っておい

シロ

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三、調査は進行して・・・いない!?

3ー9、反応は薄かった。

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「やはり、ご飯は皆で食べる方が美味いな」
美味しい料理に玄劉はスッカリご機嫌だ。幸せそうにミートボールを口に運ぶ。寮にいる間はほとんど獣型をとる雲長とタイラだが、食事の時だけはいつも人型をとる。なので、この時間に来訪した人は再来した人型の雲長を見て驚愕するのだった。扉を開けた直後、長くて立派な鬚を蓄えた2mの大男と目が合ったら誰だって怖い。大きな虎が寝そべっているのも別の意味で怖い。かといって、玄劉一人に交渉を任せておくわけにはいかない。元手がとれないほどの低価格で引き受けてしまうからだ。なので、剥製の置物となり、主に玄劉を見張るのが彼の仕事だった。
「ところで、父上。帰ってきて大丈夫なのでござるか?」
「タイラ、食べながら話すな」
タイラは慌てて口の中の物を飲み込んだ。
「簡単ですよ。チャゲちゃん、また飲まず食わずで丸二日仕事をしていたのですよ。いえ、我が時界の護りの神子の力で時間を捻じ曲げていたのでチャゲちゃんにとっては一週間くらい断食していたことになるでしょうか?」
チャゲとは玄劉の本名でスタートウという世界とファッション界でのみ使用している。徳田 玄劉は日本に移住する際にこちらで不自由しないための名前だ。玄劉は人間族の中でも日本人に出で立ちが似ている。そのため、日本に住むことにしたらしい。そして、コゲがチャゲちゃんと呼ぶのは幼馴染だからだった。でなければ、人が良さそうとはいえおじさんをちゃん付けで普通呼ばない。
「そういえば、些か痩せられたような」
「ふむ、儂らが気付いた時には空腹で倒れておった」
術者の負担を軽くするため、異次元空間に入ったのは玄劉だけだった。四時間毎に定期連絡を入れていたところ、今から二時間ほど前の連絡で玄劉の返事がないことに不審に思った雲長が術者に頼んで空間を開けてもらったところ、思っていた通り玄劉は倒れていた。原因は栄養不足。スタートウでそんな昔の病気を再発させるのはおまえぐらいだと説教代わりの強烈な拳骨を医者から貰った。そのため、玄劉の頭には包帯が巻かれている。
「それで、そっちの食事も兼ねて戻ってきたのだ。調査の進展状態も知りたいと思ったし」
久しぶりのふっくらご飯をタイラは丸のまま飲み込んでしまった。
「それが、その・・・・・・調査を始めてから敵の方が隠れてしまってほとんど、その、わかっていないのでござる」
「だろうな」
「そうでしょうね」
「ふむ、やはりそうであったか」
怒られるのを覚悟で話したのだが、玄劉たち三人の反応は薄かった。まるで、予めわかっていたかのように。
「実は我々のこの一ヶ月間の活動報告書が何者かによって書き換えられていることが発見されたのだ。記録が変更されているのではなく、その中に我々が明らかに討伐を行っていない拠点が明記されていた。その中数箇所を再調査した者の話では破壊された地下実験施設と共に真新しい時流壁の修復の跡が見つかったそうなのだ」
「修復の後?それは初耳ですね。本当にあの人は必要最小限の情報しか出さないのだから」
「あの人って?」
「スタートウの全情報を管理している方ですよ。こちらにも何度も訪れているはずです。いつもは侍の格好をしている男の子なので会ったらすぐにわかると思いますよ。彼が言うにはどうやらプロの仕業だそうです。壁に埋まっていた銃弾の線条痕は全て死体の周りに落ちていた銃火器の物。加えて死体には切り傷や刺し傷しかなかった。つまり、侵入者は銃火器相手に刃物のみで応戦して勝っています。もちろん、魔法を使った形跡もありませんでした」
確かに相当の実力者である。タイラも剣の使い手だが、銃火器相手に剣のみ魔法なしで乗り切る自信は全くない。間合いが違いすぎるからだ。
「誰かしら、ぜひともお手合わせ願いたいわ」
そういえば、この人も最強四人組の一人であったな、と雲長とタイラは思い出したのだった。ご飯を装う様子からはとてもそう見えない。こっちに来てからタイラは常々感じていた。人は見た目ではないでござるな、と。
「そこで唯一見つかったのがこれよ」
灰色のお守りに入っていたのは大きな薬莢だった。ただの薬莢ではない。側面に魔導歌が彫られている。魔法弾。

                                  続く
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