転移者と転生者と現地チート

シロ

文字の大きさ
上 下
69 / 93
66、

反復練習する

しおりを挟む
 そうして、さらに2週間が過ぎた。そろそろ防寒着の冒険者と受けた依頼料が付きかけてきた。ナナは紹介してもらった魔法使いに基礎魔法について学んでいる。何も知らないで魔法使われると困るからとマスターが帰ってきた冒険者に個人授業を頼んだ。彼女、茶色くて甘い匂いがする女性冒険者、カカオ。土魔法の使い手で、他の属性も生活魔法程度なら使え、それでパティシエをしている変わり者の魔法使いだ。チョコアイスが得意で、自己紹介時に振る舞ってくれた。
「・・・・・と言う訳で、ほとんどの人が使えるとされる簡単な魔法が生活魔法。これがあるのとないのとでは生活レベルにかなり差が出るわ~。魔力が微力でもあれば使えるから、あとは本人の力量ね~。ナナちゃんはとても上手だわ~」
カカオは間延びした口調だが、要点を押さえるとても分かりやすい授業をしてくれる。魔法初級を習うなら彼女が適任だとシサも言っていた。現在ナナはカカオの指導の下、水を操作してリボンを作ったり、火花を大きくしたり、風を起こして掃き掃除をしたりする訓練をしている。
「そもそも、強力な魔法を使える者は属性が偏っていますから、同一属性の者にしか伝わらない場合が多いのです」
息抜きの紅茶を淹れつつそう教えてくれた。ステータスを見て納得した。カカオは土属性に抜きん出ていると言ったが、レベル5となっている。他の属性は同列でレベル3。確かに、魔法初心者に教えるにはこれ以上ない適任と言える。
「感覚に頼らないといけないところが多いから難しいのよ~。あ、そこは早くカッチャって感じに」
今日は火の魔法を教えてもらっている。火魔法は発火と燃焼の2過程を必要とする場合が多い。これは水魔法の制御を教えてもらった時に知ったのだが、どうやらこの世界の魔法は無から何かを作り出すのではなく、その場にあるものを活用して魔法効果を引き出す、がメジャーのようだ。ちょっと、色々、かなり疑問は山積みだが、話してはいけないそんな予感がナナはひしひしと感じていた。
「さて、大体教え終わったかな~。あとは反復練習あるのみだよ~」
「はぁはぁ、ありがとうございます」
汗だくになったのは火を扱っていただけではない。魔法は使用限界に近づくにつれて疲れてくるのだ、精神的に。魂が削られていく感覚らしい。こう、鑢でゴリゴーリと。
「魔法は体力だっていう人もいるけれど、全面賛成じゃないけれど、結構当てはまると思うんだ~。ほら、気持ちが落ち込むと体調も悪くなりやすいでしょう~」

                                続く
しおりを挟む

処理中です...