っておい

シロ

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二、違いにご用心

2ー12、友情が芽生えていた。

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「悪いな。片づけまで手伝ってもらって」
散らばっていたほとんどがゴミとなり、片付けられた部屋からはむなしいほど物がなくなった。
「別にいいでござるよ。しかし、ずいぶんと慣れているでござるな。すでに何回かあっているのでござるか?」
「・・・四回目だ」
「そんなにでござるか」
「ああ、しかも散らかすだけ散らかしといて何も盗っていかないから警察に行き辛いんだ。食品の一つでも盗んでいってくれれば被害届が出せるんだがな。今回も被害があったのはアルバムだけか。役に立てなくて悪いな」
どうやら、慎司は被害届のことを誤解しているようだ。
「別にいいでござる。それにこれだけ荒らされれば十分被害届出せるでござるよ」
「・・・悪いが、俺そこまで警察を信用してないんだ」
渡されたお茶をタイラは啜った。
「美味いでござるな」
「ああ、師範に鍛えられたからな。茶の味や入れ方にも厳しい人だったし」
急須を見る目は何かを思い出しているようだ。
「もしかして、もしかしてでござるが、慎司は何らかの事件に巻き込まれているのでござるか?」
「何でそう思うんだ?」
慎司は振り返らずに聞き返した。
「あの部屋の荒れようでは誰だってそう思うでござる」
「ふーん、ま、当たらずとも遠からずってとこだな。ところで、おまえはどうして白馬家を訪れようと考えたんだ」
途端にタイラの顔が茹蛸のように真っ赤になった。
「クラスに気になる人がいて、思い切ってその人に話してみたんでござるよ」
「へぇー、告白したんだ。度胸あるんだな」
「えっと、する前にクイズを出されて、それを解いていくとここへの道順になっていた訳でござる。でも、いないところを見るとやっぱりふられたのでござろうか」
そのやけに古びたござる口調のせいではと言おうとしたが、止めといた。
「告白しようとしただけで凄いって。俺なんか一度タイミング逃して今度が何時来るかわかんねーし。その人ってどんな人なんだ」
「そうでござるな。無造作に伸びた黒髪と漆黒の瞳が印象的で小柄で華奢な人。守らねば折れてしまうような儚さと確固たる強い意志を持つ人でござるか?」
「何か俺の好きな奴と似てるな」
「む、拙者が先に目をつけたでござるよ。」
「心配しなくても俺の好きな人とは違うとわかってるし、馬に蹴られるつもりは更々ない。第一、似てるのはそいつのダチの方だ。で、その子とはどんな出会い方をしたんだ?」
「え、出会いでござるか?!」
さすがに、真夜中の学校に忍び込んだ際に一目惚れして、戦闘中に助けられた時の凛々しい姿でさらに惚れ込んだと言うのは不味い。
「彼女が屋上に続く階段から落ちてきたのでござる」
とりあえず、二番目にドキッとした時のことを話しておく。偶然眼鏡が外れて昨夜の少女だとわからなければときめきすらしなかっただろう。
ただし、二人が同一人物かどうかはまだ謎だ。
「屋上からじゃなくてよかったな」
「そうでござるな」
惚れてドキッとした次の瞬間に二人並んで死神に連行されるのは御免である。
「そっちはどうなのでござるか?」
「俺か。そうだな。自覚したのは一年半ほど前だけどよ。初めて会った時から気になってたのは確かだ。華奢なくせして剣術のレベルは俺とふざけあうくらいはあったし、お互い性別を意識してないつーか、話も合ったしな。俺と違ってあいつ勉強はできるのに妙なことを知らないんだ。あと、笑うと可愛いかな。惚れた弱みとか入ってるけど」
「それわかるでござるな~」
などと当初とは何の関係のない話にすり替わっていた。
「お互い頑張ればそのうち機会がめぐってくるでござるよ」
「そうだよな。お互いふられた訳じゃない。まだ、何とかなるよな」
ガシッと手を掴み合う二人には友情が芽生えていた。虚しさを含んでいるが、そこは気にしないでおこう。

                            続く
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