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二日目その3、疑う
間違った休日の過ごし方
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これで三つ目。実はもう一つ一緒に落ちていたので4つ所持していたりする。
あと5つのうちクウが持っているのが3つ。レーダーの範囲をあげてみる。3つの塊と2つの塊がある。ここから10駅くらい離れていて今から向かっても1時間はかかってしまう。どちらも人が所持しているようだ。
携帯を取り出してクウの番号にかける。仕事中ではなかったのかすぐに出てくれた。
「残り見つけた」
『それは重畳じゃのう。こっちは2つ持っておる。残り二つじゃが、生憎私のレーダーの範囲内にはないようじゃ。そっちはどうじゃ』
「そこから南東の方角に2つ。揃って移動している」
『ふむ、何かありそうじゃのう。一旦集合するか』
それは不味い。今ここに少年がいない。置いてきてしまった。
『そうだな。話せるところ知らないか、少年』
「・・・・・・」
『探してきなさい』
「・・・はい」
クウは何故彼に拘るのだろうか。普通の人、一般市民、平々凡々な人だと思う。少なくとも自分やクウのような人ではない。ありふれた人間族である。彼女にとっては餌でしかないはずなのに、あれのためだとするなら仲間になる前に始末をつけなければ。
「また物騒なことを考えていないかな?」
「先輩お久しぶりです」
足音も気配も隠さないでやってきてくれる身内は正直ありがたかった。自分の正体をしている人は誰も彼も気配を隠しながら接近してくる。依頼がなければ刃物すらむけられないといつになったら理解してくれるのだろうか。
「こんにちは、仕事かな?」
「似たようなものです。先輩も?」
「似たようなものになるかも。なんなら手伝いましょうか?」
これはありがたい戦力となった。この金髪碧眼の人は自分の先輩で、クウの家族であるリト。顔立ちはクウがモデル並みのオーラを放っているのに対し、彼女は近寄りやすい美人と言われている。童顔なのでリトの方が年下に見えるが、実際はクウの方が年下である。
「この人を探してほしいのです」
昨日隠し撮りした充希の写メを見せる。
「・・・対象者ではないか」
「違います」
「わかりました」
ゆっくりと息を吸うと先輩は瞑想し始めた。彼女は人探しが得意だ。姿さえ合えば他の情報が一切なくても人を探すことができる。探索に特化した魔法使い、それが先輩である。その代り、みんなが想像するような派手な魔法はほとんど使えない。
「あ、この人かな。近くまで送るよ」
「ありがとうございます」
移動する人を探す場合、一瞬で彼の目の前に移動できる能力は大いに役立つ。行き違いになることを防げるからだ。自分も建物に侵入する時に欲しいと思った時があった。
先輩の手の平から生まれた魔法陣が二人の身体を包み込むとビルの屋上から人の姿がなくなった。
目の前に充希の姿があった。
「この人で合ってるかな?」
「はい」
「な」
「な」
「な」
「な」
「・・・・・・な」
頭を抱えたのは充希と先程まで一緒にいたカツアゲの人達だった。開いた口が塞がらないようでポカーンとした顔になって全員がこちらに視線を向けている。
「じゃあ、僕はいくね」
「先輩ありがとうございました」
「先輩ちょっと待って!」
立ち去ろうとする先輩を充希が袖口に捕まって止めた。その眼は何かを言いたそうだ。
「うん、いいよ」
「え?」
咄嗟に先輩の腕をつかむのと同時だった。またしても景色が変わり、先程までいた屋上に立っていた。
「これでいいのかな?」
「ありがとう、じゃなくて。俺が言いたかったのは魔法使えるって秘密じゃなかったのかよってことなんだ」
「僕のは魔法じゃなくてこっちで言うなら超能力みたいなものだから」
「同じだってば」
「「そうなの?」」
逃げられたからか充希は深い溜息を吐く。非常階段を下りる音がそれを消すように響く。
「一般的にはそんな不思議技能はないんだ」
「そうなのか?魔法がないことは知っていたけれどこっちもなかったのか」
「あったらみんなせかせか歩いていないって」
「考えてみればそうだね。あ、じゃあ僕はこれで」
下まで降りてくると先輩はまた一瞬で目の前から消えた。気配も近くにない。本当に帰ったらしい。手伝ってくれるかと期待したが、考えてみれば先輩の方が自分よりも多忙である。
「だ・か・ら、全く警戒していませんでしたのよ。怪我しないように氷系の弱呪文選びましたのに何が不安ですの」
「それ自体が間違っているんだ」
レーダーを頼りにしてきたのだろう。クウと昨日世話になった刑事のおじさんがやってきた。あちらも何やら険悪な雰囲気だ。横目で見ると充希もまだ何か言いたそうにしている。
「そっちも似たようなことか」
「そうなんだよ。こいつらマジなんなん?」
「ちょうど昼だな。どこかで一息つくか」
12:17。昼である。そういえば腹が減ったな~と充希が呟く。
「では、ぜひともマッ○に」
「は?」
