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三、調査は進行して・・・いない!?
3ー27、死んだらもう動けない。
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「な、なんと!」
「は~、こりゃ派手に燃えてるな」
真っ黒な夜空を赤く染めて漢蜀の事務所は勢いよく燃えていた。消防車はまだ来ていない。遠くでサイレンが聞こえる。来るのに苦戦しているようだ。ここは夜にて一度迷うと抜け出せなくなる場所だから。
そして、巨大な炎の柱を近くで呆然と眺めているタイラに二人は気がついた。
「タイラ、無事であったか!」
「申し訳ないでござる。拙者、こんな任も果たせず」
よく見るとタイラは風で周りの建物に火が燃え移らないようにガードしていた。
「気にするな。建物などまた建て直せばいい。兄者ならそういうであろう。儂も息子が無事で安心しておる」
「父上・・・」
「けど、ずいぶん盛大に燃えたな。ガス管でも爆発したのか?」
「いや、そうではなかったでござるよ。拙者が留守番をしていたらサードが来て・・・」
「ちょっと待て、これはサードが仕組んだことだってことか!?」
あのビルの爆破がサードの仕業だったとしたなら、見られるようなヘマをするだろうか?ここより人の多いところで目撃者を出さずに爆破を成功させたプロがこんな小さな事務所を爆破するのに目撃者を出すだろうか?倍以上の人を救出した者が?玄劉がほしがっていた資料を予め用意し、どちらとも無事に脱出させ、なおかつ姿すら見られなかった人物が?
「うむ~、事務所を破壊するとはなんて奴だ」
「違うでござる。サードは拙者を助けてくれたのでござるよ」
「何?」
「窓から息を切らせて突然入って来たのでござる。それで拙者驚いて何も言えないでいると周囲を見渡して止める間もなく机の下を調べ始めて。何をしているのかと聞いた途端、いきなり短剣で外に出ろと脅されたのでござる。迷っていると壁に紙が刺さったのでござる。凄かったけど、少し怖かった。そして出た途端にこの爆発。まさに間一髪でござった。まさか、留守中に事務所に爆弾が仕掛けられていたとは思わなかったでござるよ」
「時間がなかったとはいえ、ずいぶんあいつらしくない手段を使ったんだな」
こっちに来て性格が変わったんじゃないだろうな、と本気で心配する孟起だった。
「あらら、サードは間に合ったてたのか。さっすが」
「派手派手に燃えちゃってるね」
「子龍!?セイユン!?」
後ろで安堵の息を漏らしたのは公園にいたはずの子龍とぬいぐるみだった。速度無視の全速力でバイクを走らせてきた孟起は吸おうとしていたタバコを思わず落とした。
「こうなることだけは避けたかったのだけど・・・・・・まぁ、死人や負傷者がいないだけでも善としておいてくれるといいんだけどね~」
燃え盛る事務所を眺めながらセイユンが呟いた。
「これはおまえらが仕組んだことじゃないのか?」
「私達が仕組んだのなら呼び出したりしません」
漢蜀の存在が邪魔なら呼び出したりせずにそのまま放っておくだろう。事実、騒ぎになるまで雲長も孟起も爆弾が設置されていたことに気付いていなかった。怪我をすれば行動は制限されるし、死んだらもう動けない。
孟起は子龍の眼を見た。炎のせいか赤い光が黒い瞳の中で陽炎のように揺らいでいる。彼の肩にはあの龍のぬいぐるみがあった。格好としては肩にかけているというよりはぬいぐるみの両手が肩にしっかりと摑まっている感じがした。
「昨夜の貿易ビルの爆破は奴の仕業ではなかったのか?!」
「ああ、弟が一番だったのは爆発物解体術。できるはずがないって」
「解体方法がわかれば作れる」
「無理無理。サードはあの一件以来火が苦手なんだ。扱えるはずがない」
そうだ、彼は止めようとした。呼び出しに約束通りタイラも連れて全員でいっていたら。もし、仕掛けられていたのが時限爆弾だったのなら。事務所は爆破されても全員が助かる。
「・・・ずいぶん猫被ってるじゃねーか。さっきのように分厚い化けの皮剥いだらどうだ?」
「そいつはありがたい。堅苦っしいのはどーも苦手でね」
