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二、違いにご用心
2ー16、話を続けた。
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「誰の声だか知らないが、今思えばその声の通りに無理矢理でも止めていればよかったと後悔してる」
「そして、事件が起こったんでござるな」
慎司は頷いて話を続けた。
「サプライズパーティーですか?」
結局、どうしても帰りますと言うので話してしまった。というか、すでに帰り始めている。小龍はサプライズパーティーがどんなものか知らなかったので掻い摘んで説明した。
「では、私もプレゼントを用意しなくては」
しかし、顔は言葉と対照的に真剣で表情が重い。
「いや、シャオはしなくていいんだ」
「しかし、私だけ贈らないのは失礼になります」
どうやら誰のパーティーかすら気づいていないようだ。
「いいんだよ。シャオの誕生日パーティーなんだから」
「私の?」
「そう、シャオの」
「つかぬ事をお聞きしますが、誕生日とはどんなものでしょうか?」
予想外の答えに慎司の服が肩からズレル感覚に見舞われる。今まで祝われたことがなかったのだろうか。
「えっと、誕生日とはその人の生まれた日で、生まれた日と同じ月日で誕生を記念する日で、その人の誕生を祝うのが誕生パーティー」
しかし、小龍の顔は喜びの表情はなく、寧ろ困惑と疑問の表情が浮き出て、しきりに何かを考えていた。
「・・・・・・それは無いと思います」
小さく呟かれた言葉に力が無かった。
「何でだ」
「・・・・・・父上も母上も兄上も知らないかと・・・・・・」
「何でだ?おまえの父親に訊いたんだろ。親友同士だし別に不思議じゃない」
「・・・・・・けど、今日ではありません」
だったら誰のだ?師範も奥さんも師範代も誕生日は別の月のはずだ。
「もしかして、おまえが来てた記念日じゃないのか?」
「私が白馬家にお世話になってから半年と二十一日になります」
祝うにしては中途半端な時期になる。師範は嘘が大嫌いである。そのためお世辞も上手くない。だから、あの真剣な目で嘘をついたとは思いたくなかった。師範代もだ。誰よりも尊敬している二人だからこそ、小さな理由だとは到底思えない。
考えると悲しくなるが、あの小龍を愛してやまないあの一家がデートの機会を与えてくれたときから疑問を持つべきだった。いつもはさりげなく邪魔をしてくる。なのに今日に限って・・・・・・絶対裏がある。楽しかったデートは心の端に押しやられ、不安が侵食していく。おそらくそれが小龍の心配していることなのだろう。
「人がいません」
ふと小龍が呟いた。商店街に人影が全くない。そういえばそんな時期だったかとここにきてようやく思い出した。
「明日の地祭の準備だろ。昨日まで雨が降ってたから作業が進んでいないと学校の帰りに魚屋のおっちゃんがぼやいてたの聞いたろ。今頃総出でやってるんじゃないか」
たしか去年も三日前にようやく雨が上がり、準備の場所不足となったため道場でも祭りで飾る子供たちの手作り提灯や神輿を作っていた。俺も夕食のお礼もかねて手伝ったっけ。
「地祭とはどのようなものなのでしょうか?」
「そっか、シャオはまだ行ったことないんだっけ」
年に一回しかないこの町で最も盛り上がる地域の祭り。テレビでも取り上げられたことのあるかなり規模の大きい祭りだ。その分準備に時間がかかる。通常だと軽く一週間。早いときは二週間前から作業に入る。去年でさえてんてこ舞いだったのだ。今年はさらに過酷となるのは目に見えて明らか・・・・・・あ、そっか。
「こっちのサプライズか」
「え」
「明日行われる地祭さ、大きな神輿を担いで何百もの提灯が飾られた通りを掛け声と共に巡る。出店の種類も豊富でよ、各地から見物客が来るから賑わいも盛り上がりも凄いぜ。メインは山のように飾りをつけた大神輿と黒鐘寺の巫女さんの舞だな。それらを目当てに遥々外国からやって来る奴らもいるくらいだ。見ごたえはバッチリ保障する」
「あ、あのー」
