241 / 284
第18章 帰郷と運命の結末
No,240 ゲゲゲのまた再会
しおりを挟む
【これは35歳の時のお話】
実家に帰ると送った荷物が山積みだった。一階の事務所と二階の俺の部屋と、整理整頓で大忙しの数日間。
やっと一息ついた頃のお昼過ぎ、俺はご近所に挨拶回りをする事にした。
近所の人たちには子供の頃から理久ちゃん、理久坊って可愛がられた。
これからここで新生活を開始するのだから、菓子折りのひとつも持って挨拶をしておくのは良識だ。
斜め向かいの家を訪ね、呼び鈴を押す。
(おばさん、元気かな?)
──子供の頃は、まるで自分ちのようにこの家には出入りしていた。
ガチャ──と、ドアは直ぐに開いた。
(ゲゲッ!!なんで?!)
現れたのは亮ちゃんだった!
亮ちゃんとは5年前の──あの花火大会以来のことだ。確か東京で就職して、首都圏の方に住んでいるはずなんだけど……?
「え?理久?!どうした?」
「亮ちゃんこそなんで?!」
俺、軽いパニック。言葉につまりながら事情を説明した。
「あ、あの……東京から戻って来たから挨拶に来たんだけど、え?おばさん達と同居になった?」
「うん、じつは俺、バツイチ」
「えええーーっっ!!」
「まあその、とにかく色々有った。住んでいたマンションはくれてやったから、俺はここに戻ってきた」
「それって、もしかして……これからはご近所?!」
俺は驚愕し、亮ちゃんはニヤリとはにかむように微笑んだ。
「離婚、転職で俺の先行き、もうだめかと悲観してたけど、ここに来て理久とやり直せるなんて、人生、捨てたもんじゃないな」
俺はフルフルって首を振る。
「やり直すなんて亮ちゃん、恐ろしいこと言うな!」
なんか亮ちゃん、結婚離婚の修羅場をくぐって前よりずっと図太くなったし、押しの強さも身に付けたよう。これは油断のならない情況になってきた。
「今だれもいない。上がってけよ」
「やだ!」
「じゃあ、今夜どうだ?」
「ええっ?やだ!絶対にやだ!」
俺の顔は真っ赤になってた。
「あ、飲みだぜ?そうか、そっちと受け取ったか。なるほど。そっちも有りだな」
「!!!」
ムッとして亮ちゃんをにらんだ。
そして俺は、思わず自分でも驚く行為に走ってしまった。
亮ちゃんの胸に顔を埋めた。
「お、おい理久?」
(あ、いつもの甘い匂いがする)
「亮ちゃんの匂いだ。おまえ……亮ちゃんだな?」
「おまえこそ犬か?!」
俺は黙って玄関を飛び出した。
(どうなる俺?!)
※──────────※
亮ちゃんが斜め向かいに住んでいる。
──子供の頃から大好きだった亮ちゃん。俺が初めて付き合った恋人。
そして、俺をこてんぱに振って泣かせた亮ちゃん。
隼人と別れてから8年間──。
幸せに満ち足りた恋にも愛にも、ずっとずっと縁が無かった。
諦めて……
疲れて……
心機一転の思いで帰郷したら、そこに亮ちゃんがいた。
(懐かしい……あの大好きな甘い匂い……)
おっさんにはなったけど、あのはにかんだ笑顔は変わらなかった。
(今でも俺は亮ちゃんが好き?)
部屋に駆け込んでベットに倒れ込んだ。
心臓の動悸が治まらない……。
(どしよう、こんな事になるなんて、まるっきり考えてなかったよ?)
亮ちゃんとの沢山の思い出が目の前に浮かんだ。
幼い頃のお医者さんごっこ。
かくれんぼの最中、押し入れの中でのファースト・キス。
初めての恋人。
悲しかった別離──。
そして俺の心臓は、ドクドクと音を立ててときめいた。
(亮ちゃんが斜め向かいに住んでいる。まるで、子供の頃に戻ったよう……)
人生──何が起こるか分からない。
俺はその夜、帰宅時間を見計らってナッキーに電話した。こんな非常事態→相談出来るのはナッキーだけだ。
そりゃ、俺に対するナッキーの気持ちを知らない訳じゃない。
でもこれは色恋の話じゃなくトラブルの話だ。相談しても差し支えないと判断した。
(どうしよう?ナッキー…………俺、どうなっちゃう?!)
