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『魔界』と『魔王』
しおりを挟む神聖さを漂わせる真っ白な城。
空にあるのは血のように紅い空と黒い太陽、そして白い月。
灰色の大地には赤黒い草原と人々の営みが伺える。
この異様な世界を人や神は『魔界』 と呼ぶ。
魔界を統べる王である『魔王』は、かつて神であった。
「時の神・クロノス」の名を持つ魔王は、神の権能とは別に、『魔神』と呼ばれるほど禍々しく強い、混沌の力を持っていた。
『始原の神』の一柱であった「時の神」は、ある日を境に狂気に染まり(この時に混沌の力を開花させた)、狂いに狂った挙句他の神や父である神々の王「ゼウス」にも見切りを付けられた。
「ゼウス」は「クロノス」が真っ二つに割った大地、その片方を自らの君臨する世界、もう片方を「クロノス」の君臨する…もとい、「クロノス」を封じ込める領地とした。
これが『魔界』に伝わる最初の神話だ。
“ここを統べる『魔王』は、『魔神』の血筋であるべきだろう”
━━誰かがそう考えた。
それからこの世界を治めるのは魔神の血を継ぐ者になった。
九十九代目まで何事もなく王の座は魔神の血筋によって継がれていた。
そう、九十九代目までは…。
九十九代目、彼は良くも悪くも凡庸な男であったとされている。
それ故か、王妃はハイスペック…つまり何でもできる人物であったようだ。
そんな彼女といることが嫌だったのか、それとも……。
王たる彼は不貞を犯した。相手は唯一の人間の女性だった。
この人間は、彼の父━━先代のクロノスが保護した人間であった。
先代は幼い彼女が城の中庭で倒れているのを発見し、保護した。
人の良い先代は彼女を息子の遊び相手にしようと思い、侍女としての教養を身につけさせ、そこで彼女は先代の予想を大きく上回る学習能力を発揮したのだ。
成長した彼女は魔界初の女官となった。
人間だということを隠して。
人間も魔界の人族(以下魔族)も外見的には変わりないのだが、持っている魔力とその質が圧倒的に違う。人間の持つ魔力など、魔族にしてみれば雀の涙ほどしかないので、人間は見下されるのだ。
人間であることを完全には隠しきれず、噂となって魔族の中に伝わっていった。
そんな噂も気にしない彼女だったが、ある日ポツリと王となった彼に弱音を吐いた。
それがきっかけで王と不貞関係になったのだ。
その頃には王妃との間に子供ができていたが、王妃だけは王の不貞に気付いていた。
━━そうして事件は起こった。
事のはじまりは王と女官が失踪してからだった。
王妃はいち早くそのことに気づいていた。慌てふためく大臣たちと違い、彼女だけは冷静だった。
彼女の子供は何も知らないまま、今日も元気に庭で遊んでいる。
その日一日、城の中は混乱が続いた。
しかし翌日、王妃の間で彼女が死体となって発見された。
自分で首を切って死んだのだ。死に顔はとても穏やかな顔であったが、さらなる混乱が巻き起こった。
彼女は死ぬ前に遺書を残していた。
“王は愛する女性と共に魔界を出て行きました。
王がいない世界では生きていけません。
息子のことは執事に頼んであります。
どうかこの身勝手な私を許してください。”
彼女の子供は唯一の王子だったが、その日から行方不明だ。
遺書にまで書いてあったが、頼まれた執事を特定出来なかった。
故にその足取りさえわからず、行方不明となった。
きっと彼女はまだ子供だというのに王にされ、操り人形になる息子の将来を憂いて、逃すことに決めたのだろう。
この事件は王家が途絶えた事件として、魔界中に知らされ、後の世にも伝わっていった。
一方、誰にも知られず執事によって母の実家へと預けられた王子。母親の妹…叔母に預けられはしたがネグレクトされていた。
叔母に名を呼ばれることも愛されることもないが、同じ状態の従兄弟と自分の出自を忘れるように過ごした。
事件から五年後、彼はひっそり魔界から出た。
その頃には九十八代目の従兄弟に当たる一族が王政を代わりに継いでいた。
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