異世界の学園にて学園生活を謳歌するはずだった

シロ

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1、始まりの逃避とウサギの国での活劇

カメ、授業が嫌いになる

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 しかし、その数分後イスカとレイカは嫌でも理解させられた。

「おい、何をしている。さっさと読め。今度は標準の発音でだ。わかっているだろうな、レイカ」
授業開始三分前、教卓に立ったのは本来いるはずの金髪碧眼の美女ではなく、油で髪をガチガチに固めた中年のおやじだった。リルク先生は私用のため一週間の有給をとったらしく、変わりに全く見知りすらしてない先生が教室にやってきた。
自己紹介もせず淡々と授業をする先生をイスカとレイカ以外誰も疑問に思っていないらしく、誰も何も話さずに授業を聞いていた。先生も答えてくれそうな雰囲気ではない。仕方がないかと授業が始まる前までは諦めていた。
しかし、今ではそう考えてもいられなくなった。いや、考えが甘かったとイスカが頭を抱えたほど、事態は悪くなっている。
授業が始まると同時に先生はレイカを立たせ、教科書を読むように命じ、声が小さい、発音がずれている、など些細なことで難癖をつけ始めたのだ。立たされてからすでに二十分が経過し、レイカの眼には涙が溜まって今にも零れ落ちそうな状態にまでなっている。もってあと一言。
なんで、ついさっき顔を知ったような人に友達はここまで罵声を浴びせられなくてはならないのか?
そんなことあっていいはずがない。
元々短いイスカの堪忍袋の尾が切れるのに時間はかからなかった。
「ちょっと、いい加減にしなさいよ。地方によってアクセントの違いがあることぐらい知ってるでしょう。声だって十分聞こえてるじゃないの。あんた、それでも先生なわけ」
我慢できなくなったイスカが壊れるほど机を叩いて抗議すると、先生は悪鬼のような形相でイスカを睨み、叫び返す。
「五月蝿い。関係ない貴様は黙ってろ」
「関係大有りよ」
もう一度机を叩いて立ち上がると躊躇することなく先生を指差す。あんな無茶苦茶な怒気に押し負けるわけにはいかない。壊れた机のことを視界に入れないようにしながらイスカは負けずと叫んだ。
「あたしはレイカの親友なの。友が泣いているのに黙ってられるわけないじゃない。だいたい、どこの誰だか名乗らないのに勝手に授業なんかしないでくれる。非常に不愉快!」
「ふん、そんなこと知ったことか。生徒なら大人しく授業を受けてろ!生徒は先生の言う事を素直に聞いていればいいんだ!!」
その言葉がイスカの怒りを買った。大人も怯ませる鋭い視線で睨みつけ、全員の動きを止めると、レイカを連れて教室から出て行く。
「待て、そんな態度だと単位をやらんぞ」
「黙れ、エセ臨時教師!」
火球を投げつけ先生を黒焦げにしてもイスカの怒りは治まらない。イスカは廊下を踏みつけるように歩き、その後をレイカが涙を拭いながら歩いていく。二人の手はしっかりと握られ、手から伝わる微かな震えがイスカの怒りを煽る。
「何よ、あの先公。生徒はあんたらの道具じゃないっての。ほら、レイカもメソメソしないの。涙を流すのは嬉しい時か人が死んだ時だけで十分よ」
「・・・そうどすなぁ。うち、こっち来ても全然変わってなかった」
 恐怖を感じると縮こまり何もできなくなる。致命的な弱点に決着をつけたくてレイカはこの学園に入学した。
「レイカ、そう簡単に変われるんなら苦労しないのよ。でも、変わろうとすればいつかは叶う、そうでしょ」
イスカの言葉にレイカは涙を拭いて力強く頷いた。
「それにあれは絶対先生が悪い!」
「ウルセー、俺ハ物ジャネー!」
ロイズが先生を殴り飛ばして教室から出てきたのはその時だった。

                           続く
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