クウの意見に同意する。
「俺もそれでいいぜ。てか、財布が助かる」
若者に人気なマッ○で4人は昼食をとるようになった。
あと5つのうちクウが持っているのが3つ。レーダーの範囲をあげてみる。3つの塊と2つの塊がある。ここから10駅くらい離れていて今から向かっても1時間はかかってしまう。どちらも人が所持しているようだ。
携帯を取り出してクウの番号にかける。仕事中ではなかったのかすぐに出てくれた。
「残り見つけた」
『それは重畳じゃのう。こっちは2つ持っておる。残り二つじゃが、生憎私のレーダーの範囲内にはないようじゃ。そっちはどうじゃ』
「そこから南東の方角に2つ。揃って移動している」
『ふむ、何かありそうじゃのう。一旦集合するか』
それは不味い。今ここに少年がいない。置いてきてしまった。
『そうだな。話せるところ知らないか、少年』
「・・・・・・」
『探してきなさい』
「・・・はい」
クウは何故彼に拘るのだろうか。普通の人、一般市民、平々凡々な人だと思う。少なくとも自分やクウのような人ではない。ありふれた人間族である。彼女にとっては餌でしかないはずなのに、あれのためだとするなら仲間になる前に始末をつけなければ。
「また物騒なことを考えていないかな?」
「先輩お久しぶりです」
足音も気配も隠さないでやってきてくれる身内は正直ありがたかった。自分の正体をしている人は誰も彼も気配を隠しながら接近してくる。依頼がなければ刃物すらむけられないといつになったら理解してくれるのだろうか。
「こんにちは、仕事かな?」
「似たようなものです。先輩も?」
「似たようなものになるかも。なんなら手伝いましょうか?」
これはありがたい戦力となった。この金髪碧眼の人は自分の先輩で、クウの家族であるリト。顔立ちはクウがモデル並みのオーラを放っているのに対し、彼女は近寄りやすい美人と言われている。童顔なのでリトの方が年下に見えるが、実際はクウの方が年下である。
「この人を探してほしいのです」
昨日隠し撮りした充希の写メを見せる。
「・・・対象者ではないか」
「違います」
「わかりました」
ゆっくりと息を吸うと先輩は瞑想し始めた。彼女は人探しが得意だ。姿さえ合えば他の情報が一切なくても人を探すことができる。探索に特化した魔法使い、それが先輩である。その代り、みんなが想像するような派手な魔法はほとんど使えない。
「あ、この人かな。近くまで送るよ」
「ありがとうございます」
移動する人を探す場合、一瞬で彼の目の前に移動できる能力は大いに役立つ。行き違いになることを防げるからだ。自分も建物に侵入する時に欲しいと思った時があった。
先輩の手の平から生まれた魔法陣が二人の身体を包み込むとビルの屋上から人の姿がなくなった。
目の前に充希の姿があった。
「この人で合ってるかな?」
「はい」
「な」
「な」
「な」
「な」
「・・・・・・な」
頭を抱えたのは充希と先程まで一緒にいたカツアゲの人達だった。開いた口が塞がらないようでポカーンとした顔になって全員がこちらに視線を向けている。
「じゃあ、僕はいくね」
「先輩ありがとうございました」
「先輩ちょっと待って!」
立ち去ろうとする先輩を充希が袖口に捕まって止めた。その眼は何かを言いたそうだ。
「うん、いいよ」
「え?」
咄嗟に先輩の腕をつかむのと同時だった。またしても景色が変わり、先程までいた屋上に立っていた。
「これでいいのかな?」
「ありがとう、じゃなくて。俺が言いたかったのは魔法使えるって秘密じゃなかったのかよってことなんだ」
「僕のは魔法じゃなくてこっちで言うなら超能力みたいなものだから」
「同じだってば」
「「そうなの?」」
逃げられたからか充希は深い溜息を吐く。非常階段を下りる音がそれを消すように響く。
「一般的にはそんな不思議技能はないんだ」
「そうなのか?魔法がないことは知っていたけれどこっちもなかったのか」
「あったらみんなせかせか歩いていないって」
「考えてみればそうだね。あ、じゃあ僕はこれで」
下まで降りてくると先輩はまた一瞬で目の前から消えた。気配も近くにない。本当に帰ったらしい。手伝ってくれるかと期待したが、考えてみれば先輩の方が自分よりも多忙である。
「だ・か・ら、全く警戒していませんでしたのよ。怪我しないように氷系の弱呪文選びましたのに何が不安ですの」
「それ自体が間違っているんだ」
レーダーを頼りにしてきたのだろう。クウと昨日世話になった刑事のおじさんがやってきた。あちらも何やら険悪な雰囲気だ。横目で見ると充希もまだ何か言いたそうにしている。
「そっちも似たようなことか」
「そうなんだよ。こいつらマジなんなん?」
「ちょうど昼だな。どこかで一息つくか」
12:17。昼である。そういえば腹が減ったな~と充希が呟く。
「では、ぜひともマッ○に」
「は?」
クウの意見に同意する。
「俺もそれでいいぜ。てか、財布が助かる」
若者に人気なマッ○で4人は昼食をとるようになった。
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