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10ー2、ネコ、特殊クラスに配属される

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 テストの結果を報告し合いながら食事を続けていると、食堂の扉が一気に開かれた。そして、上級生がワイワイと入ってくる。その中の一人が三人の姿を見つけて駆け寄ってきた。ユルフワの小麦色の髪に整った顔立ち。全身黒尽くめの服を着た人物は、にっこりと笑ってこう言った。
「この度、特殊クラスに配属されましたリトア・ファスファーです。初めましてではないけれど、皆よろしくお願いします」
食堂内が一気に静まりかえり、そしてざわめいた。
「「リトア先輩!!」」
「研究室にいられなかったので、こちらでしたか」
「よっ、まあ、席につけよ」
ロイズはこれを待っていたようだ。相変わらず、意地が悪い。
「イスカちゃんにレイカちゃんもこれからよろしくだね」
「え、ああ、うん」
「こ、こちらこそ」
「知らないのはこいつだけか。ロンだ」
「・・・どうも」
「よろしくね、ロン君」
食堂のあちこちから、異議あり的なひそひそ話が聞こえてくる。納得はできない気持ちはわかる。
「てっきり、アイテムクラスに行くと思っていたわ」
「うちは戦闘クラスかと」
「僕もそうなると思っていたのだけれどね・・・・・・装置が反応しなかったんだ」
今日、テストに平行して上級生の特別クラス分けが行われた。例のクラス分けマシーンに触れて魔法を使う要領で魔力を放出する簡単なものである。特殊クラスはこのマシーンの測定結果にて想定外の結果をたたき出した生徒が入るクラスだ。イスカは火属性の星を暴走させ、レイカは全惑星を機能停止にしている。例外がロイズで、彼は単位修得のためだけにいさせられている。ロンは・・・・わからない。
「微弱魔力でも何らかの結果を出す装置で反応なしか。魔力ゼロは伊達ではないな」
「また厄介になります」
「試験兼ねてていいならな」
やっぱり試作品を渡してたんだ、とレイカは思った。
「魔力ゼロだから初期のテストパイロットとしては優秀だしな」
「そう言ってもらえると、恐縮です」
「あと、仲間になったからには敬語禁止な」
特殊クラスに上下関係はない、というかロイズが面倒だと取っ払った。あるとしたら師弟関係くらいだろう。実際、イスカとレイカもロイズに対して敬語を使っていない。ロンは・・・そもそもの口数事態が少ない。
「・・・帰還」
食堂に風が吹いたかと思うと、ロイズの背後にロンが現れた。そのまま当然の如く隣に着席する。さっきまでいたロンの姿は跡形もなく消えていた。術かなんかだったのだろう。
「しっかし、誰か来るようにしといたが、大物が釣れたな」
「しといたって・・・・何したのよ?」
「後押ししただけだからノーカンだ」
にやりと笑い合うその向こうで、
「でも、リトア先輩が一緒だと心強いわぁ」
「僕も皆と同じクラスになれて嬉しいよ」
等と仄々とした会話があっていた。
「そうだ。皆食べられない物とかあるかな?」
「特にないわよ」
「同じどす」
「・・・おこげ」
「失敗作だな」
ロンとロイズには遠慮というものがなかった。
「何で聞くの?趣味料理とか?」
「料理はよくするけれどそこまでではないかな。今回の特別クラス決めで上級生が入るでしょう。学食が開いていない早朝とか深夜とかに必要だった場合は上級生が料理当番をすることになっているの」
「ちなみにリトア先輩の実力は?」
「「「「「絶賛に決まってんだろ!!」」」」」
周囲からの回答にリトアはポカーンとし、レイカは怯えた。イスカとロイズは大爆笑だった。ちなみに、回答は主に5年生からだった。


                               続く
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