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1章 孤独との闘い

七品目 麻婆豆腐丼

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 日記を見て言葉が出なかった。俺も1歩間違えてたらこの子と同じようになってたかもしれないし、今俺が生きてるのは偶然に偶然が重なって俺は生きてるんだと改めて実感した。

 この子もまだ未来がある若者だったはずなのに・・・亡骸に手を合わせながら帰りに必ず外に連れて帰る事を誓った。

 ちょっとしんみりしちゃったけど、洞窟の調査を進めよう。この子の日記からして中は結構広いらしいからな。今日は軽く調べて、その後にあの子のお墓を作ってあげよう。

 あの古民家が存在し続ける限り、俺達みたいな犠牲者が増えるって事だよな。もし、脱出する方法が分かったら次にこの島に来た人の為に色々と残しておかないとな。

 なんとも言えない気分のまま俺は洞窟の調査をする事にした。

 洞窟は相変わらず1本道でまだ分かれ道すらなく、どんどんと下に道は続いている。時間にして1時間くらい歩いた頃、急に広い空間に出た。

 その空間の先には道が3つに分かれていて、道の入り口の壁には見た事もない文字で何かが書いてあった。なぜか分からないけど俺にはその文字が読めてしまった。

「右の道がえーと‥‥‥【ジーランディア大陸】。真ん中が【パンゲア大陸】。左が【ゴンドワナ大陸】って書いてるな。というかなんで俺読めるんだ?」

 その事を不思議に思ったけどまぁ読めないよりは読めたほうがいいよな。と思い直してこの言葉の意味を考えた。

 なんとなくだけど、書いてある言葉からしてこの先に進めばその大陸に出れるよって事かな?2人目の転移者の佐藤が日記の続きを書いてないって事はこの先に進んだって事だよな。

 もしかしたら何か目印があるかもと探していたら、右のゴンドワナ大陸って書いてる下に『佐藤』って壁に刻んであった。

 この先に進んだって事は俺も行くとしたらゴンドワナ大陸だな。今日の所はこれくらいにして帰るか。

 まだ昼前だったけどあの女の子のお墓を作らないといけないからノワルの背中に乗せてもらって来た道を戻った。


「嘘だろ。ノワルが走るとこんなに早いんだな。10分くらいで外までこれたぞ?」

 途中で亡骸を回収しなかったらもっと早く着いたって事だよな。ノワル恐るべし。


 何処にお墓を作るか悩んだけど、この海が見える一番見晴らしが良い場所にお墓を作ることにした。ノワルに魔法で穴を掘ってもらってその中に亡骸と遺留品を入れた。この子の持ち物から名前が分かるような物が無かったから、墓石には何も刻まなかった。

 お墓を作り終えた頃にはもうノワル達も腹ペコになっているようだったから、今日は見晴らしの良いこの場所でご飯を食べる事にした。

 早く飯を出せと尻尾で叩いてくるノワルに少し腹が立ったけど、帰りに乗せてもらったのを思い出してグッと我慢したわ。

 調理器具なんて持ってきてないから今日はノワル達の分は魔石で調達する事にするか。ちょっとしたノワルへの仕返しも込めて、辛い料理でも調達するか。

 黒い笑顔で俺はノワル達に【麻婆豆腐丼】を渡した。勿論辛さは一番上の激辛にしたぞ。俺を尻尾で叩いた罰をうけろッ!!ついでにゴマ、お前も見て見ぬふりをしたからな。さーて、悶え苦しむ姿が楽しみだ。

 勢いよくノワルとゴマは丼ぶりに喰らいついているな‥‥‥そろそろ辛くなってきたんじゃないか?‥‥‥あれ?まだか?

「嘘だろ?完食してる。これ激辛とか書いてたけどそんな辛くないのか?」

 まだ空けてない麻婆豆腐丼を一口だけ試しに食べてみたけど、後悔した。

「辛ッ!!よくお前らこんなの食えるなッ!!」俺が急いで水を飲み干してるのを、またいつもの馬鹿にしたような顔でノワルは見ていた。

 そんな俺達に興味を持ったのか、大蛇が近づいてきて空になった丼ぶりを見ている。食べたそうにしていたから大蛇に聞いてみると頭を左右にユラユラしていたから追加で麻婆豆腐丼を調達して渡した。

「えー‥‥‥お前もそれ食べて平気なの?俺だって辛いの苦手なわけじゃないんだけどな」

 器用に長い舌で溢さないように食べてるな。ノワルとゴマも少しは見習ってほしいくらいだな。そう思っているとノワルとバッチリ目が合って、尻尾でまた頭を叩かれた。言葉にしてないはずなのになんで分かった?

