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1章 激動の日々

白い空間

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「ん...あれ?ここどこだよ!」



 見渡す限り真っ白な空間に学は居た。



「確か、光ってる球を見てたら、いきなり光って...駄目だ。その後の記憶がねぇ。どういうことだよ!おい!誰かいねぇのかー⁉」



 パニックになり叫んだ学の声は遠くの方に消えていくだけだった。



「落ち着け。こういう時はパニックになったら駄目だって、死んだじいちゃんも言ってたな。とりあえず落ち着こう。」



 学の両親は、学が物心がつく前に既になくなっており、昨年まではじいちゃんに育てられた。

 じいちゃんは地元の猟師であり、山の歩き方から色々なことを小さな時から教えてもらっていた。

 とはいっても、猟には1度もつれていってもらったことはなかったが。



 そんな学のゆういつの肉親であるじいちゃんも昨年、癌になり闘病の末に亡くなってしまった。



 そんなじいちゃんのことを考え、少し悲しくなっていた学だったが、まずはこの状況をどうにかしなければいけないことに思考をもっていった。



「周りは見渡す限り真っ白。だれかがいる様子もないし、このままここにいたってらちがあかねぇよな。歩いてみるっていっても何処に行っていいかなんてわかんねぇし。いや、そもそも俺は生きてるのか?」



 まさに、八方塞がりだった。しかし、ここが何処かもわからないし、誰かが助けに来てくれるとも思えなかった。



 しばらく考えていた学だったが、考えていてもいい答えは見つからない。元々、学は考える事がそれほど得意なほうではなかった。脳筋、とまではいかないが身体を動かす方が得意だった。考えても答えはみちからないので、とりあえず何処かに歩いてみるかと行動しようとしたとき、ふと何かが聞こえたような気がした。



 ーーーち  よ  こ  っち  だよ   ーーー



「ん?なんか声?が聞こえる」声が聞こえたような気がして振り返る。すると、確かに声が聞こえる気がする。他に行く宛がない学はその声が聞こえる方に向かって歩いて行った。



 しばらく歩いていくと、遠くの方に何かが見えてきた。近付いてみるとそれは巨大な石碑のようだった。しかし、学にはその石碑に書かれている内容が理解できなかった。みたこともない、恐らく言葉なのであろう文字が石碑にはびっしりと刻まれていた。



「これ、あの球にあった文字とにてる...?なんだよこれ?触ってみるか?いや、触ったらまた変なことになるかもしんねぇし、とりあえずこの周りまわってみるか。」



 巨大な石碑の周りを調べてみるが、石碑の裏は何も書いておらず、特になにもないようだった。



 石碑の正面に戻ってとりあえず触るかどうか迷っている学だったが、ふと後ろに気配を感じ振り向いた学は驚愕した。



 そこには、あの寂れた神社にいた顔のないヒト型が立っていた。



「うおぉ!!な、なんだよお前!お前がここに連れてきたのか⁉答えろよ!」



 尻もちをつきながら学は叫ぶが、顔のない人は困ったように頭をかかげ、ゆっくりと石碑を指さした。



「は?どういうことだよ。触れってことか?」



 とりあえず学はこの顔のない人に悪意は無さそうだったので質問をしてみた。

 するとこの顔のない人は小さく頷いたように見えたので、恐る恐る学は石碑に近づき手をかざした。



「うっ、ぐぅぅ...!」



 手をかざした瞬間、学の頭の中にその石碑の内容が頭に入ってきた。あまりにも膨大な量の情報が頭に入ってきた。その内容とは、



【1つの地球のような星が危機に陥っている】



【その星の管理者が色々な手を尽くして救おうと試みたが状況は悪化している】



【地球やその星のような生命がいる星はかなりめずらしくなんとかしたいこと】



【この顔なしはこの星の管理者だが、手を尽くして星をなんとかしようとした結果、力が弱まってしまっている】



【自分ではもうこれ以上どうする事もできないので、一番近い地球の管理者に救援要請したこと】



【誰でもいいわけではなく、たまたま学が適合し、この世界に呼ばれたことに】



 他にも様々な星の記憶が頭に入ってきたが、まとめるとこんな感じだった。



「ぐっ、はぁ、はぁ、いきなりなんだよ!頭割れるかとおもったじゃねーか!いや、状況は理解したけど、俺に出来ることなんかあんのか?その星には怪物みてぇなのウヨウヨいるみたいだし。そんなの地球には当たり前だけどいなかったし、戦ったこともねぇし。」



 そう、その星には、魔物と呼ばれるものが人々を蹂躙している世界だった。人々は協力しあいながらも、次第に押されていき今では地球でいう、日本位の面積位しか人は住めなくなっているようだった。

 住んでいるのは割合的には人族が1番多いようだったが、いろいろな他種族も共存しながらすんでいるようだった。人口でいうと、約6000万人。その程度しかいないようだった。



「俺がその星に行ってもかわらねぇんじゃねーか?」そう言うと管理者は手招きをしてきたので近付いてみると、頭に手を乗せられ何かが身体に入ってきたような感覚があった。



「え...?これは?なんか力がみなぎるっていうか...」



『私が貴方にできる事はそれくらいしかできませんが、どうかあの星を救ってほしいのです。身勝手なことだとは承知の上ですが、もう私に残された時間は少なくこの空間を維持できる力も残り僅かなのです。どうかあの星の人々を助けて下さい。どうかよろしくお願いします』



「いや、話せるなら最初から話せよ!急にベラベラ話しやがって!顔抉れてるから話せないかと思ってたじゃねーか!状況はわかったし、この力の使い方もなんとなく理解はしたけど!おい!待て!まだ話しはおわって....おわぁぁぁぁぁ!」



『頼みましたよ。人の子よ...あ、飛ばす先のポイント指定わすれてたぁ!』






 なんとも身勝手で、まぬけな顔なし管理者によって異世界の星に飛ばされてしまった学。

 これから激動の日々が学に訪れるのだった。
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