子龍を取り巻く雰囲気が変わった。硬い気から飄々としたものへ。
「そいつがおまえの本性か?」
「まあな」
「おまえの仕業なんだろ」
「ご名答。先言っとくけど、こっちは違うからね」
子龍は親指で轟々と火炎をあげる事務所を指した。
「あそこだって最初は人ごと全部燃やしちまうはずだったんだけど、途中で気付かれちまって。それで違法行為の証拠書類がそっちの社長さんに送られたってわけ。まったく、何で長はあんな面倒なことしたんかね~」
「人が死ぬからでござろう」
「死ねばいいんだよ。どうせ、向こうも違法して人殺してんだし、かまいはしないって。全部燃やしてしまえばそれで終わり。証拠なんか残さないから、捕まることもないわけだし。なのに、長ったら殺さず人の法に任せるって言うんだぜ。面倒ったらありゃしない、だろ。ああ、あんたらの言いたいことはわかってる。長の言い分が正しいってことだろ。ここがイノス帝国じゃないのももちろんわかってるさ」
「ならば、何故?」
「別に大した理由なんか無いさ。単に私情、許せなかっただけ」
「子龍、サードは?あの子はどこにいますの?」
セイユンの声に子龍は辺りをグルリと見直したが、確かに姿が見当たらない。
「おい坊主、サードはどこだ?」
「あの子なら爆発した瞬間姿を消したでござるよ」
「あちゃ~、そりゃ不味いね」
そう呟くと彼は軽々と屋根の上に飛び乗り、何かを孟起に投げた。受け取るとそれはあjのウサギとドラゴンのぬいぐるみだった。
「悪いけど、少しそれらを預かっててよ。なんなら使ってもかまわないからさ」
「おい、・・・・・・」
申し訳なさそうな顔で見下ろされ、孟起は言葉が詰まった。その裏に見える別の表情は・・・・・・。
「じゃ、確かに頼んだからね」
三人が黙っているのを肯定と取った子龍は先の雲長と負け劣らないスピードで夜闇に消えていった。
「これって、あれだよな」
子龍の手の上でさっきまで話していた水色のドラゴンのぬいぐるみ。そして、何故か緑のリボンを首にまいた白いウサギのぬいぐるみ。
「・・・・・・子龍の持ち物だったのか」
タイラの話を聞いててっきりサードのものだと考えていたが、子龍のだったらしい。そういえば、見た目的にあうと思ったからサードのと思ったにすぎず、確認を取ったわけではない。勘違いというか、第一印象というか。先入観というのは恐ろしい。
まぁ、持ち主が誰でもこの場合別にかまわないが。
「ふむ、何でこんな物を預けるのか?」
遠くから聞こえるサイレンを聞きながら、雲長と孟起は燃え落ちる事務所を黙って見ていた・・・・・・そんなはずないだろう。行動派の二人がタイラだけに任せてただ焼け落ちるのを黙って見ているはずがない。
「おい、ばれない程度に消すぞ」
「指図すんな」
他のビルへの引火を防ぐのは風使いのタイラに任せ、火の勢いを抑えるべく二人は魔導歌を唱え始めた。
続く
「は~、こりゃ派手に燃えてるな」
真っ黒な夜空を赤く染めて漢蜀の事務所は勢いよく燃えていた。消防車はまだ来ていない。遠くでサイレンが聞こえる。来るのに苦戦しているようだ。ここは夜にて一度迷うと抜け出せなくなる場所だから。
そして、巨大な炎の柱を近くで呆然と眺めているタイラに二人は気がついた。
「タイラ、無事であったか!」
「申し訳ないでござる。拙者、こんな任も果たせず」
よく見るとタイラは風で周りの建物に火が燃え移らないようにガードしていた。
「気にするな。建物などまた建て直せばいい。兄者ならそういうであろう。儂も息子が無事で安心しておる」
「父上・・・」
「けど、ずいぶん盛大に燃えたな。ガス管でも爆発したのか?」
「いや、そうではなかったでござるよ。拙者が留守番をしていたらサードが来て・・・」
「ちょっと待て、これはサードが仕組んだことだってことか!?」
あのビルの爆破がサードの仕業だったとしたなら、見られるようなヘマをするだろうか?ここより人の多いところで目撃者を出さずに爆破を成功させたプロがこんな小さな事務所を爆破するのに目撃者を出すだろうか?倍以上の人を救出した者が?玄劉がほしがっていた資料を予め用意し、どちらとも無事に脱出させ、なおかつ姿すら見られなかった人物が?
「うむ~、事務所を破壊するとはなんて奴だ」
「違うでござる。サードは拙者を助けてくれたのでござるよ」
「何?」
「窓から息を切らせて突然入って来たのでござる。それで拙者驚いて何も言えないでいると周囲を見渡して止める間もなく机の下を調べ始めて。何をしているのかと聞いた途端、いきなり短剣で外に出ろと脅されたのでござる。迷っていると壁に紙が刺さったのでござる。凄かったけど、少し怖かった。そして出た途端にこの爆発。まさに間一髪でござった。まさか、留守中に事務所に爆弾が仕掛けられていたとは思わなかったでござるよ」
「時間がなかったとはいえ、ずいぶんあいつらしくない手段を使ったんだな」
こっちに来て性格が変わったんじゃないだろうな、と本気で心配する孟起だった。
「あらら、サードは間に合ったてたのか。さっすが」
「派手派手に燃えちゃってるね」
「子龍!?セイユン!?」
後ろで安堵の息を漏らしたのは公園にいたはずの子龍とぬいぐるみだった。速度無視の全速力でバイクを走らせてきた孟起は吸おうとしていたタバコを思わず落とした。
「こうなることだけは避けたかったのだけど・・・・・・まぁ、死人や負傷者がいないだけでも善としておいてくれるといいんだけどね~」
燃え盛る事務所を眺めながらセイユンが呟いた。
「これはおまえらが仕組んだことじゃないのか?」
「私達が仕組んだのなら呼び出したりしません」
漢蜀の存在が邪魔なら呼び出したりせずにそのまま放っておくだろう。事実、騒ぎになるまで雲長も孟起も爆弾が設置されていたことに気付いていなかった。怪我をすれば行動は制限されるし、死んだらもう動けない。
孟起は子龍の眼を見た。炎のせいか赤い光が黒い瞳の中で陽炎のように揺らいでいる。彼の肩にはあの龍のぬいぐるみがあった。格好としては肩にかけているというよりはぬいぐるみの両手が肩にしっかりと摑まっている感じがした。
「昨夜の貿易ビルの爆破は奴の仕業ではなかったのか?!」
「ああ、弟が一番だったのは爆発物解体術。できるはずがないって」
「解体方法がわかれば作れる」
「無理無理。サードはあの一件以来火が苦手なんだ。扱えるはずがない」
そうだ、彼は止めようとした。呼び出しに約束通りタイラも連れて全員でいっていたら。もし、仕掛けられていたのが時限爆弾だったのなら。事務所は爆破されても全員が助かる。
「・・・ずいぶん猫被ってるじゃねーか。さっきのように分厚い化けの皮剥いだらどうだ?」
「そいつはありがたい。堅苦っしいのはどーも苦手でね」
子龍を取り巻く雰囲気が変わった。硬い気から飄々としたものへ。
「そいつがおまえの本性か?」
「まあな」
「おまえの仕業なんだろ」
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子龍は親指で轟々と火炎をあげる事務所を指した。
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「ならば、何故?」
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「子龍、サードは?あの子はどこにいますの?」
セイユンの声に子龍は辺りをグルリと見直したが、確かに姿が見当たらない。
「おい坊主、サードはどこだ?」
「あの子なら爆発した瞬間姿を消したでござるよ」
「あちゃ~、そりゃ不味いね」
そう呟くと彼は軽々と屋根の上に飛び乗り、何かを孟起に投げた。受け取るとそれはあjのウサギとドラゴンのぬいぐるみだった。
「悪いけど、少しそれらを預かっててよ。なんなら使ってもかまわないからさ」
「おい、・・・・・・」
申し訳なさそうな顔で見下ろされ、孟起は言葉が詰まった。その裏に見える別の表情は・・・・・・。
「じゃ、確かに頼んだからね」
三人が黙っているのを肯定と取った子龍は先の雲長と負け劣らないスピードで夜闇に消えていった。
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「・・・・・・子龍の持ち物だったのか」
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まぁ、持ち主が誰でもこの場合別にかまわないが。
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遠くから聞こえるサイレンを聞きながら、雲長と孟起は燃え落ちる事務所を黙って見ていた・・・・・・そんなはずないだろう。行動派の二人がタイラだけに任せてただ焼け落ちるのを黙って見ているはずがない。
「おい、ばれない程度に消すぞ」
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