エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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8-1、カメ、叩く

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 厚雲が天を覆い尽くしている今日、イスカ、レイカ、ロン、ロイズの四人は喫茶店でボーっとしていた。リトアは用事があったので、すぐに合流できなかったのが原因である。レイカは知っているのだが、リトアに話したところ、大層驚かれ、他の人には絶対教えないでと硬く約束した。なので、イスカとロイズに理由を聞かれてもレイカは何かを飲んだり話題を逸らしたりしていた。
「あ、相変わらずいい曲よね」
例のポーションのCMに食事中のイスカが反応する。街頭の電子掲示板から聞こえてくるそれはよくよく聞くとリトアの声だ。
「アレダケ上手イノニ歌イ手不明ノトコロガマタイイ」
「ロイズも聞いてたんだ?」
「・・・実験中口遊んでる」
「うわ、意外っ」
「似合わへんなぁ」
「・・・下手」
「オ前、何気ニ失礼ダナ」
等と、他愛もない話をしているそのテーブルには大量の皿が積まれている。
「レイカちゃん、ここで何があるの?」
「えっとな。たぶん、もうちょっと」
近くで悲鳴が起きる。レイカが振り返ると宙に浮いた手がバックを握っていた。懐に隠し持っていたハリセンで叩き落とす。
「はい、お婆さん」
「おお、小さいのにどうもありがとねぇ」
「いえいえ、そんな」
「はい、これお礼。皆さんで食べてね」
両手いっぱいのミカンを貰った。
「レイカ、これどうすんの?」
霊験あらたかなハリセンに叩かれて気絶している手をイスカは指した。心なしか距離をとっているように見える。
「話聞きたいからその辺に置いといてほしいなぁ」
「・・・妙な魂」
「ふむ、合成痕があるな」
流石ロンとロイズ。只の魂ではないことを一目で見抜いた。お婆さんと別れるとレイカは幽霊の手を叩き起こした。
「何であの人襲ったのか教えてほしいんどす」
『いや~、その何というか』
『あなたみたいな子に会いたくて』
『むしゃくしゃしてやった。反省はしている』
「げ、同一魂から男と女の声が聞こえる。空耳かしら?」
「安心シロ。俺ニモ聞コエル」
『悪の魔道士の実験でこんな風になってしまったのだ。これでは成仏すらできない』
『お願いです。全財産はあなた方に譲りますからどうにかしてもらえませんか?これでは成仏もできません』
四人はしばらく黙った。それぞれ何かを考えていたようだった。最初に動き出したのはロイズだった。ロンに何やら耳打ちをし、それを受けたロンが姿を消す。
「ロンが帰って来たら返事をするわ」
「ロンはん何しに行ったん?」
「想像がつくわよ。ほら、戻ってきた」
「・・・・・・」
特に息を荒くすることなく帰ってきたロンは一切れの紙をロイズに手渡した。
「フム、都会ノ住宅街ノ一軒家カ。良イダロウ。ソノ依頼ノッタ」
「うちも想像ついたわぁ」
彼らの全財産を調べに行かせたのだろう。確かに、都心の一戸建て持ちならかなり財産は持っていそうである。
『では、お願いする』
『頼みたいのは私達をこんな姿にした人を逮捕すること』
「殺害ジャナクテイイノカ?」
『逮捕で頼む』
『ただ、私達捕らわれた時の記憶がないの』
「結構な無茶ぶりな訳ね」
「せや、リトア先輩に頼んでみない?」
「え?何でよ」
「前回先輩が犯人のところまで連れてってくれはりました」
「成程、そういうことね」
「・・・・・・」
「あ、ロンはんこっちの話どすぇ」
「・・・りとあカ。アレヲ持ッテイルハズダシ、確カニ何トカデキソウダナ」
「ロイズはんは持ってへんの?」
あれの製作者はロイズだったはず。
