エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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6-14、カメ、英気を養う

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 快晴、青天霹靂の今日この日、滝に打たれる少女が一人。手を合わせ、目を瞑ってジッとしている。そんな少女の様子を叢の陰から見つめる影が5つ。息を殺し、何かを待っているようだった。
「ふぅ」
少女が息を抜いた正にその時だった。叢からゴブリンが五体少女に襲い掛かった。しかし、ゴブリンの身体は少女に触れることなく首が胴体から分裂する。
「大分腕を上げたな」
太刀を差した侍姿の少年が少女に声をかける。
「ありがとうございます。これも師匠の指導の賜物どす」
巫女装束に着替えたレイカが少年に向かってお辞儀をする。こちらに来た時よりも髪が肩下まで伸び、少年より低かった背丈も少し高くなっている。それでもまだ中学一年生止まりだが。
「基礎的な戦い方は叩き込める分だけ叩き込んでおいた。まぁ、なるだけなるだろう」
唾にかけた指を外しながら少年が溜息を吐く。
「フリーランニングももう少しできるようになってからが良かったのだが、受け身の適性が高かったことだ。トレーニングを欠かさなければ自然に身につくだろう」
「はい、師匠」
「そちらのことはこっちでも調べておこう。下山は自分でするように。それをもって卒業とする」
渡された地図を広げてみる。かなり広い裏山で、現時点を探すのも一苦労だ。何とか自分のいる三本滝を見つけ出す。ペケ印が付いているところはこの川の下流に当たる彼の家だ。
「ほな、ボチボチいこか」
気配を消して結界外に一歩踏み出した。途端に襲ってくる獣の気配にレイカは身を小さくする。何時までも慣れそうにない。だが、そうも言っていられない。ゆっくり、しかししっかり地面を踏みしめながら一歩一歩レイカは進んだ。不意に上空を黒い影が横切る。急いで木陰に隠れてその陰の正体を見極める。巨大な蜂だった。この山の頂上に住んでいる山の主で、全長10mを超える蜜蜂である。滋養強壮にいい蜂蜜を修行中に何度か貰いに行ったことがある。言葉は通じないが、気のいい蜂達だった。ただ、師匠がいないと敵と判断されるから今見つかると攻撃される可能性が高いので隠れているのだ。
「そうそう言い忘れていた」
「キャア?!し師匠。驚かせんといて」
「10分以内にゴールしたらヒントをやろう」
「ヒントどすか・・・・・・」
「いらないなら無視すればいい」
そう言って師匠は姿を消した。少し呆れていたレイカだったが、また黙々と歩きだした。走りたいのは山々だが、トラップが至る所に隠してあるって危険だ。ゆっくりしかし確実にレイカは歩みを進めていった。そして、
「只今着きました・・・」
約束の時刻ギリギリにレイカは目的地に到着した。頭についた木の葉を払いのける。
「ご苦労。茶でもと言いたいところだが、時間が惜しい。すぐに出発するぞ」
「師匠、どこにですか?」
「時間軸のある一点にだ。そうだな、時系列でいくと魔法学園入学式中になる」
早足に何とかついて行きながらイスカは思った。初めて出会った時だ。消火栓の位置を確認しておかなければ。
「イスカはん達はどうしてはるのですか?」
「他の場所で修行している」
「どうして半年も会わせてくれへんかったの?同じスタートウにいはったんやろ」
「一緒にいてどうなる。修行は馴れ合いではない」
そう言われてはレイカも黙るしかなかった。
「同じ時間軸に送り込む。何直ぐに会えるはずだ」
師匠がレイカを連れてきたのは天高くそびえた扉のある峡谷だった。人工的に作られた扉の前に待っていたのはレイカと同じくらい薄い茶色の長髪に灰色の目を持った女性だった。その女性にまだ見ぬ母の面影を感じた。
「初めまして、スタートウの護りの神子をしていますチヤと申します。どうぞお見知りおきを」
丁寧に頭を下げられ、レイカもゆっくりと頭を垂れた。従姉と同じ役割なのに性格は全然違うようだ。
「あなたが時の魔法使いなのですか?」
「そうですね。皆さんからはそう言われています」
「あ、あのイスカはんとザリはんは無事なんどすな」
「はい、お二方ともつい先程出発されましたよ。あなたも行かれますか?」
「・・・・・・はい」
しっかり考えてレイカは返事をした。離れてから気が付いた。あの場は自分にとって掛け替えのないものになっていたことを。だから、何度道に迷おうとまたみんなで笑い合える時を手に入れよう、と。
「餞別だ。あの時系列がどうなったか教えてやろう」
ゴクリと唾を飲みこみ、レイカは師匠の次の言葉を待った。
「魔王が全てを破壊した」
「ほんまどすか?!」
魔王の名前が出てくるとはレイカも想像できなかった。また魔界セヴァーニブルの侵略が始まったのだろうか。しかし、そんな兆しがどこにあっただろうか?イスカの故郷を襲ったのも魔族だが、それが関係しているのだろうか?
「・・・・・・最終的にはだ。それまでの経緯は自分で探し出せ」
「そうですね。大した助言はできませんが、困った時は頼ってきてください」
「俺のも渡しておこう」
「師匠、チヤはんありがとうございます。レイカ、小さき身の者ながら頑張らせて頂きます」
赤外線通信をしながらでなければもう少し様になっただろう。嬉しそうに携帯を握りしめる。一礼すると開いた扉に向かい合う。そこには時が渦巻いていた。その中に一本。絹の糸のように輝く一筋の光がある。それをしっかり握るとレイカの身体は粒子になり、時の路へと旅立っていた。
「よかったのですか?」
「・・・すでにあいつの時界でもある。あるべきものがなくなるのはこっちとしても困るからな」
「そうですね。魔学と科学は表裏一体。あのままではカーレントにも影響が出ていたでしょう」
「不安定ながらも成立している時界群。崩すわけにはいかん」
閉じた扉に手を当て、チヤは祈った。
「どうか彼らの旅路に幸大からんことを・・・・・・」


                                続く
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