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気の毒に
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「何故、君はこの兵を殴ったのか?」
「・・・気に入らなかったからだ」
「何故、君はあの店にいたのか?」
「・・・気に入ったからかもな」
「君はあの店の冒険者か?」
「・・・ノーコメント」
「ギルドマスター、これでは調書が取れないのですが」
「そうねぇ。でも、嘘は言ってないわよ」
「貴方が答えてくれたら万事解決なのですが」
「ノーコメントよ」
そっちも情報くれるつもりないんでしょ、と睨まれて調書を取っていた兵士は怯んだ。
「応援要請を飲んだのですよ!」
「来た時にはほとんど終わってたでしょ。只で犯罪者引き渡したんだから」
お相子ね、とウインクする。そこを付かれると痛いのか、兵士は持っていたペンにインクを付け直すと、書類を睨め付けた。
「来客だ」
「隊長!お疲れ様です!」
隊長に連れられてナナとシサが部屋に入ってくる。無事な顔を見て安心したのだろう。カイはヘラリと笑うと手を振った。
「よ、睡眠は足りたか?」
「はい、ぐっすりなのです」
「俺も寝たぜ。豚箱とか言われてるが、全然臭くない。狭いがそこそこ快適だった」
「調書いつまで続くのです?」
「もう終わりでいいだろ。堂々巡りで全然先に進まねー」
カイがブスくれながらそういうと、
「だから、それは、君の証言が曖昧すぎるからで」
兵士がギルドマスターに助けを求めた。
「今晩付き合ってくれるなら考えてあげてもいいわよ」
「隊長っ」
「泣くでない」
成程、先程からこの調子なのだとナナは理解した。したが、どうしようもなかった。ナナはずっと別室で寝ていて記憶がございません状態なのだ。手助けも口出しもできない。
「カイ、防寒着の冒険者はどこなのです?」
一緒にいると言っていたが、どこにも姿が見当たらない。ちょっと、寝ている間に聞きたいことがあったのだが。
「そ、そう言えば」
兵士も今気付いたようだ。
「あー、あいつなら入れ違いに出ていったぞ」
「そうねぇ。ちょっとした用事よ」
気にしないであげてね、とハート付きで言われて、兵士は怯む。知り合いなのかと尋ねたが、違うと返ってきた。可愛いからちょっかいをかけているだけだそうだ。まだ入隊したばかりなのだろう。若さが消えてない・・・・・・気の毒に。
「私は店に戻ります」
「そうねぇ、昼には開けときたいし、お願いするわ」
「では、これにて」
誰にも何の疑問も持たせずにシサはその場を後にした。それから約2時間、取り調べが行われた。
続く
「・・・気に入らなかったからだ」
「何故、君はあの店にいたのか?」
「・・・気に入ったからかもな」
「君はあの店の冒険者か?」
「・・・ノーコメント」
「ギルドマスター、これでは調書が取れないのですが」
「そうねぇ。でも、嘘は言ってないわよ」
「貴方が答えてくれたら万事解決なのですが」
「ノーコメントよ」
そっちも情報くれるつもりないんでしょ、と睨まれて調書を取っていた兵士は怯んだ。
「応援要請を飲んだのですよ!」
「来た時にはほとんど終わってたでしょ。只で犯罪者引き渡したんだから」
お相子ね、とウインクする。そこを付かれると痛いのか、兵士は持っていたペンにインクを付け直すと、書類を睨め付けた。
「来客だ」
「隊長!お疲れ様です!」
隊長に連れられてナナとシサが部屋に入ってくる。無事な顔を見て安心したのだろう。カイはヘラリと笑うと手を振った。
「よ、睡眠は足りたか?」
「はい、ぐっすりなのです」
「俺も寝たぜ。豚箱とか言われてるが、全然臭くない。狭いがそこそこ快適だった」
「調書いつまで続くのです?」
「もう終わりでいいだろ。堂々巡りで全然先に進まねー」
カイがブスくれながらそういうと、
「だから、それは、君の証言が曖昧すぎるからで」
兵士がギルドマスターに助けを求めた。
「今晩付き合ってくれるなら考えてあげてもいいわよ」
「隊長っ」
「泣くでない」
成程、先程からこの調子なのだとナナは理解した。したが、どうしようもなかった。ナナはずっと別室で寝ていて記憶がございません状態なのだ。手助けも口出しもできない。
「カイ、防寒着の冒険者はどこなのです?」
一緒にいると言っていたが、どこにも姿が見当たらない。ちょっと、寝ている間に聞きたいことがあったのだが。
「そ、そう言えば」
兵士も今気付いたようだ。
「あー、あいつなら入れ違いに出ていったぞ」
「そうねぇ。ちょっとした用事よ」
気にしないであげてね、とハート付きで言われて、兵士は怯む。知り合いなのかと尋ねたが、違うと返ってきた。可愛いからちょっかいをかけているだけだそうだ。まだ入隊したばかりなのだろう。若さが消えてない・・・・・・気の毒に。
「私は店に戻ります」
「そうねぇ、昼には開けときたいし、お願いするわ」
「では、これにて」
誰にも何の疑問も持たせずにシサはその場を後にした。それから約2時間、取り調べが行われた。
続く
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