エターナニル魔法学園特殊クラス

シロ

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10ー26、カラス、バケツを渡す

エターナニル魔法学園特殊クラス

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 また、面倒な周回が始まった。ノイズがなくなった視界には何もない部屋が映し出される。記憶の保持を確認。雑感なし。精神回路正常。四肢の駆動性情を確認。身体能力異常なし。身体回路正常。身支度を整える。今日は、入学式。学校生活の始まりの日。
「・・・・・・・以上を持ちまして祝辞を終わらせていただきます。皆それぞれ良き学校生活を送るように」
起立、礼、着席。先生の号令で生徒一同が動く。獣人族やイノセクターのようにお辞儀する習慣がない種族もあるので揃いはしない。礼の仕方も多種多様だ。窓の外から中を覗いながらロンの青黒い瞳は捉えた。その中で、自分と同じように頭を下げる人が一人。ああ、彼女か。
「それでは、これより特別クラス分けを行います。呼ばれた人から壇上に来るように」
新入生は気の毒だとロンは思う。特別クラス分けはクラス内で行われた。2年共に過ごしたクラスメイトなのでそれなりに気が置けた人も多いだろう。結果もクラスメイト一人一人がわかりきったものばかりだった。なのに、今年の入学生はまだ名前も知らない人達の中で発表される。それが、二人の運命を変えた。言うなれば、ここが一種の運命分岐点だ。
「アイテム。戦闘。召喚。アイテム。戦闘。アイテム。召喚」
今年はバランスが取れた特殊クラス編成になりそうだ。去年なんか戦闘クラスに偏って、召喚クラスは一人しかいなかった。
「次、イスカ」
学生名が呼び上げられる。はい、と元気よく立ち上がったのは赤瞳の少女?だった。赤い瞳が真っ直ぐにクラス分け装置を見据える。天井裏から表に出る。日差しが眩しい。バケツを用意し、中を水で満たす。8割くらいのところで誰かが体育館から出てきた。亜麻色の髪の少女。光のない灰色の瞳と青黒い瞳があった。
「あ、あの、その」
「・・・・・・」
「ありがとう、ロンはん」
受け取って勢いよく振り向いたレイカはバケツの重さに振り回され、こけた。すっ飛んで行ったバケツは綺麗な軌跡を描いて生徒達の頭上を越え、イスカの後頭部に命中した。鈍い音と共にイスカも倒れる。組み分け装置は赤い星がメラメラと炎を上げて燃えていた。
「イスカ及びレイカ、二人とも特殊クラス確定」
倒れ伏した二人に先生の声が淡々と告げる。周囲がざわめく。イスカはともかく、レイカは組み分け装置を使用していないのだ。
「静かに。次、・・・」
ざわめきはすぐに消えた。また観察に戻ろうとした時にロンはリムル先生に呼び止められた。肩にはイスカが担がれている。
「手が空いていたら貸してほしいのだけれど」
「・・・・・・・」
返事する代わりに手を伸ばす。レイカの身体は年相応ではない。もっと幼い。何がどうしてかはわからないし、知ろうとも思わない。幼少期の出来事が原因だろうと、主からもらった報告書を思い出す。日本国内とはいえ、こうも頻繁に住処を変えていたら知り合いすらできなかっただろう、と主も言っていた。
保健室まで運ぶ。途中珍しがられたが、リムル先生と一緒なので噂になることはないだろう。姫抱っこは姿勢を安定させる意味で運び易いのだ。他意はない。求められても困る。
「ありがとう。二人抱えるのはちょっと大変で・・・・・・」
リムル先生は申し訳なさそうに笑った。重さ的には余裕らしい。さすが、他の実技系先生を追い越して実力第二位と言われるだけはある。回復魔法も完璧にできる。これで嫉みを受けずに尊敬だけされているのは彼の人柄故だろう。そのせいで喧嘩の仲裁にかり出されているようだが、彼の性格から考えると放っても置けないだろう。
「外傷はこれで大丈夫。目覚めた時には痛くないから」
出払っている保険医に変わり、テキパキと怪我を治癒し終えてリムル先生は体育館に戻って行った。ロンは壁に寄り掛かると何をすることなくぼんやりと外を眺め始めた。


                            続く
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