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11ー6、カメ、観察する
エターナニル魔法学園特殊クラス
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観察結果から言おう。リトアはカズとジアルを除く全校生徒から無視されていた。先生も必要最小限の要件を突き付ける以外では話はしてくれない。見て見ぬふり状態だ。ただ、その分、ジアルとカズがいつも傍にいる。依頼が進まないのはそのためだろう。休み時間毎にジアルが飛んでくるし、カズに至っては席が後ろだ。騎士学校と言うだけあって実技のハードルはかなり高い。夜中に調査などしていたら睡眠不足、飛行回復不足で授業についていけなくなる。リトアのことだから調査はしたのだろう。保健室利用履歴に名前があった。これが10日前の出来事。
「リトア先輩、何を調べはるのです?お手伝いしますぇ」
「さすがにそこまで手伝ってもらうのは、僕の仕事だし・・・・それに同級生から話聞かないといけないから」
難しいでしょうと言われてレイカは返事に詰まった。リトアの現状を調べるのは物陰から観察するくらいで済んだ。リトアのことだからジアルとカズから引き出せる情報は入手したのだろう。それだけではどうにもできない何かがこの学校にあるのだろう。
「ほな、うち適当に校内うろついていてええどすか?」
「いいかな。先生以外立ち入り禁止の場所にさえ入らなければ、うん、大丈夫だよ」
差し出されたサンドイッチをそのまま口に運ぶ。
「お前ら、あーんなんてやってて恥ずかしくないのかよw」
「先ご飯ズルい!」
最初は文句を言っていたが、リトアが放り込んだ唐揚げを噛みしめると大人しくなった。
「昔やっていた気がするよ」
「保育園の先生でもやってたのかよ」
「なら、将来そうなろうかな」
平和になり、男女平等に社会で働き始めた今の時代にはピッタリの仕事だ。子供を作りたいが、仕事と続けたい、特に配偶者にとって助かる存在になる。他者の面倒を見るのをリトアは苦とも思っていなかった。
「俺は稼業継ぐんだろうなw」
そのためにここにいるんだし、とカズは笑う。代々軍人の家系の長男だった彼に両親はそう願い、彼もその気持ちに答えようとしている。それがカズにとっての当たり前なのだ。
「その点、俺は選択肢が多いのか少ないのか」
同じ軍人家系生まれであるジアルだが、彼は8男。家を継ぐなど関係ない話だった。兄達を蹴落としてまで家を受け止めることに執着はない。むしろ、飛び出したい、独立したいと彼は思っている。そのために、ジアルは芸能界に足を突っ込んだ。今では男性アーティスト部門で人気第一位のグループになっている。
「忙しくないんどすか?」
「テスト期間とギルド系の仕事は優先していいってことになってるんだ。収入もそっちの方が多いしな」
でないと辞めるって言ってあるしな、とジアルは非常にいい笑顔で言った。
「で、去年はその期間遊びまくってたとw」
「遊んでねーって、ちょっと探しもんしてただけだし」
「見つかったのかな?」
「おう、ばっちし」
唐揚げをヒョイヒョイと口に運ぶジアルは本当に幸せそうだ。彼は現状に非常に満足している。レイカはそう判断した。
「二人とも料理できへんの?」
美味しそうに食べる動きがピタリと止まった。
「「食材への冒涜だって言われた」」
二人とも壊滅的に料理下手だ。嫁に期待するからいい、と本人達もすっかり開き直っている。そんなことしなくてもお抱えシェフを雇えるのではないかと思いはしたが、言いはしないレイカだった。
「さーて、午後は剣術だー」
「本当にジアルは実技になると生き生きするね」
「まぁ、こいつの特技それだけだしw。あ、歌もうまいか。ノリのいいやつ限定ww」
「アップテンポでスピーディーなやつって最高じゃん」
「にしては、お前のミュージックプレイヤー、バラードとか多くねー」
「好きなアーティストがそっち系なんだから仕方がないだろ」
ジアルのL好きは相変わらずなようだ。
「ポップ系も歌ってはるけれど、やっぱり、あの人の歌唱力を最大限に表現するならバラードどす」
Lは性別不詳の未成年歌手である。女性パートも男性パートも歌える。歌募集された時も、悲恋と初恋の歌をきちんと歌っていた。なので、ネット上にはLに歌ってほしい曲があふれている。それこそ、ネタ曲からエロ曲からコメディー、シリアスまで千曲以上。それを丁寧に歌い上げているのだから脱帽である。未成年なのは薬屋の社長がポロリと漏らしてばれた。それ以後、かなり厳戒態勢でマスコミ対策抜群になった。政府にも見習えと言いたくなるくらいの機密保管されている。だからこそ、リトアはこうして友達と平和的に昼ご飯を食べられている。
「今度はどんな歌やろか?」
「俺のが採用されれば、初のロックだぜ」
「わかってないなー。あの声は民族舞踊に活かせるんだ」
