、ってこと!もう3人で遊んだりなんかしない!」

「なんでだよ、ふざけんなよ……」


拗ねる舞香に悪態をつきながらも、舞香の言葉に残念そうに反応する歩を見て、僕は気がついた。

歩は、あんなに舞香とは遊びたくないと言っていた。
なのに今、舞香からもう遊ばないと言われて拗ねている。


そうか…


歩は昔から、何でもできる奴だった。

僕にはできないどんなことも、歩にとっては朝飯前だった。



だけど……


「歩……僕の方こそ、いきなりカッターを持ち出したりしてごめんね。確かにあの時僕は怒ったけど…ちゃんと舞香本人に謝ってくれてよかったよ」


僕は歩に向かってそう言うしかなかった。


何故なら歩は、器用に見えて本当はとても不器用なんだということが分かったから。


やっぱり僕たちは双子だ。

長所と短所のバランスは偏っているにしても、歩にだって苦手なことはあるんだ。


僕が唯一絵が得意なように、歩が唯一苦手なこと。




だけどそれは、僕が口にするまでもないなと思った。

僕の前で互いに頬を赤らめながら、素直になれないで笑い合ってる2人を見たら、自然とそう思うことができたからだ。



「………おい裕樹………俺、いらないものあるんだけどさあ……」


僕の机を一瞥してから、歩はそう言って自分の部屋へと戻った。

そして……


「これ……サイズが合わなかった額縁。いらないからお前にやるよ…」



これまでたくさんの賞を獲ってきた歩は、金色の額縁を僕の机の上に置いた。


「サイズ、ちょうどいいね!」

机の上に置かれた額縁と……僕の絵の賞状を重ねて、舞香が嬉しそうに言う。


「……本当だ、ぴったりだね。……ありがとう歩!」


僕はテープで繋ぎ止めたあの賞状を、歩から貰った額縁に入れてお礼を言う。


歩が普段貰っている賞状よりも、1回り小さい賞状が入る額縁。


それは、僕の言葉に少し照れくさそうに微笑む歩が今まで僕にくれた物の中で、初めて心から「ありがとう」と言えたものであった。
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