ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

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候補生金刃乱、誕生

悪夢の帰り道②

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 だからどうしてこうなるんだ?
 いつもの帰り道になるはずだったじゃないか。
 帰って父さんの料理を目一杯頬張ってから、ぐっすり寝て憂鬱な朝を迎える。
 ただそれだけの事をしたいだけなんだぞ?どうしてこうトラブルばかりに巻き込まれる?
 何もかも今僕に指鉄砲を向けている奴が今回の原因なのだが。
 いつも帰るルートが『凶悪犯がいる為封鎖しています。ご協力ください。』とか警察官に言われて、仕方なく携帯のナビでルート検索して帰り道を決めようしていた。
 でも何か大事な予定をしていた訳でもなく、若干帰りが遅くなるくらいならちょっと普段とは別の道を通って帰ってもいいかなと気まぐれに、そして適当に道を設定してみた。
 そしたらその途中で泣き顔の顔面血塗れの女の子が走ってくるんだぞ?いやマジで何かのパニックホラームービーの導入かと思ったよ。
 自惚れだが、全部僕をドッキリさせる為の仕込みなのかとも思った。
 流石にその時は少しだけガイストを発動させようか迷ったけど、よくよく見たら同じ制服。
 声を掛けたら息も絶え絶えで『友達を助けて!』と言われてさ。即時母さんに連絡して応援要請をしてもらったからいいものの……。以下が母さんとのやりとりです。

「もしもし!?母さん!?今どこ!?」
「乱さんですか?どうしたのですか?そのように慌てて。今は学園で毒島の氷像を眺めています。」
「あの人今度は何をやらかしたの……。まぁいいや!それより大変なんだって!さっきの事件に巻き込まれた生徒と今一緒にいるんだよ!」
「……なんですって……!?」
 母さんの声色が緊張感の加わったものに変わる。
「顔面血だらけで大変な事になっているんだけど、母さん今すぐこっちに来れる!?僕は救急車に連絡するから!」
 僕等の会話を遮るように、血だらけの女子生徒は僕の携帯を奪うと泣き叫びながら答えた。
「お願いします!朱音を!友人を助けてください!」
「ぬわっ!?ちょ、ちょっと!?」
「……友人?落ち着いて?そのご友人は今何処に居るのかしら?」
「……うぇっ……わ、私最低で……二人一緒に居たのに……こ、怖くなっちゃって……あ、朱音だけ置いて……うぇ、うぇえええ……。」
 成程。友人を置き去りにして我先に逃げてきたのか。何も悪くないよ、そんなの。怖いに決まっているじゃないか。
「わかったわ。申し訳ないけど、乱さんに替わってもらえるかしら?」
「ひゃい……。」
 女子生徒は目を擦りながら、僕へと携帯を返してくれた。
「あ、もしもし?とりあえず僕等はここを離れるから、母さんは」
「いいえ、乱さん。状況は変わりました。大変申し訳ないですが、乱さんは女子生徒から場所を聞いて現場に急行してください。その上で時間稼ぎをお願いします。」
 ……ちょっと待って。今なんて言ってきた?予想だにしていない返答が来たので脳が思考を止めてしまっていた。
 あぁ、そうだ。時間稼ぎだね。そうそう時間稼ぎ……。
「はぁ!?時間稼ぎぃ!?」
「はい。こうなったら緊急事態です。ガイストの使用を私が許可致します。こちらはガイスト機関に情報を少し聞いてから向かいます。宜しいですね?」
 いやいやいやいや!!宜しいですね?じゃないよ!
「母さん!?それ本気で言っているの!?相手がどんなのかも分からないのに!?というか僕まともに戦闘経験すらないんだけど!?僕が行く必要って本当にあるの!?」
「えぇ、本気です。乱さん、人の生死が関わっているのですよ?しかも一刻を争う事態なのです。大丈夫です。あなたのガイストなら5分間であるならほぼ無傷でいられるでしょう。その5分の間に必ず私が向かいます。それまで耐えてください。」
「いや耐えるって言ったって……。」
「あと携帯の電源は必ず入れておいてください。その位置情報でドローンを発進させて、正確な位置をこちらで把握します。では、後程。」
「ちょ、ちょっと母さん!?やっぱりこんなの無茶だって!僕には出来ないよ!」
「乱さん!こうして無駄に話している間にも、もしかしたらその人が傷ついているかもしれないのです!今すぐ向かいなさい!」
「っ……!……分かったよ、もう!」
 母さんの鬼気迫る返事に理不尽さを感じて、僕も苛つきながら電話を切る。
 いきなりだよ。ほとんど何も訓練を受けていない状態で実戦だなんて。しかも相手はどんな奴か分からない。ガイストがとんでもなく超強力なものだったら、僕の【フィジカルポイント】でも防げないかもしれない。そうなれば待つのは確実な死であろう。
「……あ、あの……や、やっぱり朱音は助からないの?」
 震える声の主にハッとして振り向く。顔を真っ赤に腫らし―出会った時から腫れていたが微増といったところか―、しっかりと涙の跡を残しているその表情が、僕の少なからずあった『何とかしてあげたい』という心を肥大させ、不安を圧し潰してくれた。
「……ご友人はどちらにいるのですか?」
 もし仮に死んだならこの子も香典とお香をあげに来てくれるのだろうかと思いながら、僕は女子生徒に質問をした。

 という訳である。
 とにかく間一髪助けられたのは本当に良かった。母さんの言う通りあのまま僕が引き下がらなければ、女子生徒の命はなかっただろう。
 それに特訓の成果も上々だ。パワーアップル大作戦、ここに成就。この女子生徒を最初の林檎のような姿にさせないで良かった。まぁ内心では凄まじい程の冷や汗をかいていましたけどね。助けに来たつもりが殺してしまっていたら元も子もない。
 ついでと言ってはとても失礼だが、倒れている警察官の姿も見えたので移動先をその傍にした。
 そして犯人との距離もある程度確保はしている。何か不測の事態は起こったとしても対処出来る……はず。
「……たかが花咲絢爛高校の一男子生徒が、個人的に氷雅姫に連絡を取るなんてあり得ねー話だ。ハッタリにしてはもう少しまともなモノを用意しといた方がいいな、クソガキ。」
 さて、早速不測の事態が起きそうだ。犯人の指鉄砲の銃口(?)は相も変わらず僕の方へと向けられている。
 いいか、よく聞け。金刃乱。先程ガイストを発動させて残り使用時間は4分18秒。
 無駄遣いは出来ない。母さんは5分以内で来るとは言っていた。だけどそれも本当かどうか分からない。一先ずここは話を長続きさせてみるか……。
「ハッタリね。確かにそう思うのは当然だ。でもさ、こうも考えられない?どうしていち早く氷雅姫ってワードが出て来たのかってさ。」
「そんなの普通に考えて、一番有名なガーディストの名前言えばビビると思っただけだろうーが。バカかオメーは。」
「半分正解で半分大外れだ。確かに氷雅姫の名前を出せば絶対に委縮すると思ったよ。」
「あ?じゃあ残り半分は何だ?」
 銃口は少しだけ下がった。よし、会話に興味が少し移ろいでいる。このまま続けてみよう。
「あんた、花咲絢爛高校は知っているんだよな?なら、今その学園の生徒会長を務めている人って誰か分かるか?」
「あーん?そんなの知るかよ。急になんだ、訳の分からねー事いきなり言いやがって。」
「だよな。その人の名前、金刃桜子って言うんだけどさ……。実は氷雅姫の娘なんだよね。」
「……お前、さっきから何が言いたいんだ?とっとと要件だけ言えやボケ。」
 苛ついてきたようだ。そろそろ本題に入るか。
「何の偶然か分からないけどさ……。僕の苗字も、実はなんだよね?」
「……あ!?」
 いいね、その表情。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてくれるのはとても助かる。動揺しているのが丸わかりだぞ。
「つまりはそういう事だ。僕が直接母さんに連絡したから、氷雅姫という名前が出て来た。これが答え。だから今からこの場所に来るのは間違いなく母さんだ。氷雅姫本人が出向いてくれるって訳。」
「……クソが!!」
 犯人は持っていたリュックをダンッと地面に叩きつけた。複数枚の札がふわっと宙に舞う。あれだけでも僕のお小遣い何か月分なのだろう。ってそんな余裕かましている時じゃない!?