「試供品ダカラナ。数ハ作ッテナイ。ソレニアレハ使用者ヲ選ブンダ」
リトアはそれに見事適合したようだ。そんなに難しそうなものに見えなかったのだが、と思った途端、ロイズからあれがどういうものか説教を受けた。簡単に言うと対象空間の時間を巻き戻してそこで起こった事象を視覚化できるものだそうだ。レイカも一緒に聞いていたイスカも説明されてもさっぱりわからなかった。
「じゃあ、あたし達は先に現場に向かって家探し。リトア先輩の用事が終わったら合流してもらいましょう」
「ソレガ妥当ダロウナ」
「・・・調査大切」
ロンには悪いが、レイカには二人の言う家探しはその言葉の通りだと思えてならなかった。
「さっそく案内してもらいましょう」
いつもの調子で腕を取ろうとしたイスカはその場に転んだ。
「霊感強ないと幽霊はん触れへんよ」
「コノ中ジャ触レルマデアルノハれいかダケダロウナ」
ある程度強くないと幽霊には触れない。逆は可能なのだから理不尽である。ロイズは元の身体なら高い霊力を持っているそうだが、操作している今の身体には霊力はない。考えても見てほしい。機械の身体に霊的能力がある方が不気味である。できたとしたらカーレントではノーベル賞ものだ。
「意外、ロンも低いんだ」
「なら、うちと手つないどこか」
「えー、ズルい」
「ほな、こっちはイスカはんとん繋ごか」
「・・・いつもの風景」
「アア、イツモノ風景ダ」
幽霊と和むレイカにヤキモチを焼くイスカ。特殊クラスでは馴染の光景である。レイカが霊媒体質らしく、よく幽霊が相談に来ている。
「この人みたいなのは初めてです」
「ソリャソウダロウナ」
彼らの家はロンの報告通りに都心真っ只中の住宅街にあった。築20年くらい経っているだろうか。新しいとも古いとも言い難いその家は質素ながらも所々にバッチリお金がかかっていた。
「ひょっとしなくても、金持ち?」
「ひょっとせぇへんでもせやな~」
「・・・そうでもない」
鍵は開いていた。蜘蛛の巣がかかった玄関を開くと、中は・・・・・・何もなかった。
「引越でもしたのか?」
戸棚中には靴一つ置いてなかった。棚の上にはうっすらと埃がかぶっている。
「見事ニ何モナイナ」
「リビングも空よ」
「キッチンもどす」
「・・・二階も」
『嘘だろ』
『引っ越した覚え何てないわよ』
「と、本人たちは申していますが?」
「参ッタナ。犯人ガイナケレバ俺ラ完全ニ只働キダ」
これほど切にいてほしいと願われた犯人も珍しいのではないだろうか。
「ともかく、ここで攫われたってことでいいんだな」
『あ、ああ』
『まぁ、ねぇ』
どうもキレが悪い。
「オ前ラ、適当ナコト言ッテンジャナイダロウナ」
『そんなことはない』
『そうよ。ただ、ちょっと攫われた時の記憶がないだけで・・・・・・』
「・・・迷宮入り?」
「・・・ダナ。帰ルカ」
『『そこを何とか』』
幽霊に縋り付かれたら途端にロイズの動きが鈍くなった。心霊現象に機械が弱いのはどこでも変わらないようだ。
「エエイ、何トカシテヤルカラ離レロ」
『『ありがとうございます』』
「しっかし、こうも何にもないと攻めようがないわよ」
「ろん、近所ノ聞キ込ミハドウダッタ?」
「・・・異常なし」
「まじデりとあ待チダナ。暇ダシ、とらんぷデモスルカ」
「単なるトランプじゃ面白みがないわね」
「何か賭けはります?」
「ソウダナ、労働力ハ・・・調査次第ダシナ」
「なら、今日の昼ご飯をかけて勝負よ!異議ある人は?」
ロイズは良いハンデだと思い、レイカは四人分なら何とかなると思った。ロンは特に何も思ってなかった。こうして第一回ババ抜き大会が開催された。

                             続く
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