 ふと、思った。あの子の亡骸を見てから俺に出来る事はなんだろうって考えてた。この大蛇に俺みたいな人が来たら助けてあげるようにお願いするのはどうだろう。

「お前に‥‥‥いや、名前つけた方がいいか。なぁ、俺が名前つけてもいいか?」

 ユラユラとしてるから良いよって事だな。蛇の名前か‥‥‥パッと思いつくのはヨルムンガンドなんだよな。長すぎて呼びにくいから、【ヨル】にしよう。身体の色も夜空のように黒くて綺麗だしな。

「これからはヨルって呼ぶな?それでヨルに頼みたい事があるんだけど‥‥‥」

 俺のようにここに飛ばされてきた人が居たら助けてあげてほしいとお願いすると、ヨルは頭をユラユラとしてくれた。俺も最初は怖かったけど、こうやって見ると可愛いな‥‥‥ん?という事はいきなりヨルが現れたらビックリするよな。

 考えに考えた末にヨルの首に名前を書いた大きなドックタグをつけることにした。後は、俺も含めて過去の転移者も砂浜に飛ばされるみたいだから、砂浜にプレハブでも建ててその中に俺からのアドバイスを書いた紙を置いておけばいいな。

 一旦砂浜に戻って作業をする事に決めた俺は一旦ヨルと別れて砂浜に向かう。

 拠点に戻ってきた俺は少し大きめのプレハブを魔石で調達して設置した。多分だけど今日でこの数か月間過ごした砂浜とはおさらばになると思うから、テントなどをプレハブにしまってから次にこの島に来た人の為にノートに注意事項や魔石の使い方を記した。

「本当はあの古民家が無くなれば一番いいんだろうけど、俺にはどうする事もできないからな」

 全てが終わった頃にはもう日が傾き始めていたからこの砂浜で最後の食事をとる事にした。最後だから豪勢にいくぜッ!!と思ってたけど、昼に少し食べた麻婆豆腐丼は辛かったけど、美味かったんだよな・・・少し辛さを抑えた麻婆豆腐丼でも作るか。

 最初にやる事はなんといっても絹豆腐の水気を切ることだな。電子レンジがないからキッチンペーパーで包んで水気を少しでも取るか。その後は白ネギをみじん切りにしておく。

 絹豆腐の水気がある程度なくなってきたらフライパンに油を引いてショウガとニンニクと豆板醬、そして刻んだ白ネギを入れる。ショウガとニンニクはなかったらチューブのでもいいぞ。

 香りが出て来たらあらかじめミンチにしていた猪のひき肉を加えて炒める。肉の色が変わってきたら酒、砂糖、醤油とお湯で溶いた鶏ガラスープの素をいれていこう。煮立ってきたら絹豆腐を手でさっと崩しながら入れてよーく混ぜ合わせて、後は水溶き片栗粉を入れてとろみがつくまで煮込む。

 トロトロになったらゴマ油を好みで入れて熱々のご飯の上に乗せて、刻みネギを上に乗せれば【麻婆豆腐丼】の完成ッ!!

 もう見た目からして食欲がそそるな。ノワル達も麻婆豆腐丼が気に入ってるみたいでガツガツ食ってるな。俺の分が無くなる前に食わなければッ!!

 うん‥‥‥悪くない。前から思ってたけど魔物の肉ってかなり美味しいんだよ。それこそ味付けなんかしなくても食べれちゃうくらいに。

 そうすると地球の野菜とかだと肉が主張しすぎて負けちゃうんだよな。決して不味くはないぞ?欲を言えば肉に負けない位の野菜なんかをいつか見つけてみたいな。

 そう思いながら砂浜での最後の夜を酒を飲みながら過ごした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
麻婆豆腐ってたまにすごく食べたくなることありますよね。
ただ自分が好きなだけかもしれないですけど・・・。
キンキンに冷えたビールと一緒に食べる少し辛めの麻婆豆腐・・・たまらんですッ!
すいません。見栄を張りました。ビールではなく発泡酒です・・・。
高すぎだよ生ビール・・・。

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