実家に帰ると送った荷物が山積みだった。一階の事務所と二階の俺の部屋と、整理整頓で大忙しの数日間。
やっと一息ついた頃のお昼過ぎ、俺はご近所に挨拶回りをする事にした。
近所の人たちには子供の頃から理久ちゃん、理久坊って可愛がられた。
これからここで新生活を開始するのだから、菓子折りのひとつも持って挨拶をしておくのは良識だ。
斜め向かいの家を訪ね、呼び鈴を押す。
(おばさん、元気かな?)
──子供の頃は、まるで自分ちのようにこの家には出入りしていた。
ガチャ──と、ドアは直ぐに開いた。
(ゲゲッ!!なんで?!)
現れたのは亮ちゃんだった!
亮ちゃんとは5年前の──あの花火大会以来のことだ。確か東京で就職して、首都圏の方に住んでいるはずなんだけど……?
「え?理久?!どうした?」
「亮ちゃんこそなんで?!」
俺、軽いパニック。言葉につまりながら事情を説明した。
「あ、あの……東京から戻って来たから挨拶に来たんだけど、え?おばさん達と同居になった?」
「うん、じつは俺、バツイチ」
「えええーーっっ!!」
「まあその、とにかく色々有った。住んでいたマンションはくれてやったから、俺はここに戻ってきた」
「それって、もしかして……これからはご近所?!」
俺は驚愕し、亮ちゃんはニヤリとはにかむように微笑んだ。
「離婚、転職で俺の先行き、もうだめかと悲観してたけど、ここに来て理久とやり直せるなんて、人生、捨てたもんじゃないな」
俺はフルフルって首を振る。
「やり直すなんて亮ちゃん、恐ろしいこと言うな!」
なんか亮ちゃん、結婚離婚の修羅場をくぐって前よりずっと図太くなったし、押しの強さも身に付けたよう。これは油断のならない情況になってきた。
「今だれもいない。上がってけよ」
「やだ!」
「じゃあ、今夜どうだ?」
「ええっ?やだ!絶対にやだ!」
俺の顔は真っ赤になってた。
「あ、飲みだぜ?そうか、そっちと受け取ったか。なるほど。そっちも有りだな」
「!!!」
ムッとして亮ちゃんをにらんだ。
そして俺は、思わず自分でも驚く行為に走ってしまった。
亮ちゃんの胸に顔を埋めた。
「お、おい理久?」
(あ、いつもの甘い匂いがする)
「亮ちゃんの匂いだ。おまえ……亮ちゃんだな?」
「おまえこそ犬か?!」
俺は黙って玄関を飛び出した。
(どうなる俺?!)
※──────────※
亮ちゃんが斜め向かいに住んでいる。
──子供の頃から大好きだった亮ちゃん。俺が初めて付き合った恋人。
そして、俺をこてんぱに振って泣かせた亮ちゃん。
隼人と別れてから8年間──。
幸せに満ち足りた恋にも愛にも、ずっとずっと縁が無かった。
諦めて……
疲れて……
心機一転の思いで帰郷したら、そこに亮ちゃんがいた。
(懐かしい……あの大好きな甘い匂い……)
おっさんにはなったけど、あのはにかんだ笑顔は変わらなかった。
(今でも俺は亮ちゃんが好き?)
部屋に駆け込んでベットに倒れ込んだ。
心臓の動悸が治まらない……。
(どしよう、こんな事になるなんて、まるっきり考えてなかったよ?)
亮ちゃんとの沢山の思い出が目の前に浮かんだ。
幼い頃のお医者さんごっこ。
かくれんぼの最中、押し入れの中でのファースト・キス。
初めての恋人。
悲しかった別離──。
そして俺の心臓は、ドクドクと音を立ててときめいた。
(亮ちゃんが斜め向かいに住んでいる。まるで、子供の頃に戻ったよう……)
人生──何が起こるか分からない。
俺はその夜、帰宅時間を見計らってナッキーに電話した。こんな非常事態→相談出来るのはナッキーだけだ。
そりゃ、俺に対するナッキーの気持ちを知らない訳じゃない。
でもこれは色恋の話じゃなくトラブルの話だ。相談しても差し支えないと判断した。
(どうしよう?ナッキー…………俺、どうなっちゃう?!)
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
30
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる