っておい

シロ

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三、調査は進行して・・・いない!?

3ー12、断れるはずがなかった。

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 シリュウは元突撃部隊第三部隊隊長で、孟起と同じく玄劉が引き抜いた武人の一人。小龍は看護部隊副隊長で、玄劉の部隊の唯一の回復役だった。どちらも実績は十分ある。二人とも少し鍛えるだけで即戦力になること間違いなしの逸材だ。
仲間不足で今でも週五で戦闘になる気の休まらない状態である。敵がこっちの都合など考えるはずがない。寧ろ、知られたら連続して攻めてくるに決まっている。そうなった時のためにも絶対に仲間になってもらわなければ困る人達なのだ。戦闘は今日雲長と孟起がメインでやっているが、やはり、疲労は日増しに溜まっていく。二人だけではそろそろ限界近い。会社員に回復役がいないのも致命的だ。
「彼と一緒に十三、四才の少女が行動していたでござる。たぶん、今世の身内でござるよ」
すると雲長の表情が険しくなった。
「タイラ、シリュウそっくりの男がその娘を溺愛していなかったか?」
「してたな」
「らしいでござる」
彼と余り会っていないタイラの代わりに玄劉が答えた。
「奴の妹に対する溺愛ぶりは軍でも有名だった。そんな奴が危険とわかっている事に自分の身内、特に子供や女性を巻き込むような行動をするとは思えぬ。妹なら尚更だ」
「そうなのでござるか?」
「ああ、根っからの真面目で誠実が服を着た機械男の唯一人間染みた性格であった」
そういえば躊躇なく人を殺していたなと孟起は思った。雲長みたいなのが増えるかと思うと頭痛がしてくる。ある意味彼より性質が悪い。小龍の真面目で天然のほうがまだマシだ。今のところ仲間になる見込みは低いから心配ないと思うが。
「それに世界崩壊時、彼は唯一の家族だった妹を亡くしているのだ。仕方あるまい」
「元からだと思うぞ。まぁ、部隊に入る前にも色々あったのは確かだろうな・・・・って、ちょっと待て。シャオは死んでんのか。サードって奴、姿も気も瓜二つだったぞ」
さすがにこの言葉には孟起も驚愕した。そんな情報下りてきてない。受け取った資料にも行方不明とは記してあっても生死不明とは書かれていなかったからだ。
「ああ、シャオロンの死亡は儂と兄者、イノス帝国の高位の者数名にしか知らされておらぬ。シリュウも知らぬはずだ。ともかく、わからぬことは本人に聞くしかあるまい。しかし、記憶がないことが本当なら二人だけでこれ以上続けさせるわけにはいかぬな。彼らとの連絡手段はあるか?」
「ないことはない」
「本当でござるか!?」
「タイラよ、嬉しそうだな」
「そ、そんなことはないでござる」
これでタイラは父に好きな人が誰かばれた。トコトン隠し事が苦手な奴である。
「タイラ、おまえはここに行け」
孟起から渡されたのは一枚の地図だった。その中に一点を指す矢印があった。
「これは・・・・・・」
「おまえが調べてきた奴の住所だ。確認は取った。おまえが行って話して来い」
「拙者がでござるか?」
「そうだな。おまえが一番適任だ」
尊敬する父にまで言われるとタイラはもう断れるはずがなかった。
「わかったでござる」
そういうと夜空の元、黒猫の姿で飛び出していった。
「タイラも大変な奴に恋したな」
「いい娘だったと思うが、彼女はどんな感じであったか?」
雲長も息子の片思いの相手が気になるらしい。
「どんなって言われてもな~。久々に会ったといっても俺自身はほとんど話してないし。ただ、言えるのは・・・・・」
「言えるのは」
「あいつはガキだ。まだ恋のこの字すら知らない。だが、いい奴なのは保障できる。性格はそのままだからわかるはずだ。奴の目はこの時勢に染まっていない。綺麗な澄んだ目をしていた」
だが、一番の敵は実の兄だろう。あの妹馬鹿の兄がそう簡単に交際を許可するとは思えないし、そういう人種に限って妙に勘がよかったりするのだ。タイラでは隠し通すのは無理だろう。もってせいぜい一ヶ月といったところか。
「そっか、なら父親として息子の恋を見守るとしよう」
「それでだ。頼みがある」
「珍しいな。おまえが連続して頼みとは?」
「さすがにこればかりは岱には無理だからな。それにそっちにも関係ある話のはずだ」
雲長の鬚がピクリと動く。
「そいつの兄、白馬 子龍は白馬家強盗殺人放火事件で死亡したはずなんだ」
「何と!?」
「新聞記事でも市役所の住民票でも警察の調査資料でも奴は確実に死亡していると表記されていが。実際に死体解剖をした奴や葬式に出た奴にも確認が取れた」
後者は今日会ったばかりの黒崎 慎司である。誰とも馴染みやすい人らしく、帰り道の途中でアッサリと情報を提供してくれた。
「だが、俺たちが会った子龍は生霊の気を纏っていた」
「見間違えの可能性は?」
「誰が見間違えるか。少し前だったらそれだけで大々的な痛手を受けていたんだぞ」
「そうだろうが、ならどっちの情報が確かなんだ」
見た事が嘘か、記事が嘘か。後者の場合だと白馬家が没滅したこと事態が怪しくなる。
「どうせ死神に話を聞くのだろう。だったら、ついでにそいつの生死も確かめれるはずだ」
つまり、玄劉が頼む奴についでに頼んで来いということらしい。
「わかった。で、おまえはどうするつもりだ」
「地図がようやく現像された。それにいくつか不審な点があってな。それを確認しに行く。」
危険なところに半人前を行かせる訳にはいかないって事か。こいつなりの気の使い方か、と雲長は感心した。孟起の気持ちを的確に表すと、単に足手まといだから来て欲しくないだけであった。
ザ、自分に正直。

 
                                続く
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