「見せるなら本番の凄いのを、ってわけだ。道場で作ってるのは部品だが、それでも見えてしまっては面白くないし、見たときの感動も減るだろ。そういうわけでサプライズを計画したんだと思うぞ」
「何だかドキドキしてきました」
隣を歩く小龍はとても嬉しそうにワクワクしている。好奇心旺盛であることはいいことだ。表情も小さいながらもころころ変わるので見ていて飽きない。
住宅街に入って少し行くと交差点に出る。真っ直ぐ行けば道場だが、果たしてこのまま帰していいのだろうか。まだ連絡はない。
「シャオ、ちょっと待ってろ」
昨日充電しなかったのが祟って携帯は電池切れ寸前。通話できるほど残ってないようだ。仕方がないので近くの公衆電話でかけることにしたが、一向につながらない。そういえば、去年の準備中、電話のベルが五月蝿いとキレた師範が竹刀の一撃で破壊した前科があった。今年は予めプラグを抜いている可能性もある。なら、いくらかけてもつながることはない。
「だめだ。こりゃ抜いてるな」
ちなみにこれは一番無難な方法で下手すれば去年と同様のことが起こった可能性も捨てきれない。
「・・・・・・」
「シャオ、どうした?」
「・・・よくわからない。だが、この感じは」
「・・・・・・わかった。送ってやるよ」
そうすれば怒りの矛先は約束を守れなかった俺に向くはず。暗闇が怖いのか小龍は慎司の腕を掴んだ。今日は人生最高の日かもしれない。
「慎司殿、携帯は?」
ポケットを探ってみるとさっきまで入れていた携帯がない。そういえば電話帳に登録した電話番号を調べるだけの電池は残っていた。どうやらそのあと公衆電話のボックスに置いてきたようだ。
「先に行ってろ。すぐ追いつく」
携帯はすぐに見つかった。電話ボックスの外で。この位置は変だ。ポケットに入れようとして落とした。しかし、携帯は壊れていない。イスに座った状態で落としただけでカバーが外れるほど脆い。ポケットに入れるときに落としたのなら充電池の蓋が外れるくらいするはずだ。それに俺は確かに携帯をポケットに入れた。ならば、何故ここにある。
「ま、いっか」
見つかったんだから気にすることはない。小龍のところに向かおうとしたときだ。
忘れられない悲劇の幕が開いた。
続く
「そして、事件が起こったんでござるな」
慎司は頷いて話を続けた。
「サプライズパーティーですか?」
結局、どうしても帰りますと言うので話してしまった。というか、すでに帰り始めている。小龍はサプライズパーティーがどんなものか知らなかったので掻い摘んで説明した。
「では、私もプレゼントを用意しなくては」
しかし、顔は言葉と対照的に真剣で表情が重い。
「いや、シャオはしなくていいんだ」
「しかし、私だけ贈らないのは失礼になります」
どうやら誰のパーティーかすら気づいていないようだ。
「いいんだよ。シャオの誕生日パーティーなんだから」
「私の?」
「そう、シャオの」
「つかぬ事をお聞きしますが、誕生日とはどんなものでしょうか?」
予想外の答えに慎司の服が肩からズレル感覚に見舞われる。今まで祝われたことがなかったのだろうか。
「えっと、誕生日とはその人の生まれた日で、生まれた日と同じ月日で誕生を記念する日で、その人の誕生を祝うのが誕生パーティー」
しかし、小龍の顔は喜びの表情はなく、寧ろ困惑と疑問の表情が浮き出て、しきりに何かを考えていた。
「・・・・・・それは無いと思います」
小さく呟かれた言葉に力が無かった。
「何でだ」
「・・・・・・父上も母上も兄上も知らないかと・・・・・・」
「何でだ?おまえの父親に訊いたんだろ。親友同士だし別に不思議じゃない」
「・・・・・・けど、今日ではありません」
だったら誰のだ?師範も奥さんも師範代も誕生日は別の月のはずだ。
「もしかして、おまえが来てた記念日じゃないのか?」
「私が白馬家にお世話になってから半年と二十一日になります」
祝うにしては中途半端な時期になる。師範は嘘が大嫌いである。そのためお世辞も上手くない。だから、あの真剣な目で嘘をついたとは思いたくなかった。師範代もだ。誰よりも尊敬している二人だからこそ、小さな理由だとは到底思えない。
