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第15章 隼人と生きる光と影
No,162 クリスマスをするの?
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【これは大学4年のお話】
隼人と付き合い始めて俺の生活はがらりと変わった。
思えば高校時代。
ジュンとの日々は彼のベッドの上での記憶しかない。
十代の恋人らしく二人で街を歩いたり、どこかへ出掛けたりと、デートらしい想い出は皆無だった。
上京してからの亮ちゃんとの日々も、やはりデートらしいデートなんてした記憶がない。
いつも亮ちゃんの部屋で二人きり。それはそれで楽しかったけれど、時々は二人で出掛けたかった。
でも亮ちゃんは面倒くさがり屋で出無精でって、俺は思っていたけど、本当は亮ちゃん──人目を気にしていたんだって、別れの時に打ち明けられた。
浩一だってそうだ。
浩一の外泊日に浩一の都合で俺の部屋にやって来られて、そこからは浩一の溜まった思いをこれでもか!と吐き出されっぱなしで俺はもうくたくた。
翌日のブランチをいつものファミレスで過ごすくらいが精一杯で、全然お出掛けなんて雰囲気は無かった。
ところが隼人と付き合いだして初めての冬。
隼人ったらニッと笑いながら
「クリスマスはどうする?」
と来たもんだ!
「ええっ?!クリスマス、するの?!」
それでも俺は、自分ちでチキンを食べたりケーキを食べたりと、それくらいしか思い付かなかった。
ところが隼人は
「どこか素敵なレストランを予約するから、二人でお洒落して出掛けよう」
って、俺が想像も出来ない提案をしてきた。
(ただしイブは彼女と過ごさなくちゃいけないから25日にって事だったけど、そんなこと俺は全然こだわらない)
時あたかも80年代。
ユーミンが「恋人がサンタクロース」と歌って
「あっ!そうだったのか!」
と、みんながそれに気付かされて啓蒙された年代。
それまで家族と家で過ごしていたクリスマスが、一気に恋人達の一大イベントへと急変した時代だ。
それでも俺は躊躇した。
「だってそれは普通のカップルの話で、俺達は……」
でも隼人にはその躊躇が無かった。
「理久はいつもの、あの宝塚の生徒みたいなお洒落スーツを着ればいいよ。あの姿、いつも遠目に見てたけど間近に見た事ないから楽しみだな♪」って。
「え、でもあれは日比谷専用だよ?」
なんて言いながら、俺は日比谷以上にお洒落した。
隼人もいつものアイビー・スタイルじゃなくて、当時流行っていたDCブランドのすごく可愛いスーツを着てきた。
隼人がすごく景色の良いレストランを用意してくれた。東京タワーが特別バージョンでライトアップされていたっけ。
俺達は向かい合って乾杯した。周りは普通のカップルばかりで流石に俺も気が引けたけど、隼人は全然平気な顔をして言ってのけた。
「ここにいるどの男より理久はカッコいいし、どの女の子より可愛いよ」って──。
俺はその歯の浮く様なキザな台詞にポーッとしちゃって、あの時ばかりは隼人を頼もしく感じた。
(ああ、やっぱ隼人は俺より年上。三つも兄ちゃんなんだな!)
──ってね。
だから俺も、誰はばかること無く隼人と二人で堂々とディナーを楽しんだ。
翌春には就職だ。
父の知り合いの会社へのコネ就職とは言え、面接のため髪も既に黒く戻した。ヘアカットも何となくリーマン風。
──もう、ヅカ・スーツも似合わない。
俺が波奈と共に日比谷を闊歩していたあの派手な姿も、このクリスマスが最後となった。
隼人、大好きだよ♡
メリー・クリスマス♪
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