歌い手本人の前で行われる不毛な会話。どんな歌詞を書いたか知らないが、歌うのはそこの種族不詳の優少年である。Lのイメージからしてロックは難しいのではないだろうか。レイカとしては万葉集を朗読してほしいなぁ、と思っていた。あの心に響く声色は和歌にぴったりだ。当の本人は言い出せないからか困り笑いを浮かべながら弁当箱(重箱)を風呂敷に包んでいた。中身は4人の腹の中に不平等に入っていった。
続く
「リトア先輩、何を調べはるのです?お手伝いしますぇ」
「さすがにそこまで手伝ってもらうのは、僕の仕事だし・・・・それに同級生から話聞かないといけないから」
難しいでしょうと言われてレイカは返事に詰まった。リトアの現状を調べるのは物陰から観察するくらいで済んだ。リトアのことだからジアルとカズから引き出せる情報は入手したのだろう。それだけではどうにもできない何かがこの学校にあるのだろう。
「ほな、うち適当に校内うろついていてええどすか?」
「いいかな。先生以外立ち入り禁止の場所にさえ入らなければ、うん、大丈夫だよ」
差し出されたサンドイッチをそのまま口に運ぶ。
「お前ら、あーんなんてやってて恥ずかしくないのかよw」
「先ご飯ズルい!」
最初は文句を言っていたが、リトアが放り込んだ唐揚げを噛みしめると大人しくなった。
「昔やっていた気がするよ」
「保育園の先生でもやってたのかよ」
「なら、将来そうなろうかな」
平和になり、男女平等に社会で働き始めた今の時代にはピッタリの仕事だ。子供を作りたいが、仕事と続けたい、特に配偶者にとって助かる存在になる。他者の面倒を見るのをリトアは苦とも思っていなかった。
「俺は稼業継ぐんだろうなw」
そのためにここにいるんだし、とカズは笑う。代々軍人の家系の長男だった彼に両親はそう願い、彼もその気持ちに答えようとしている。それがカズにとっての当たり前なのだ。
「その点、俺は選択肢が多いのか少ないのか」
同じ軍人家系生まれであるジアルだが、彼は8男。家を継ぐなど関係ない話だった。兄達を蹴落としてまで家を受け止めることに執着はない。むしろ、飛び出したい、独立したいと彼は思っている。そのために、ジアルは芸能界に足を突っ込んだ。今では男性アーティスト部門で人気第一位のグループになっている。
「忙しくないんどすか?」
「テスト期間とギルド系の仕事は優先していいってことになってるんだ。収入もそっちの方が多いしな」
でないと辞めるって言ってあるしな、とジアルは非常にいい笑顔で言った。
「で、去年はその期間遊びまくってたとw」
「遊んでねーって、ちょっと探しもんしてただけだし」
「見つかったのかな?」
「おう、ばっちし」
唐揚げをヒョイヒョイと口に運ぶジアルは本当に幸せそうだ。彼は現状に非常に満足している。レイカはそう判断した。
「二人とも料理できへんの?」
美味しそうに食べる動きがピタリと止まった。
「「食材への冒涜だって言われた」」
二人とも壊滅的に料理下手だ。嫁に期待するからいい、と本人達もすっかり開き直っている。そんなことしなくてもお抱えシェフを雇えるのではないかと思いはしたが、言いはしないレイカだった。
「さーて、午後は剣術だー」
「本当にジアルは実技になると生き生きするね」
「まぁ、こいつの特技それだけだしw。あ、歌もうまいか。ノリのいいやつ限定ww」
「アップテンポでスピーディーなやつって最高じゃん」
「にしては、お前のミュージックプレイヤー、バラードとか多くねー」
「好きなアーティストがそっち系なんだから仕方がないだろ」
ジアルのL好きは相変わらずなようだ。
「ポップ系も歌ってはるけれど、やっぱり、あの人の歌唱力を最大限に表現するならバラードどす」
Lは性別不詳の未成年歌手である。女性パートも男性パートも歌える。歌募集された時も、悲恋と初恋の歌をきちんと歌っていた。なので、ネット上にはLに歌ってほしい曲があふれている。それこそ、ネタ曲からエロ曲からコメディー、シリアスまで千曲以上。それを丁寧に歌い上げているのだから脱帽である。未成年なのは薬屋の社長がポロリと漏らしてばれた。それ以後、かなり厳戒態勢でマスコミ対策抜群になった。政府にも見習えと言いたくなるくらいの機密保管されている。だからこそ、リトアはこうして友達と平和的に昼ご飯を食べられている。
「今度はどんな歌やろか?」
「俺のが採用されれば、初のロックだぜ」
「わかってないなー。あの声は民族舞踊に活かせるんだ」
歌い手本人の前で行われる不毛な会話。どんな歌詞を書いたか知らないが、歌うのはそこの種族不詳の優少年である。Lのイメージからしてロックは難しいのではないだろうか。レイカとしては万葉集を朗読してほしいなぁ、と思っていた。あの心に響く声色は和歌にぴったりだ。当の本人は言い出せないからか困り笑いを浮かべながら弁当箱(重箱)を風呂敷に包んでいた。中身は4人の腹の中に不平等に入っていった。
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