考えると悲しくなるが、あの小龍を愛してやまないあの一家がデートの機会を与えてくれたときから疑問を持つべきだった。いつもはさりげなく邪魔をしてくる。なのに今日に限って・・・・・・絶対裏がある。楽しかったデートは心の端に押しやられ、不安が侵食していく。おそらくそれが小龍の心配していることなのだろう。
「人がいません」
ふと小龍が呟いた。商店街に人影が全くない。そういえばそんな時期だったかとここにきてようやく思い出した。
「明日の地祭の準備だろ。昨日まで雨が降ってたから作業が進んでいないと学校の帰りに魚屋のおっちゃんがぼやいてたの聞いたろ。今頃総出でやってるんじゃないか」
たしか去年も三日前にようやく雨が上がり、準備の場所不足となったため道場でも祭りで飾る子供たちの手作り提灯や神輿を作っていた。俺も夕食のお礼もかねて手伝ったっけ。
「地祭とはどのようなものなのでしょうか?」
「そっか、シャオはまだ行ったことないんだっけ」
年に一回しかないこの町で最も盛り上がる地域の祭り。テレビでも取り上げられたことのあるかなり規模の大きい祭りだ。その分準備に時間がかかる。通常だと軽く一週間。早いときは二週間前から作業に入る。去年でさえてんてこ舞いだったのだ。今年はさらに過酷となるのは目に見えて明らか・・・・・・あ、そっか。
「こっちのサプライズか」
「え」
「明日行われる地祭さ、大きな神輿を担いで何百もの提灯が飾られた通りを掛け声と共に巡る。出店の種類も豊富でよ、各地から見物客が来るから賑わいも盛り上がりも凄いぜ。メインは山のように飾りをつけた大神輿と黒鐘寺の巫女さんの舞だな。それらを目当てに遥々外国からやって来る奴らもいるくらいだ。見ごたえはバッチリ保障する」
「あ、あのー」
「見せるなら本番の凄いのを、ってわけだ。道場で作ってるのは部品だが、それでも見えてしまっては面白くないし、見たときの感動も減るだろ。そういうわけでサプライズを計画したんだと思うぞ」
「何だかドキドキしてきました」
隣を歩く小龍はとても嬉しそうにワクワクしている。好奇心旺盛であることはいいことだ。表情も小さいながらもころころ変わるので見ていて飽きない。
住宅街に入って少し行くと交差点に出る。真っ直ぐ行けば道場だが、果たしてこのまま帰していいのだろうか。まだ連絡はない。
「シャオ、ちょっと待ってろ」
昨日充電しなかったのが祟って携帯は電池切れ寸前。通話できるほど残ってないようだ。仕方がないので近くの公衆電話でかけることにしたが、一向につながらない。そういえば、去年の準備中、電話のベルが五月蝿いとキレた師範が竹刀の一撃で破壊した前科があった。今年は予めプラグを抜いている可能性もある。なら、いくらかけてもつながることはない。
「だめだ。こりゃ抜いてるな」
ちなみにこれは一番無難な方法で下手すれば去年と同様のことが起こった可能性も捨てきれない。
「・・・・・・」
「シャオ、どうした?」
「・・・よくわからない。だが、この感じは」
「・・・・・・わかった。送ってやるよ」
そうすれば怒りの矛先は約束を守れなかった俺に向くはず。暗闇が怖いのか小龍は慎司の腕を掴んだ。今日は人生最高の日かもしれない。
「慎司殿、携帯は?」
ポケットを探ってみるとさっきまで入れていた携帯がない。そういえば電話帳に登録した電話番号を調べるだけの電池は残っていた。どうやらそのあと公衆電話のボックスに置いてきたようだ。
「先に行ってろ。すぐ追いつく」
携帯はすぐに見つかった。電話ボックスの外で。この位置は変だ。ポケットに入れようとして落とした。しかし、携帯は壊れていない。イスに座った状態で落としただけでカバーが外れるほど脆い。ポケットに入れるときに落としたのなら充電池の蓋が外れるくらいするはずだ。それに俺は確かに携帯をポケットに入れた。ならば、何故ここにある。
「ま、いっか」
見つかったんだから気にすることはない。小龍のところに向かおうとしたときだ。
忘れられない悲劇の幕が開いた。
続く
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