 いつの間にか2丁拳銃ならぬ2手指鉄砲モードに犯人はなっていた!あれ!?まだ余裕あるね、僕!
「ガーディストがすぐ来るってなら予定変更だ!今すぐお前をぶっ殺して逃げなきゃな!」
「なっ……!?い、いいのか!?僕を殺したらそれこそ母さんに地獄の底まで追いかけられて悲惨な結末になるぞ!?」
「へっ!へへへ!どうせなら箔をつけておきたいだろ?こんな事しでかしちまったんだからよ。仕事も考えなきゃいけないって思っていた所さ!もう普通の生活には戻れねーし。!」
 鼻ピアスがポゥッと光り始めた。コイツマジで僕を殺そうとしてきている……!あとコイツ今なんて……!?
「即刻死刑対象……!?あんたまさか!?」
「うるせー!大人しく殺されていろ!」
『何か』を撃ち出そうとしているのは分かった。だがそれが何かは不明。そして後ろには怪我人が二人。絶対に避けられない。という事は……という事は!?
「受けるしかない……のかよ!?」
 一気にマズイ状況になってしまった!犯人を極端に追い詰め過ぎたか!?計画ではもう少し会話で引き延ばそう思っていたんだけど!?
 相手のガイストの力なんて全く推し量れないし、ただコイツが僕を殺そうとしている限り殺傷能力はかなり高いと見た!それならやる事は唯一つ!
「【フィジカルポイント】、全開放!!」
 真正面で受け止めてやる!!僕は体を大の字にして出来るだけ後ろにいる二人に被害が及ばないように、そして踏ん張れるようにした。
「へへへへへ!!お前入りのバカだな!?俺の【空気砲弾】を真正面で受け切る気かよ!?風穴が開くだけだぜ!?」
「あぁ!馬鹿は承知の上だよ!どっちが馬鹿はすぐに分かるさ!それにな!」
 あぁもうどうにでもなってくれ。どうせなら腹の立つ事を言って辞世の句にでもしておくか。
を間違えるようなとんだ間抜けに馬鹿扱いされた所で、何とも思わないぜ?こぉのバァカ♪」
 ねっとりと耳に残るように言ってあげました。さぁ反応は?
「……脳天と心臓を確実に打ち抜いてやる!!クソガキ!!」
 んん-。まぁ上々といったところか。それでは皆さん、今度こそ本当のお別れになるやもしれません。
「喰らいやがれ!【空気砲弾】!!」
 パシュッと空気を切り裂くような音と共に犯人は『何か』を撃ち出した反動で、若干両肘少し仰け反っていた。
 その『何か』。これっぽっちも見えません。え?もしかしてあんなポーズ取っただけ?
 だとしたら滅茶苦茶お茶目な犯人さんだ。口は結構悪いけど、案外いい人なのかもしれない。
 そう思った瞬間である。突如目の前の景色が少し歪んで見えた。目を少し凝らしてみたがやはり何か見づらい。何だろう?
 パァンパァンッ!!
 それが犯人の撃ち出した不可視の圧縮空気弾だと気づいた時には、僕の額と心臓付近に一寸の狂いもなく着弾しており、僕の身体は犯人のそれとは違い更に大きく仰け反り吹き飛ばされながら、硬く冷たいアスファルトの上へと落ちていったのであった。
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