転移者と転生者と現地チート

シロ

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ギルドマスターが現る

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 1週間の旅は、特に何ていうことなく終わり、一同はエスタの町に来た。途中、盗賊に襲われたが、防寒着の冒険者が難なく撃破したのだ。
 エスタの町は、大河の上に造られた白の城塞都市であった。中央に立派な城があり、周囲は住居区と商業施設で賑わっている。また、多数のギルドと教会があり、冒険者も多い。商人の売り込みで声が飛び交い、非常に活気にあふれている。大蜘蛛の足を背負った者だから大層目立つのではないかと心配していたが、フードを被った人物に何度か声をかけられた程度だった。
「虫魔物の部位だから、欲しがるのは薬作っている魔法使いくらいだよ」
「つまり、声かけてきた奴らはその希少種様なんだな」
「そうだね」
 平然と答えている道先案内人の後を遅れないようについていきながら、カイはチラリとナナの様子を見た。反対側の手を繋いでもらってキョロキョロと物珍しそうに、物欲しそうにボートに乗っている商品を眺めている。水の都と言われるだけあって、縦横無尽に整備された水路が張り巡らされ、移動手段はゴンドラである。パンフレットで見た、どこぞの観光地のような街並みだとナナは思った。
「ここが、所属しているギルドだよ」
 メイン通りにある建物の一角、交差する水仙の花が印象的な看板が掲げてある建物を指さした。周りに合わせた白造りの建物で、雰囲気のあるドアで塞がれている。
「はぁ~ぃ、おかえりなさぃ~」
ドアを開けると、筋肉ムキムキのマッチョメンが身をくねらせて迫って来た。顔も体も厳つく、なのに仕草は女性的というギャップにカイは咄嗟にナナを自分の後ろに隠した。
「その子達が、連絡にあった子達ねぇ。うん、可愛ぃ♡」
「はい、遺跡で会いました。迷子みたいなのですが、依頼来ていませんか?」
「う~ん、あれから調べたけれど特に来てないのよね、失踪者リストにも載ってなかったし・・・・坊ちゃん、嬢ちゃん、お名前は何ぃ?」
「ナナと言うのです。彼はカイ」
 それ程ショックを受けてなかったナナが答える。ずずぃっと顔をさらに近づけられて、カイはさらに威嚇する。そんな、カイの威嚇をもろともせず、ギルドマスターはポンポンと2人の頭を撫でた。

                               続く
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